依頼の終わり
※インセクトウォリアーの強さを、三級パーティーが複数で対処する強さから三級冒険者が対処する強さに変更いたしました。何時も読んで頂きありがとうございます。
夕飯に呼ばれ食堂に向かうと既にシュナイザー様とリリー夫人そしてララ様とルウ様は席に着いていた。俺達も急いで席に着くと、家長であるシュナイザー様の言葉によって食事が始まった。そして、食事の時の話題はダンジョンの話となった。
「お父様っダンジョンはたのしかった~?」
「たくさん戦うんでしょ~?」
「おう、ダンジョンは楽しかったぞ~だけど、楽しいだけじゃなく危ない場所だから二人はお父様と一緒じゃないと行っちゃ駄目だからな」
「え~」
「ひとりで出来るもん」
「駄目だ」
「む~」
「お兄様にも勝ったから大丈夫だもん!」
「ララ、ルウ、ダンジョンは遊びじゃ無いのですよ」
「「は~い・・・・」」
ダンジョンを遊び場だと思っている二人は自分も遊びたいと騒ぐが、それをリリー夫人を窘めると二人は素直に返事をした。リリー夫人の言う通りダンジョンは遊び場じゃなく命を奪い合う戦いの場だ。二人共まだ幼いから魔物と戦う事が、汚く苦しみにまみれたものだと言うことを知らないため仕方が無いが、その無邪気さが微笑ましくもありこれから知ることになるのが少し悲しいような複雑な気持ちだ。
「父上、ダンジョンの様子はどうだったのでしょうか?正常に稼働していたでしょうか」
「ダンジョンはしっかりと動いてたぞ。実際に戦って思ったが、あそこは難易度の変化が激し過ぎるな」
「そうなのですか?俺が行った時はスタンピードの時でしたので、階層ごとに戦う事が有りませんでした。なのであまり想像がつかないのですが・・・・」
「一階層のブラックスパイダーの群れは四級か五級でクリアできるが、二階層に出てくる三体と首狩りトンボは空中の敵に対する攻撃手段を持った三級でないと無理だ。三階層はインセクトウォリアーとインセクトマンが同時じゃ、同じく三級以上は無いと駄目だな。ブレスト殿は今の話を聞いてどう思った?」
「ん~そうですね・・・・三級以上が必要な割には階層と敵の強さが物足りないと言う感じですね」
「やっぱそう思うよな~」
インセクトウォリアーは三級の冒険者じゃないと相手にならない程強いが、一体しか湧かず階層も少ないとなると三級冒険者が相手にするには物足りないダンジョンになってしまうだろう。だが、四級が挑むには難易度が高すぎるという面倒なダンジョンだな。
「あれで物足りないのか・・・・」
「テセウ、三級冒険者は基本パーティーを組んでるし一人で対処可能だと考えて見て下さい」
「・・・・・なるほど。納得だ」
「それでは、旦那様。結局あのダンジョンはどうなされるつもりなのでしょうか?」
「結論としては、ダンジョンの運営はしない事に決めた。開発するための費用と利益があまりにも釣り合ってなさ過ぎる。生体金属が出るのは魅力的だが、それでも尚三級パーティーが行くほどの魅力は無いからな」
あそこまでの道を整備する費用は馬鹿にならないし、あそこまで管理するとなるとシュナイザー様の仕事が増えすぎて手が回らなくなってしまうだろう。それに、シュナイザー様の言う通りあのダンジョンにそこまでの魅力は無い。
「それでは、壊すのでしょうか」
「いや、それもしない」
どういうことだ?ダンジョンを運営しないのであれば壊すか訓練場にするかと思ったが、衛兵の訓練場にするには距離があるし難易度が高すぎるだろ。
「どういうことでしょうか?」
「つまりは放置という訳だな」
「えっ」
「ん?どういう事でしょうか父上」
「旦那様どういうお考えですか?」
いやいや、放置するなんて冒険者ギルドや国が黙っている訳が無いだろ。小規模なダンジョンでスタンピードも激しくは無いが、被害が出ない訳でも無い。インセクトウォリアーがダンジョンから出てきたら危険だし、そいつが他の町にまで行ったら被害は甚大なものになるぞ。そんな危険を冒険者ギルドが許す訳が無い。
「放置と言っても管理しない訳じゃない。スタンピードの頻度から考えてあのダンジョンは魔力が溜まるのが遅いか、限界値が大きいと判断した。なので一年に一度ダンジョンの魔物を討伐すればスタンピードは防げると思われる。これは冒険者ギルドのギルド長も同意見だそうだ」
「なるほど」
「なので、俺が行くかもしくは冒険者ギルドから一年に一度討伐隊を派遣してガス抜きをすれば安全だ。整備するには費用が掛かり過ぎるし潰すには生体金属が惜しい。それを踏まえた結果、こういう処遇になった訳だ」
「冒険者ギルドとしては危険は無いし、好きに出入りすることは出来るから問題は無い訳か」
「そういうことだ」
この中で一番冒険者ギルドの事を知っているブレストが納得しているので、シュナイザー様が言っていることはまともなんだろうけど、ダンジョンを放置って聞くととんでもない人に見えてしまうな。
「冒険者ギルドにはダンジョンの場所を伝えるし、冒険者にも公布する。階層や出現する魔物の情報も伝えてその後行くかどうか冒険者次第って感じだな」
「冒険者が行くかどうかは自己責任ですし、行って戻ってくればギルドの収益にもなる。手間をかけずに、儲けられるって訳ですか」
「冒険者ギルドもあんな僻地で人気の出なそうなダンジョンを管理したく無いだろうからな」
手放すには惜しいけど管理するのは色々と費用が掛かって面倒だという色々な思考が合わさった結果そういう処遇になった訳か。ギルドが納得してるなら俺達がとやかく言う必要は無いだろう。
「両者が納得してるなら俺達は何も言う権利は無いですね」
「つまりはこれからもダンジョンに自由に行くことが出来るんですね」
「テセウはその前に学院に行って強くなって来なきゃ無理だがな」
ダンジョンを潰す事無く自由に行けるようになると聞き、目を輝かせるテセウにシュナイザー様は少し呆れたように言う。
「分かってます」
「と言うことで、ダンジョンの処遇が決まったことだし二人への依頼は此処で終了なんだが・・・・」
あ、そうか。俺達の依頼期間はダンジョンの処遇が決まるまでだったな。それが決まった今俺達は依頼完遂と言うことになっちまうんだ。だけど、まだまだテセウに教えてい無い事が沢山あるのにここで終わりなんて・・・・
「そんな・・・・父上、俺はまだクロガネから学びきってはいません。なので追加の依頼を出したいです!」
「こう言ったらなんだが、テセウお前がクロガネ殿の技術を学びきるには後何年も掛かる。そんな期間クロガネ殿達を拘束することは出来ない」
「分かってます、分かってますが・・・・」
「だから、期間を延ばすのはお前の誕生日までだ。あと一ヶ月で、悔いのないよう学ぶようにしろ。勿論ブレスト殿とクロガネ殿が承諾してくれればだがな」
俺だってまだテセウに色々な事を教えたい。お願いブレスト!あと一ヶ月だけ!
「分かってるってそんな目で見るな。勿論その依頼受けさせて貰います」
「そうか、一旦最初に出した依頼は清算させて貰って明日新たな依頼を出させて貰おう。これで俺も暫くの間楽できるな・・・・」
「聞こえてますよ~」
「クロガネ、後一ヶ月と言う短い時間だが引き続き頼むな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
テセウは依頼を受けると答えた後安心したかのように笑顔になり俺に頭を下げるので俺も同じく下げる。俺達が嬉しいのは勿論だが、仕事が少し楽になると言うことでシュナイザー様も嬉しそうだな。
さて、後一ヶ月しか無いんだから計画的かつ効率的にやって行かないとな!
読んで頂きありがとうございます!
コメント・感想・評価・ブックマークお願いします。
基本毎日投稿しており、時間は決まってません。
twitterで更新状況を発信しているので、宜しければフォローお願いします。