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帰還とサプライズ

行きと同じように何事も無く三日で町に戻って来た俺達は、帰還の歓迎を受けながら領主館に戻って休む暇も無くシュナイザー様は執務に戻ってしまった。休むにしては全然疲れていないしそれにまだ昼過ぎだから早すぎる。やる事も無いし中庭からテセウとブレストの気配を感じるしそっちに行ってみるか。


「飛び道具相手は狙いを定めさせる隙を与えないように、不規則な動きをすることが大事です。一定の動きを繰り返していたら行動を先読みされますよ」

「魔法師相手でも同じだろうか」

「基本は同じですけど魔法師相手に一対一をするのであればまず視界に入らないように気を付けた方が良いですね」

「なるほど」


 今はブレストに飛び道具や遠距離攻撃を持った相手との戦い方を学んでいるみたいだな。ブレストの言う通り、飛び道具を使う奴らは距離を空けている相手に攻撃を当てなきゃいけないので相手の行動を予測することに慣れている。だから、単調な動きをすれば的になるだけだ。魔法師の場合は視認した場所や相手を指定した魔法とかもあるから、障害物などがあるのであれば視界に入らないようにするのが安全だ。うんうん、学んでいるみたいだし俺が居ない間ブレストに指導を頼んでおいて良かった。


「受け止めるのは極力は止めた方が良いのだな?」

「魔法は効果によっては防御しきれない事もありますし、純粋なタンク以外が受け止めるのはお勧めしませんね」

「なるほど、確かに効果や威力が定かでない魔法を受けるのは危険か。それならば矢はどうだろう」

「確実に防御する自信があるのであれば良いですけど、矢には麻痺毒などの毒が塗ってあることも多いので受け止めるのであれ傷一つ無く受け止める必要があります」

「毒か・・・・」

「液体が入った瓶を投げつけられた時は要注意ですね」

「そういう手もあるのか」


 そうだな~矢に毒を塗るのは常套手段だし、燃えやすい液体や相手を溶かす液体を瓶の中に詰めて相手にぶつけるという戦法を取る奴もいる。純粋なタンク役や盾役だったら、スキルや強化それに装備品と鎧で防御手段を固めているから受けても大丈夫だけど、テセウは受け止めない方が良いだろうな。


「まぁ、そういう手段はクロガネが詳しいからクロガネに任せようか」


 気配を消しながら歩いて来たのでテセウはまだ気づいてないが、ブレストは俺の事に気付いたみたいだ。その証拠に笑いながら俺が寄りかかっている壁に向かって手を振っている。


「え?・・・・壁の後ろに居るのか?」


 その様子を見てテセウは顔を顰めながら俺の気配を捉えようとしたので、驚かすために本気で気配と姿を消しテセウの背後に行き肩を叩く。


「どうも」

「うわっ」

「おわっ」


 急に肩を叩かれ声がしたのに驚いて思わずテセウは回し蹴りをしてきたので、上体を反らし顔面に向かってくる足を避ける。俺の姿を見たテセウはしまったという顔をするとすぐに足を下ろし綺麗に90度腰を折ると


「すまない!!!」

「いや、驚かせた俺が悪いんですから気にしないでください」

「いくら驚いたとしても蹴って良いものでは無い!本当にすまない!」

「俺は良い反応だと感心しているくらいなんですから、そんな謝らなくて良いって」


 それに、当初の目的である驚いたテセウを見ることが出来て俺は大満足だ。ふふ、あの超驚いた顔は中々に見ものだったぞ。まぁ個人的な面白さは置いておいて、俺の声にすぐに反応して攻撃したのは良い反応速度だと思うぞ。


「だが・・・・」

「ほら、ブレストは爆笑してるくらいだし気にしなくても大丈夫ですから」


 驚いて攻撃してしまったテセウを見てブレストなんかは隣で腹を抱えて大爆笑してるし、何なら驚かしたことを怒ってもいいくらいなんだからな。


「そうか・・・・ならばこれ以上の謝罪は良くないか。では、改めてクロガネ、無事の帰還でなによりだ」

「はい、ただいまです。シュナイザー様も執務で忙しそうですが怪我は何一つありませんよ」

「そうか、無事で何よりだ。何かダンジョンに変化はあったのか?」

「変化というか、なんというかダンジョンが正常に動いてはいましたね」

「なるほど、詳しく聞いてみたいが今は鍛錬中なのでな」

「なのでその話は後程。確か毒とかの話をしてましたよね?」

「あぁ、毒などの飛び道具はクロガネに聞いた方が良いと言われた」


 俺も毒の専門家という訳じゃないから何でも知ってる訳じゃ無いけど、ある程度の毒を知っているし持っているから説明することは出来るな。マジックバックから今持っている毒を取り出しテセウの前に並べてみる。


「これが今俺が持ってる毒で使い道がある毒ですね」

「ふむ。毒と言えば毒々しい紫色などのイメージだったが、色々な色があるのだな」


 俺が持っている毒は、この森に出てくるポイズンセンチーピードの毒やフォレストスネークの毒、そして王都の雑貨屋で買った麻痺毒やヴェノムフロッグの毒液にブラッドスネークの毒液などだ。テセウが言う通り毒らしい紫色から、鮮やかな黄色に血のような赤色、そして水のように透明な色まで様々だ。


「毒々しい色をしている毒ってそんなに無いんですよ。それに明らかに毒みたいな色をしていたら相手にバレちゃうし、飲み物とかにも混ぜられないでしょ?」

「それはそうだが・・・・」

「何も無いように見えて実は毒が塗ってあったりと分からないからこそ毒は厄介なんですよ」


 明らかにこれは毒です!って主張していたら相手に警戒させるだけだし、毒は相手に気付かれないように盛ってこそ真の効力を発揮する物なのだ。


「毒は、掠っただけ触っただけ吸い込んだだけで確かなダメージを相手に与えますし、毒を取り込んだ体ではまともに戦えるものじゃありません。少しの怪我が致命傷になるのが毒なんです」

「・・・・恐ろしいものなんだな」

「えぇ、恐ろしいですよ。顔に掛けられれば失明しますし、毒が体内に周れば動きが鈍り思考もぼやけてしまう。物によっては全身から血を噴き出す物もありますから、毒に対する対抗策を常に用意しておく必要があります」

「解毒ポーションか」

「有名かつ一般的な方法だと解毒ポーションですけど、一部の強力な毒は上位ポーションか専用の解毒薬が必要になったりします。なので、解毒ポーションを持っているから必ず安心とは考えないでください」


 解毒ポーションはありとあらゆる毒物に効く万能薬だが、それは弱い毒に対してだけだ。だけど強力だったり特殊な毒の場合、薬師が作る解毒薬が必要になったり光魔法によるアンチポイズンなどの魔法が必要になるので過信は禁物だ。


「他の対策だと・・・・装飾品か」

「その通り。毒耐性を上げられる装飾品は冒険者が必ず持っているべき物の一つですね。装飾品の質や掛けられている付与の強さによって対抗できる毒の強さが変わりますけど、複数付ける事によって重ね掛けが出来ます。なので、強力な毒を防ぐために幾つも付ける人が多いですね。テセウは持ってますか?」

「あぁ、この首飾りが毒耐性と精神耐性の付与が掛かっている」

「なるほど、常に付けておいた方が良いものですね」

「クロガネは持っているのか?見た所何も装飾品を付けているようには見えないんだが」

「俺は体質的によっぽど強力な毒や特殊な毒じゃない限り効かないんですよ」

「そうなのか・・・・凄い体質だな」

「えぇ、だから低位の耐性の装飾品を付けても意味が無いので付けて無いんです。つけるとしたら高位の毒耐性の装飾品が良いんですけど、見つからなくて」

「高位だと二級ぐらいの装飾品か・・・・それは中々手に入るものでは無いな」


 装飾品にも冒険者と同じようにランクが決めれていて、1から5までの階級で表されている。二級ともなればヴェノムドラゴンの毒液を全身に浴びても平気なぐらいになるが、そんな高位の装飾品は中々見つけられるものでは無いのだ。


「そうなんですよね~」


 その後も夕飯になるまで毒や溶解液についての説明を続け、テセウが持っていた毒に対する誤った認識を正し夕食へと向かうのだった。

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