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三度ダンジョンへ

 毎日のようにテセウに体術の鍛錬と様々な武器を相手した模擬戦を始めて1週間と少し経った頃。俺はシュナイザー様から明日ダンジョンに向かうので準備をしてくれと言われ準備をして、町を出発した。


「何度も同行して貰って悪いな」

「いえ、そこまで大変な道のりじゃ無いので平気ですし依頼ですから」

「この速さで動ける奴が他にも居たら良いんだがな~」

「それは流石に・・・・」

「やっぱり俺の領で働かないか?あの模擬戦で感じたようにクロガネ殿には多大な才能を感じるし、かなりの賃金も保証するぞ。それにテセウはクロガネ殿の事を大層気に入ってるみたいだしな」

「テセウは良い友人ですけど、前も言った通りお断りします」

「はぁ~やっぱり駄目か」


 前にも断ったように俺はまだまだこの世界を見て周りたいから、この領にそしてこの国に留まるつもりは無いのだ。


「ブレスト殿が俺の代わりをやってくれているが、この体制がかなり楽なんだよ。それにクロガネ殿も加わればっ」

「冒険者を勧誘する程この領は切羽詰まって無いでしょう?」

「まぁある程度の余裕はあるが、三級以上の実力がある奴が足りて無くてな。もう一人ぐらい居てくれれば俺も屋敷に帰って来やすくなるんだけどな~」

「三級以上なら引退する冒険者を雇ったらどうですか?」


 俺は今の所生涯冒険者で居るつもりだが、多くの冒険者は自分の身体や年齢による限界もしくは身を固めるために引退してどこかの町の衛兵や狩人になる事も多い。現役の三級はまだまだ稼ぎ時の人達が多いから無理だろうけど、引退する人達なら勧誘できると思うんだよな。


「何回か勧誘したんだが、ほら俺の町って常に戦いのさなかにあるようなものだろ?」

「まぁ、森の中にありますから常に危険と隣り合わせと言えばそうですね」

「引退する奴らは戦いの喧騒から離れてゆったり暮らしたいとか言って、俺の町を選んでくれないんだよな~」

「あ~・・・・なるほど」


 引退するまでの長い間を戦いの中に身を置いていたから引退した後は、戦いから離れてゆったりとした生活を送りたい奴が多いのか。俺としては常に戦ってきたのに、戦いから離れてゆったりした生活に満足できるのかが甚だ疑問だけどな。


「良い町なのは間違いないんだが、戦いと魔物からの襲撃とは切っても切れないからな~それに騒がしく活気が在る町だから静けさとは縁遠いんだよ」

「俺はウォルマの町の雰囲気は好きですけどね~」

「それなら」

「いや、だから住むつもりは無いですよ」

「はぁ~優秀な魔法師でも転がり込んでこないかな~少しぐらい厄介ごとを抱えた奴でも何とかしてやるからさ」

「領主がそんなこと言ってどうするんですか」

「領主だからこそさ」

「うわ~悪い顔」


 ニヒヒと笑うシュナイザー様はさながら盗賊の親分みたいだ。確かにシュナイザー様ほどの権力があればある程度の厄介ごとならもみ消すことは可能だろうな。それに、ウォルマの町はこう言ったらなんだがかなりの田舎と言える場所に在る。外から入ってくる奴らは冒険者や衛兵希望者ばかりで、働く場所はあるし厄介ごとから逃げるには最適な場所だと言えるな。


「森の様子もだいぶ落ち着いて来たな」

「ですね、インセクト系統の数も落ち着いてますしなによりブラックスパイダーが全くいない」

「あいつらは元々そんなに積極的に人を襲う魔物じゃないからな」


 雑談をしながらも俺達はスピードを落とす事無く立ち塞がる魔物達を倒し森を突き進んでいる。俺も久々に森の中に入るが、明らかに前までの森の様子とは違っている。まだ他の森と比べれば魔物達が多い方だが、明らかに数が減っているし森を包んでいた騒がしい気配が無くなっている。これはダンジョンの影響がかなり薄れてきたと考えて良いだろう。


「魔物の数はこれぐらいが普通なんですか?」

「おう、この森は元々魔物の数が多いからこれくらいが普通だぜ」

「そうなんですか」


 魔物が多いってことはそれだけ魔力が豊かで自然が豊か、そして餌になる獲物も多いってことだ。そういえば、少し疑問に思ってたことがあるんだが


「シュナイザー様、少し質問良いですか?」

「俺に答えられるやつなら何でも良いぞ」

「それじゃあお言葉に甘えて。この森ってかなり広いですけどシュナイザー様達が守ってる場所ってフォレシアとの国境だけなんですよね?」

「そうだぞ」

「でも、あの狭い範囲で国境って守れるものなんですか?普通にウォルマの町を通らなくても森を抜けてフォレシアに入ったりこっちの国に入ったり出来ると思うんですけど」


 国境の審査から逃れるために、ウォルマの町を通らず森を抜けようとする犯罪者たちが居ても可笑しくないと思うんだけど。


「あぁそれは単純にこの無理を抜けるのが難しいからよっぽどの奴じゃ無きゃ抜けようとは思わないから大丈夫なんだよ」

「そうなんですか?」

「クロガネ殿は気配の察知によって木の上や茂みから飛び出てくる奴らに対処出来るが、殆どの奴はそんなに気配に鋭くないからインセクト系統に殆どの奴らが狩られちまうんだ。森の深い場所には例えばイビルデーモンスパイダーとか、キルポイズンセンチとかヤバい奴らも居るしこの森だけでもかなりの規模があるから抜けるのは至難の業だな。それに俺達みたいな速さで抜けられる奴なんて限られるだろ?」

「そうですね」

「しかもこの森を抜けてもその先にはあるのはフォレシアの森だ。あの森は馬鹿みたいに強い魔物が多いし、安全な町にはかなり進まないとたどり着けないんだ。元々フォレシアは閉鎖的な国だし、多くの奴らは行こうとは思わないだろうな」

「なるほど」


 フォレシアの話題は何度か聞いているけど、相当癖がある国みたいだよな。


「フォレシアから先の国に行く時も殆どの奴らはフォレシアを通らず迂回するルートで行くことが多いが、それでも一定数フォレシアに行く奴らが居るんだ。そいつらが利用するのが、俺達の町ウォルマって訳だ。ウォルマから先の砦はフォレシアの森の中でも一番危険度が低い場所に在るし、そのまま真っ直ぐ進めば町に辿り着くからよっぽどの奴でない限りウォルマを利用するだろうな」

「ウォルマを通るのが一番安全なのか」

「その通り。それに砦はフォレシアで採れる貴重な植物を運ぶ関所として作られてもいるんだぜ」

「フォレシアってそんなに良い植物が採れるのか」


 わざわざ危険な森の中に町を作りフォレシアまでの道を整備し砦まで作ってるということはかなり有用で希少な植物があるんだろうな。


「植物に関してはフォレシアは近隣諸国の中では一番だな。有名な薬師や研究家も高い金を払ってフォレシアの植物を取り寄せるぐらいだからな」

「なるほど」


 つまりウォルマの砦はフォレシアから流れてくる魔物達を防ぐ役目だけじゃなくて、フォレシアとの貿易の重要な拠点になっている訳か。貿易は国にとって利益を得る為の重要な要素だし、そこを管理しているシュナイザー様はかなりの権力を持っているはずだ。前に公爵並みの権力を持っていると聞いたけど、納得だな


「何だその顔は」

「いや、シュナイザー様って凄い人なんだなって

「どうしたんだいきなり」


 街の防衛と国の防衛それに貿易の管理までして、子育てもしているなんて物凄い事だと思う。俺ならそんなに多くの仕事をこなすことは無理だろうし、貿易の難しい金の計算なんて絶対に無理だ。そこまで多くの仕事をこなしているなら、防衛を任せられる人材が欲しくなるのは当たり前だな。


「強い人見つかると良いですね」

「それなら目の前と領主館に居るんだがな~」

「その人とは別で」


 世の中には俺達以外にも沢山の強い人が居るから、そのうち戦いを求めてどっかからやってくるさ

読んで頂きありがとうございます!

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