今日は休息日
模擬戦をした次の日、いつものこの時間はテセウと朝の鍛錬をしているが今日は毎日やっていた特訓の疲労と体を休ませる時間が必要だと考え今日一日は特訓はお休みにしたのだ。休みと聞いてテセウは嫌そうな顔をしたけど、体調を整えるのは大事なことなのでくれぐれも黙って個人鍛錬をしないようにと言っておいた。
「さて、今日は何しようかな~」
「久々の休日だしゆっくりしたらどうだ?」
ベットから起き上がり寝間着から着替え何処かに出掛けようとする俺を見て、ブレストはベットの上で本を読み寛ぎながら言う。
「え~依頼をこなして評価を上げたいし、最近はずっとテセウの訓練をやってるから新しい魔法とか技を試せて無いんだよ」
「毎日錬金魔法の鍛錬はやってるだろ?依頼も今やって指南役の指名依頼で評価は上がってるはずだぞ」
「そうか?でも、まだまだ四級には遠いと思うし魔法の威力だって足りて無いだろ?」
「すぐには強くはならないもんさ。焦っても仕方が無いしテセウ様に休息の大事さを伝えたのは何処の誰だっけ?」
「うぐっ」
「それに、調査の依頼を受けてから今日までずっと何かしらやっていて一日中休んだ日は一切無いだろう?」
確かに休息の大事さを伝えたのは俺だし、調査から帰った後もテセウの訓練がすぐに始まってシュナイザー様をダンジョンまで案内したり模擬戦をしたりとしっかりと休んだ日は無い。
「プリトの街で活動している時俺は何て言ったかな~?」
「3日連続で働いたら次の日の1日は必ず休むこと。休みが取れなければ、休める状況になった時にしっかりと休息を取るように」
「その通り、ということは?」
「・・・・今日は仕事を休みます」
「宜しい」
ブレストは俺の返事に満足だと言う笑顔を浮かべならが深く頷くと、また読書を始めた。
「だけど、錬金魔法の練習はしても良いだろ?」
「それぐらいなら良いぞ」
「よっしゃ」
錬金魔法の練習は欠かす事無く毎日やっている。まだまだ錬金魔法の初歩の初歩だけど毎日練習したおかげで段々と物質を変換するスピードが速くなってきているのを実感している。それについ最近まで石などの生きていない物しか形を変えられなかったのがやっと植物でも殺さず形を変えられるようになってきたのだ。この小さな前進に俺は飛んで喜んじまったぜ。コツとしては、他からの干渉を受けないように完全に俺の魔力で保護することだな。
さてさて、フォルネーラ様に貰った魔導書によると次の段階は異なる物質を分解して組み合わせて新たな物質へと組み替える段階みたいだな。最初は失敗するだろうから、始めは安価で手に入りやすい物から練習した方が良いよな。う~ん、石と魔石を使って見るか。
「石は沢山あるし魔石も小さなやつが沢山あるからこれで良いだろ。それじゃあ何を作ろうかな~・・・・」
魔石と石は俺の直感だと相性が悪くも無ければ良くも無いって感じだな。作れるものと言うと魔力を宿した石の人形とか魔石が刃となった石のナイフが簡単そうだよな。まずは人形を試してみるか~
「魔石と石を同時に分解して・・・・魔力を貯める性質を石に重ね合わせて形を作ればっうん、いい感じ」
いつも作っている石人形に魔石を分解して混ぜ合わせる事によって、全体に魔力が宿る石人形が完成した。顔も指も無いただの人型をした人形だけど初めて作ったにしては上出来だろ。
「意外と苦戦しなかったな。だけど、魔力が宿る人形を作っても意味が無いよな」
戦いや旅で役に立つ物を作りたいんだけどな~・・・・
「魔力・・・・金属・・・・武器・・・・攻撃・・・・威力・・・・そうだ!」
金属と魔石を融合させて魔力を持たせることが出来るなら、本当に幅の広い武器を作れるはずだ。俺は火の魔石をマジックバックから取り出してみる。魔石にも属性があって、火・風・水・雷・土・闇・光そして希少な空と時だ。それともう一つどんな属性にもなる無属性という種類があるのだ。そして、もう一つ材料として取り出したのは俺がいつも使っている棒手裏剣だ。
「俺の考えならこの二つを使えば・・・・」
火の魔石と棒手裏剣を分解し鉄の硬さと火の魔力を貯めるという性質を重ねて、好きな量だけ魔力を入れられるようにして、勢い良く何かにぶつかった時に魔法が発動するようにしてあげればっ
「よし、出来た!」
石人形の時よりも苦戦したけど、無事に火の魔石と棒手裏剣を合わせた錬成が成功し俺の手には火の魔石の水晶のような赤い色と鉄の輝きが合わさった棒手裏剣が作り出されていた。
「使って見ないと分からないけど、これが使い物になるんだったらかなり攻撃手段が広がるぞっ」
「ん~何が出来たんだ・・・・うわ、綺麗だなそれ」
「だろ?水晶っぽいけど透けて無いし輝きが金属みたいで俺も中々の出来だと思う」
「その形からして、棒手裏剣を作ったのか?」
「おう、火の魔石を使ってな!」
俺の狙い通りならこの棒手裏剣には火の魔法が宿っているから、相手にぶつければ火の攻撃が出来る・・・・と思う!俺の魔力は風と雷、そして闇属性しか持っていないから火や水の攻撃が出来なかったんだがこれが成功せれば攻撃手段がぐんっと広がるはずだ。材料を手に入れないと駄目だが、魔石なら魔物を狩っていれば大量に手に入るし鉄だってそこまで高い物じゃない。
「ってことは火で攻撃出来るようにしたわけか」
「上手くいけばな!早速試して・・・・やっぱ次にします」
「うむ」
完成した物を早く試してみたいと思って、急いで森に行こうとしたがブレストに言われたことを思い出し実験は今度にすることにした。う~早く試してどんな感じになるのか見てみたいのに!初めて作ったものだから絶対に何か修正しないと駄目な部分があるだろうし改良も重ねてみたい。けど、今日は休息日だから我慢だな。
「それじゃあ、錬金魔法は終わりで何しようかな~」
「読みたい本があれば貸してやるぞ」
「本か~あ、そういえばブレストって魔導書を書いてるんだよな?」
「おう、書いてるぞ」
「それって中身は秘密なの?」
「いや秘密にはしてないから見ても良いぞ」
「ほんとに!?やった!」
旅をしている間やプリトの街で魔法を教えて貰っている時に、何度かブレストの魔導書を見たことがあるのだ。中身は詳しく知らないけど、結構厚い本だったしブレストが作った魔法には興味があるから良かったら見てみたかったんだよな!
ブレストから黒く滑らかな革に表紙には、金で描かれた太陽と銀で描かれた月が描かれていてそれはまるで夜空で向かい合う二つの星に見える魔導書を受け取る。まるで大きな教会に飾られているガラス細工のように繊細で神聖さを感じさせるその絵は俺でも良さが分かるほどだ。
「これ、凄い綺麗だよな」
「ははっありがとな。これは師匠に描いて貰ったんだ」
「そうなのか・・・・」
俺は決して汚さないように気を付けながら慎重にページを捲るとそこには・・・・
「何だこれ?」
俺が全く知らない文字と分かりやすいように描かれた武器の絵が書かれていた。絵の方は分かるけど、文字は今まで見たことが無い文字で一筆で書かれたものから物凄く複雑な線が集まって出来ているものなど多種多様で、まるでいくつかの文字を同時に使っているみたいだ。
「それは俺の元居た場所で使ってた文字なんだ。遥か遠くの文字だから俺以外には読める奴は・・・・居るかもしれないけど出会える可能性は物凄く低いな」
「それって・・・・前に言ってたニホンとか言う場所のこと?」
「そうだ。もう行けない場所で知ることも出来ないんだがな」
「ふ~ん・・・・じゃあ、俺にこの文字教えてよ!ブレストの文字を知ってみたいんだ!」
「・・・・そうか。でも大変だぞ~」
「それでも覚える!」
だって、ブレストが使っている文字が誰も知らないなんてそれは少し悲しいと思うんだ。ブレストが何かを書いても誰も理解できないで、その意味が分からないのは嫌だしブレストの事をもっと色々知ってみたい。それに・・・・ニホンの事を聞いた時ブレストは凄く寂しそうな顔をしてたんだ。
「そうか・・・・なら教えてやるよ」
そう言ったブレストは凄く穏やかな顔をしてたけど何処か懐かしいような寂しいような顔をしてた。
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