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最後の地球人♂、仙女や魔女と月の海を航る ~ルナマリアノーツ~  作者: 和泉 健星
3章 混沌からの侵略者 ―遥かなるトゥオネラ―
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♯58 四柱目の造物主と、二人の<魔女>を引き合わせた

第58話。この章のエピローグ(の前編的な位置づけの話)となります。





 キロウスとの死闘たたかいから一夜が明けた。


 シャロンから聞いた話によると、アリシア、シャロン、クロエ以外の『トゥオネラ・ヨーツェン』待機組は全員キロウスが持っていた不思議な鈴のチカラで眠らされてしまったとのことだったが、彼らは全員、日の出とともに無事目を覚ました。


 まずは大事だいじ無くて何より……なんだけども、鈴と聞いて、ある可能性、不穏な想像がボクの頭をよぎったのも事実だ。……ボクの考えすぎだといいんだけど。


 ――で。目を覚ました彼らは、『枝』の坂に連なる蒼い鳥居のひとつが倒壊していることに気付いてひどく驚いたらしい。そりゃあそうだよね、という話である。自分たちが寝る前まではなんともなかったワケだし。


 まあ、もっとも、アリシアたちが「寝惚けた船長が隕石を落っことして壊しちゃった」と説明したら、みんなアッサリ信じてくれたらしいけれど。…………信じるか普通? どうやらボクはみんなに、かなりのウッカリさんだと思われているようだ。ショック。






 お察しのとおり、キロウスの襲撃の件はみんなには伏せておくことになった。これはマリナの提案である。


 彼女(いわ)く、


「せっかく皆さんがこれから頑張ってここを開拓しようとしているのに、襲撃があったと知ったら、士気がくじかれてしまいます。外界そととここを行き来するときだけ気を付ければ、今回のようなことが再び起こることはないでしょうから。ちょっぴり心苦しくはありますが、余計な心配をさせないためにも皆さんには秘密にしておきましょう☆」


 とのことだ。


「そうだね。特にルーナにだけは絶対バレないようにしてね、だんなさま。アリシア、シャロン、クロエ、イリヤ、あなたたちも注意するんだよ? でないと辻褄つじつまが合わなく……じゃなくて、だんなさまが右腕をがれちゃったことも芋づる式にバレて、ルーナがショックを受けちゃうことになりかねないから。――事なきを得たとはいえ、大好きなヒトが右腕を捥がれたなんて事実、十歳の女の子にはショッキング極まりないだろうからね」


 カグヤからはそう忠告されたりもした。


 まあ、ボクとしても異存は無い。みんなにとってここはようやく見つけた安住の地、楽園なのだ。なのに辿り着いた初日に襲撃を受けたことを知ったら、みんなを絶望の淵に突き落としてしまいかねない。結果的にみんなを騙すことになるワケで、心苦しくないと言ったら嘘になるけれど……。みんなのために、この秘密は墓まで持っていくことにしよう。


 とか思ってたら、リオンさんにはアッサリとバレた。


「旦那様? 私に何か隠し事をしてないかしらっ? 今日のシャロン、なんか様子がおかしいのだけれど!」


 ……うん、まあ、このことでシャロンを責めるのはこくというものだろう。

 母は偉大なり――そういう話なのだろう、これは。たぶん。


「ふぅん……なるほど。私が寝ている間にそんなことがあったのね。ありがとう、旦那様。シャロンたちを護ってくれて。…………あなたが傷付いている間も呑気のんきに寝こけていた私をゆるしてね」


 すべてを知ったリオンさんは唇を噛みつつそう言った。

 彼女は何も悪くないのだから、謝る必要なんてどこにも無いのに。


「あ、そうだわっ☆ 頑張った旦那様にご褒美をあげなくちゃ! ……って、なんで逃げるの旦那様!?」


月棲獣げっせいじゅう』をたおしたあと彼女と交わした会話――ご褒美にチュウを云々(うんぬん)って話――を思い出し、ボクはダッシュで逃げたのだった。


 いや、まあ、流石にあれはリオンさんも冗談で言ったんだとは思うけれど。念のため、ね。






 ちなみにもう一人、ボクがすべてを明かした人物がいる。

 ツバキだ。

 彼女にだけは、カグヤたちと相談した上でこちらから話しておくことにした。

 みんなの実質的なリーダーである彼女には知っておいてもらったほうがいいと思ったからだ。


「な、なんじゃ旦那様、大事な話というのは。しかもこんな人目につかないところで。……ハッ! ま、まさか……!? ちょ、ちょっと待つのじゃ! 深呼吸をするから! 心の準備をするから!」


 ボクがこっそり呼び出したツバキは(何故か)当初ひどく落ち着かない様子だったけれど、ボクがキロウスと再戦し斃したことを伝えると、飛び上がらんばかりに驚いた。


「な、なんじゃと!? わらわの知らぬところでそんな大変なことが!? ちゅーか、よくもまああんな化け物に勝てたの旦那様」


 ツバキは腕組みをして「う~む」と唸ると、額に脂汗を浮かべボクをチラリと見、


「これは……、思った以上にヤバい男に惚れてしまったのかもしれんの」


 と、()()()()()()()()()()()()案じる様子を見せた。


 いや、ボクから言わせればカグヤのほうがヤバい存在だからね?

 ツバキが知らないだけで、彼女もれっきとした造物主カミサマなんだから。


 ……言えないけれど。






 そう。カグヤとマリナの正体については誰にも――あの死闘たたかいを目撃した少女たちにも話していない。カグヤとマリナが一時いっときボクの身に宿っていたことも含めてだ。たぶんこの先もボクの口から語ることは無いだろう。何故なら、それが当人たちの望みだから。


造物主カミサマだって知られると、いろいろとやりにくくなっちゃうだろうからね」


 とはカグヤの談だ。


 その無さそうな笑顔を前に、ボクは掛ける言葉が見つからなかった。

 どう返したらいいのか、わからなかった。


 造物主カミサマには造物主カミサマの懊悩おうのうがあり――孤独がある。

 そしてそれはたぶん、ヒトの身では理解することはおろか想像することすら困難な、そんな絶望に違いない。


 ……ヒトにとっては永遠にも等しい時間を生きなければならない者たちの孤独。

 永遠の存在者ゆえの絶望。


 そんな中、彼女たちがながきにわたって繰り広げてきた、ひとつの戦い。



 その一端に、ボクは今、触れようとしている――











「来たかイサリ」


 今日からいよいよ本格的にスタートする開拓をみんなに任せ、カグヤとマリナ、そしてシャロンとクロエを伴い再び訪れた果樹園では、キロウスを斃すと同時に姿を消してしまった<種を播くもの(シードマスター)>クーリエが先に来て待っていた。


「お待たせ、クーリエ」

「ん。……悪かったな、イサリ。あのあとすぐにいなくなっちまって。大丈夫だったか?」

「ああー……うん、まあ」


 本音を言うと、クーリエの姿を目撃したアリシア・シャロン・クロエ・イリヤの四人からは「あの赤毛の女の子は誰!?」と詰め寄られて結構大変だった。


 他に答えようもなく、正直に「ここの管理者である神様だよ」と答えざるをえなかったのだけれど……。<種を摘み取るもの(スピーシーズバスター)>スーザンと面識があるアリシアとシャロンはともかく、クロエとイリヤは「神様!? あんな可愛らしい女の子が!?」って愕然としていたっけ……。


 ……まあ、でも、当人クーリエがあの場に残っていたら残っていたで、ややこしいことになっただけな気がしなくもないし、あれで正解だったと思うことにしよう……。


「……で? そこの茶髪が潜伏していたキロウスの居場所を探り当てた奴か、イサリ」

「そう。このコはシャロンって名前でね。世間が言うところの<魔女>の一人なんだ。で、<魔女>ってのはみんな特別なチカラを持って生まれるらしいんだけど、彼女の場合は人並外れた気配察知能力がそれってワケ」

「はぁん。<魔女>、ね」


 ボクの説明に、シャロンの全身をジロジロ眺め回していたクーリエは面白くなさそうに鼻を鳴らす。


「キミが姿を消す直前『潜伏していたキロウスの居場所を探り当てた奴がいるはずだ。あとでそいつをアタイのところに連れてこい』って言い残していったから、このとおり連れてきたけれど。シャロンがどうかしたのかい?」

「ちょっとな。――おい、シャロン」

「ひゃ、ひゃい!」


 目の前に広がる『不思議な樹の実』シリーズがたわわに実った果樹園を、クロエと一緒に感嘆の面持ちで眺めていたシャロンは、クーリエに名を呼ばれてビクッとし振り返る。


「……ん? おいイサリ、このシャロンとかいう奴、なんで目を前髪で隠してるんだ? 外界そとじゃこういう髪型が流行はやりなのか? これ、コイツ自身はちゃんと前が見えてるのか?」

「そこは気にしないであげて」


 シャイな娘さんなんです……。


 実を言うと、ボクも以前「前髪をもうちょい短くしたら、シャロンがすごい美人さんだってことにまだ気付いてないヒトたちにも気付いてもらえるんじゃない?」って前髪のカットを勧めてみたことがあるのだけれど、


「わ、わたし、前髪越しじゃないと、ヒトの目を見てお話しすることが出来ないので……」


 と断られてしまったのだ。

 シャロン的には、


「わたしが好きになったヒトが知っていてくれれば、それで充分です……」


 ということらしい。


 本人がそう言うのであれば、これ以上ボクが口出しすることでもないか……と、それ以降シャロンの前髪については触れないことにしたボクである。


「クー。この世にはね、シャロンみたいな髪型の女の子がツボだって男性も沢山いるんだよ」

「シャロンさんみたいな女性を、メカクレ女子とおっしゃるそうですよ☆」


 そう説明したのは、昨夜はずっとルーナやツバキと一緒にいたことになっているカグヤとマリナだった。


 てか、造物主カミサマのくせにどこで仕入れてくるの、そーゆー知識……。

 あと、カグヤはクーリエのこと『クー』って呼んでるんだね。まあ、スーザンのことも『スー』って呼んでたしな。


「ふぅん。ま、なんでもいいけどよ。――よし。シャロン、ちょっとこっち来い」

「は、はい」


 クーリエに手招きされて、シャロンはオズオズと歩み寄る。


「……ふむ」


 シャロンの額に自分の掌を当てて、瞑目し何かを精査していたクーリエは、やがて目を開けると、


「……よし、問題なさそうだな」


 と言った。


「問題なさそうって何が?」


 ボクの問いにクーリエは肩をすくめ、


「アタイの見立てでは、こいつが感じているのは厳密には気配じゃねえ。おそらく魂魄タマシイの波動とでも言うべきモノだ」

「「魂魄タマシイの波動?」」


 ボクとシャロンのオウム返しがハモった。


 クーリエは「ああ」と頷き、


「キロウスのような邪悪な魂魄タマシイが放つ波動を感じちまうとな、悪い影響を受けかねないものなのさ。こっちの魂魄タマシイまでけがれちまうというか……汚染されちまうというか」

「「えっ」」

「まあ、そういう場合もあるって話さ。どうやらシャロンは大丈夫そうだ。――良かったな。魂魄タマシイが穢れちまったら人格が歪むし、輪廻転生も出来なくなるトコだったぞ」


 あ、焦ったー……。


「シャロンじゃなかったらアウトだったかもな。――おい、シャロン。神様の加護に感謝しろよ」

「は、はあ」


 神様の加護ねぇ。昔はちょくちょくお父さんと教会へお祈りに行っていたらしいシャロンなら、そういうのがあってもおかしくはなさそうだけど……。ここで言うところの神様って、クーリエたち月と地球の造物主とは別物なのかな?


 てか、どこまで言葉どおりに受け取っていいんだろ、今のクーリエの発言……。


「んじゃあ次だ」


 と言って、クーリエはクロエを手招きする。

 そして恐る恐るといった感じで歩み寄るクロエの額に、シャロンのときと同様に自分の掌を当てて、瞑目し何かを精査したクーリエは小さく頷くと、


「ふむ。やっぱそうか」


 と呟いた。


 ……いや、何が『やっぱそうか』なの?


「あの……クーリエ? キミが去り際に『あ。あの黒髪の眼鏡っも一緒に連れてこいよ』って言ったから、シャロンと一緒にクロエも連れてきたワケだけれど。クロエに関しては何を確認したかったの?」


 クロエにはシャロンのような気配察知能力……いや、魂魄タマシイの波動を感じるチカラ? は無いはずだから、確認したかったのは『クロエの魂魄タマシイが穢れてしまってないか』じゃないんだよね?


「ちょっとな。大したことじゃねーから安心しろ」


 ……なんで濁す? シャロンのときはアッサリ答えてくれたのに。


「――クロエとか言ったな。おまえも良い神様の加護を持ってるな」

「えっ」


 クーリエの言葉に息を呑むクロエ。


 ……てか、え? クロエにも神様の加護が?


「おそらくおまえのチカラも、シャロンと同様、他の連中のそれとは一線を画したモノなんだろう。――大事に使えよ。ひょっとしたらそのチカラのせいでおまえは<魔女>なんて呼ばれる羽目になっちまったのかもしれねーけど――おまえにとってそのチカラは呪いに等しいモノかもしれねーけど。でもな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。本来なら、祝福と見做みなされるべきモノなんだよ。正しく使えば、おまえや、おまえの大切なヒトの役に立ってくれる。いくらでもな」


 かつてこの世界を護ってくれたチカラの断片……?

 それってどういう……?


「よし。シャロン、クロエ、おまえらへの用はそれだけだ。カグヤと一緒に、先にお仲間んトコへ戻ってろ。アタイはまだイサリと話がある。――頼むわ、カグヤ」

「うん」


 シャロンとクロエはカグヤに連れられて一足先にみんなのところへ戻っていく。


 クロエはボクに話したいことがあるのかチラチラこちらを何度も振り返っていたけれど……なんだろう?

 キロウスとの死闘に決着がついてからこっち、ずっとドタバタしていて、クロエやイリヤとはろくに話が出来てないんだよな……。


「――さて。本題に入ろうか、イサリ」


 三人の後ろ姿をマリナとともに見送ったボクは、クーリエに呼ばれて振り返った。


「イサリ。おまえがカグヤやスーからどこまで聞いているか知らねーが、おまえの魂魄タマシイはこの宇宙じゃ『特別』だ」

「……『オリジナルの地球』を出自とする魂魄タマシイだから?」

「そうだ。第0宇宙にかつて存在したと言われている最初の地球――『オリジナルの地球』。そこでおまえは、なんらかの事情によりワームホールに呑みこまれでもしたんだろう」

「ワームホール」

「ああ。そして白鳥座に架かるかささぎの橋……事象の地平とディラックの海による断絶を越えて、この第52平行宇宙へと流れ着いたんだ。命を落とし、肉体を失い、それまでの自分を忘れ……魂魄タマシイだけの状態で。現在いまから何十億年も前にな」

「何十億年も前に……」


『オリジナルの地球』で生きていたころの自分はどんな人間だったんだろう……。


「いっぽう、アタイらオーバーロードは、どこからともなく生じ宇宙の闇黒あんこく彷徨さまよっていた無数の魂魄タマシイたちの『生きたい』『生きて輝きたい』という声なき叫びに応えるため、『オリジナルの地球』を参考に模造地球デイジーワールドの創造に着手していたワケだが……」


 オーバーロード。どうやらそれが、ボクがこれまで『造物主カミサマ』と呼んできた存在ものたちの正式な呼び名らしい。


「……着手するやいなや、この宇宙に流れ着いたボクの魂魄タマシイが、クーリエのチカラ――『宇宙播種パンスペルミア』の影響で、出来上がったばかりの地球に引き寄せられてしまった?」

「そういうことだ」


 頷くクーリエ。


 黙ってボクとクーリエのやりとりを聞いていたマリナが、そこで「ちなみに」と口を挟んでくる。


「あの模造地球デイジーワールドに舞い降りたイサリさんの魂魄タマシイを最初に見つけたのは、わたくしとカグヤちゃんなんですよ☆」

「そうだったな」とクーリエは再度頷き、「あとなイサリ、おまえの魂魄タマシイがあの地球に舞い降りたのは、アタイらにとっては別に不測の事態だったワケじゃねーんだ」


 え?


「どういうこと?」

「あわよくばこの宇宙にも『オリジナルの地球』を出自とする魂魄タマシイが流れ着いていて、アタイのチカラ、呼びかけに応え、あの模造地球デイジーワールドに舞い降りてくれないかなという淡い期待がアタイらにはあったんだよ。当初からな」

「えっ」

「イサリさん。『オリジナルの地球』を出自とする魂魄タマシイが平行宇宙に流れ着くのは、あなたが初めてのケースというワケではないんです。第1平行宇宙や第3910平行宇宙などでも、かつてあったことなんですよ」


 そうなんだ……。


「でも……だとしても、なんでそんな期待をする必要が?」

「決まってる。あのキロウスのような『混沌の眷属』を撃退するには、『オリジナルの地球』を出自とする魂魄タマシイの協力が必要不可欠だからだよ。不可能を可能とする者の協力が、な」

「不可能を可能に……?」

「そうだ。アタイらのチカラ――『神威かむい』は、アタイらですら一柱ひとりにつきひとつしか使えねえ。しかもそのチカラの強大さゆえに様々な制約を課せられている」

神威かむい……」


 ……あれ? ボクが使う格闘術は『神威かむい体現闘法(たいげんとうほう)漁火いさりびけん>』という名なのだけれど……。これって偶然なのか?


「だがおまえは違う。その身にアタイらを宿すことで、複数のチカラを同時に揮うことが出来る。おまえがキロウスとの戦いの最中に『星核構築』デイジーワールド・プログラムと『地球系統ガイア・システム』を同時発動し、右腕を全身防護服メタルジャケット籠手ガントレットごと再生させちまったようにな」


 そういえばキロウスも、ボクの魂魄タマシイは反則だ、みたいなことを言ってたっけ。



 ――『くっそぉー! これだから「オリジナルの地球」を出自とする魂魄タマシイはイヤなんだ! 反則なんだよぉ! 複数のチカラを当たり前みたいに使いこなしやがってぇ! この宇宙の地球と月を創造つくった連中でも不可能な芸当なんだぞぉ、それは!』



 つまりクーリエたちは、自分たちのチカラを自分たち以上に使いこなせる――それによって『混沌の眷属』を斃せるかもしれない存在が舞い降りるのを期待していたワケか。


「……ねえ、クーリエ。キロウスたち『混沌の眷属』ってのはいったい何者なの? 結局どういう存在なワケ? カグヤはこれまで数多あまたの宇宙、あだし地球で暗躍してきたこと以外何もわかっていない、みたいなことを言っていたけれど」

「カグヤが説明した以上のことはアタイにもわかんねー。……ただ、連中の目的は、なんらかの条件を満たした魂魄タマシイの収集じゃないかと言われてる」

魂魄タマシイの収集……」

「連中のせいで、これまで多くの模造地球デイジーワールドが犠牲になってきた。そしてそこを創造つくり、護るために立ち向かったオーバーロードたちが討ち取られてきたんだ。連中の撃退に成功したのは、さっき言った第1平行宇宙や第3910平行宇宙くらいのモンさ。おまえのような魂魄タマシイが、守人もりびととして連中に立ち向かってくれた――な」

「守人……」



 ――『――守人もりびとの因子を持つ者よ。「そのとき」が来た。護り、救うため、()()せよ』



 そういえばあのとき、シロ(?)が……。

 ということは……。


「……ねえ、もしかしてボクがこの蒼き月の海(ルナマリア)に来ることになったのは、守人として『混沌の眷属』と戦うことを期待されたから――キミたちに召喚されたからなの? だとしたら、なんでこの時代のボクじゃなく、過去のボクを召喚したの?」


 ボクの問い掛けに。


「「………………」」


 クーリエとマリナは無言で顔を見合わせ――そして気まずそうにこう答えた。


「すまん。事情があってな。そのへんのことはまだ話せねーんだ」

「その代わりと言ってはなんですが、イサリさんが今一番知りたいであろうことをお教えします」

「ボクが今一番知りたいこと?」

「はい」


 オウム返しするボクに、マリナは小さく頷いてこう言った。



「あのコ――ルーナを、元いた時代、元いた場所へ帰してあげるための方法です」



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