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最後の地球人♂、仙女や魔女と月の海を航る ~ルナマリアノーツ~  作者: 和泉 健星
5章 夢見る復讐鬼 ―ファースト・コンタクト―
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秘話 「早く大人になぁれ☆」

5月5日はこどもの日…ということで二回目のそれっぽいお話です。




 これは『ヘルクレス』に到着した日の夜――ボクが『武神祭ぶしんさい』への参加を申し込み、チンピラ兄弟に絡まれていた美人三姉妹を助け、『トゥオネラ・ヨーツェン』へ戻ったあとのお話。


 ルーナに頼まれて『星祭り』用の短冊に願い事を書いた、あの余談の続きだ。


 ボクの当初の願い事(『これ以上ルーナが魔性の女に育ちませんように』)を、これ見よがしなウルウルお目々(めめ)とへの字口で『……ってのは冗談で(汗)、ちゃんとルーナのところに戻ってこれますように』と加筆・修正させることに成功したルーナは、ホクホク顔で「それじゃあ早速海に流しましょう、イサリさま!」と先陣きって船長室ボクのへやを飛び出していったワケだけれども。



「――こんばんは、だんなさま☆」



 ボクがルーナの後を追おうと椅子から腰を上げたその瞬間、ルーナと入れ替わりで船長室へやに入ってきたのは、見た目十二歳くらいの美少女・カグヤだった。


 その身を包むのは、彼女が愛用している寝間着……普段の巫女装束のような衣装を極限まで簡素化したような薄衣うすごろもで、布面積の少なさから大胆に晒されてしまっている素肌、湯上りなのかほんのり桜色になった太腿や控えめな胸の谷間からは、女の子特有の良い匂いと一緒に妙な色香まで漂っている(見た目は十二歳くらいの子供なのに)。


「ちょっとカグヤ! 何度言ったらわかるのさ!? 船内とはいえ、そんな格好で出歩いたらダメじゃないか! 通路で男衆とすれ違う可能性だってあるんだぞ!?」


 まあ、彼らはみんな立派な妻子持ちな上、見た目や元・海賊という出自とは裏腹に意外と紳士だから、仮にこの格好のカグヤとすれ違うようなことがあっても不埒な真似はしないだろうけど……(万が一不埒な真似をされても、実は造物主カミサマであるカグヤならどうとでも対処できるだろうし)。


「大丈夫だよ、わたしがこの格好でここに来るときは細心の注意を払ってるから☆ ……なぁに、だんなさま。そんなに今のわたしを他の男の目には触れさせたくない――わたしの寝間着姿を独り占めしたいの?」


 …………………。


「で? こんな夜更けに、なんの用?」

「話を逸らしたね……相変わらず女心ってモノが理解できてないなぁ、だんなさまは」

「! それで思い出したぞ! キミ、何さあれ!」

「? あれって?」

「キミが短冊に書いた願い事だよ! なんだよ、『だんなさまが女心というモノを理解してくれますように』って!」

「ああ、あれ。そのまんまの意味だけど」

「誰が女心を理解できてないって!?」

「だんなさまだけど」

「ボクのどこが女心を理解できてないって言うのさ!?」

「こんな夜更けに寝間着姿でわざわざ自室を訪ねてきた女の子――それもこれまで何度もハッキリ好意を伝えてくれている女の子に、『なんの用だ』なんてわかりきったことを訊いちゃうトコとかだけど」


 う。


「ま、まさか本気でボクとえちちなことをしに来たの? これまでは同衾どうきんさえ出来れば割と満足っぽかったのに?」

「本気でわたしが同衾だけで満足してると思ってたの? 見た目は子供でも、中身はそれなりに大人なつもりだよ、わたし。――言わなかったっけ? だんなさまにも何度か見せたことがある十代後半の少女の姿。あっちが元々の形態すがた、本来のわたしなんだよ?」


 っ。


「で、でも、夜はルーナもここにいる確率が高いし!」

「大丈夫だよ☆」


 カグヤはそう言ってニッコリ微笑むと、寝台ボンクの端に腰掛け、そのままゴロンと寝転がりながら、


「――今のあのコは十歳の子供だからね。あまり夜更かし出来ないあのコが寝落ちした頃合いを見計らって、えちちすればいいんだよ☆ あ、安心してね。えちちなことをするときは、ちゃんと十代後半あっち形態すがたになってあげるから。なんならだんなさまの好みに合わせてもうちょっとだけ年上の形態すがたになることも出来るし」


 微妙に日本語がおかしくないか? こういう場合『今のあのコは十歳の子供だからね』じゃなくて『あのコは今はまだ十歳の子供だからね』って言うべきだろ。


 まあ、ひょっとしたらカグヤの日本語、言い回しが変なんじゃなくて、『バビロンの実』を食べて得た自動翻訳のチカラも決して完璧じゃないってだけの話なのかもしれないけれど。


「い、いや、流石に十歳の女の子が寝ている横でえちちなことをするワケにはっ」

「わたしだって流石にあのコの隣でえちちしようなんて言わないよ。あのコが寝落ちしたら二人で医務室に移動すればいいんだよ☆ あそこは普段無人だし、寝台ボンクもあるしね」


 流石造物主(カミ)サマ。悪知恵が働くなぁ。


「で、でもでもっ、そもそもの話として、まだ心の準備が出来てないというか、そういうのはボクにはまだ早いっていうかっ(汗)」

「もぉ~。ホント子供だなぁ、だんなさまは。普通、十六歳の男の子ともなれば、もっとガツガツしてるものだろうに」


 いや。


「もしもの場合のこととか考えずに無責任に女の子に手を出すほうが子供だと思う」

「急に『スン……』となるのヤメて。――もしもの場合って?」

「だからぁ……ほら……えちちした結果、子供が出来ちゃった場合とか……」

「子供かぁ。最低でも二人は欲しいよね☆」


 むしろ作る気満々だったわ、このコ。


「既成事実さえ作ってしまえば、責任感が強いだんなさまはずっと傍にいてくれるだろうしね☆ ――逃がさないよ、だんなさま♥」

「女の子って怖い!」


 てか、


「――逃げるも何も、ボクとキミは『魂魄タマシイの婚姻』を結んでいるんだから、逃げようが無くない?」

「無いね」


 無いんだ……。いやまあ、予想どおりの回答だけど……。


「あれは婚姻という名の『主従の契約』……病めるときも健やかなるときもそして月と地球の危機のときも未来永劫わたしはだんなさまに寄り添い、従い、共に在り続けるという誓いだから。たとえこの先だんなさまがわたしにどれだけ惨い仕打ちをしたとしても、わたしは一方的にだんなさまに尽くし続けるだけだよ」


 重ぉい。


「マリナはもちろん、クーとスーだってそこは覚悟の上で結んでるはず」


 クーとスー? ……ああ、クーリエとスーザンのことか。


「そこまでの価値があるというのかい……オリジナルの地球を出自とする魂魄タマシイには」

「そうじゃないよ」

「そうじゃない?」

「わたしがあなたと『魂魄タマシイの婚姻』を結んだのはね、あなたがオリジナルの地球を出自とする魂魄タマシイの持ち主だからじゃない。――あなたがあなただからだよ」

「―――――――」

「ここまで言わないと、わたしたちの覚悟がどれほどのモノかわからないなんて。ホント子供だよね、だんなさまは」


 ……確かに……。


 ボクはこの期に及んでまだどこか軽く見ていた気がする。


 彼女たち、永遠の存在者の想い。覚悟。決断。その重さを。


「早く大人になってね、だんなさま☆」

「……善処するよ」

「あ。そうだ。いいこと思いついた」


 そう言ってカグヤは寝台ボンクの上で身を起こすと、ボクを手招きし、


「? 何?」

「えいっ☆」


 不用意に近付いたこちらの手を引っ張って、寝台ボンクへと引きずり込んだ。


 一緒に倒れ込むように。


 ボクに自分を押し倒させる形で。


「うわっ! な、何するのさ!? ……って、なんで寝間着を脱ごうとしてるの!?」

「えへへ☆ せっかくだから、この場でわたしがだんなさまを大人にしてあげようかなって」

「それ、『大人になる』の意味合いが違くない!?」

「さあ、一緒に大人への階段を昇ろう、だんなさま♥」

「ヤメて! これ以上は通報されちゃう!」

「誰がどこに通報するの?」


 ……さあ?


「――なーんてね☆ 冗談だよ」

「うぶっ!? ちょっ、なんで冗談と言いつつボクの頭を抱き締めるのさ!? く、苦しいって!」


 カグヤがボクの頭を両のかいないだくようにぎゅっと抱き締めてきたせいで、顔面がカグヤのちっ〇いに押し付けられて、息が出来ない……!


 あああああ柔っこくて温かい! すごく良い匂いがするぅ!

 オマケにカグヤの寝間着は生地が薄いから、見えちゃいけないモノが透けて見えちゃってるし!


「流石にえちちなことまではしないけど」カグヤはニッコリ微笑んで、「良い機会だし、まだまだ子供なのにいつも頑張ってるだんなさまを、わたしが褒めてあげよかなって☆ というワケで……ぎゅーっ♪」

「むぎゅぅぅぅぅぅ!」


 い、いけない、羞恥と興奮と息苦しさで頭がボーッとしてきた……!


「……ホントは自分が一番誰かに助けてほしいはずなのに、いつも誰かを救うために奔走してるわたしの愛しのだんなさま……。偉い偉い♥」

「もがもがもが!」

「……でも、たまには自分の『苦しい』や『辛い』も何かのカタチで吐き出しておかないと、いつかし潰されちゃうかもしれないからね。今夜はわたしにおもいっきり吐き出していい……子供に戻った気分でいーっぱい甘えてくれていいよ☆ ほぉら、よしよーし♥」


 あああああああダメだ頭が回らないぃぃぃぃぃ回らなすぎてカグヤにバブみを感じてきちゃったぁ!


 しっかりしろボク! いくらなんでも見た目小学生なカグヤ相手に(それも寝床で)オギャるワケには……!


「さあ、遠慮せずに。わたしに沢山甘えてね、だんなさま――今夜一晩、わたしがだんなさまのお姉ちゃん……ううん、ママになってあげる☆」


 だ……ダメだ! ただでさえカグヤはボクが今一番異性として意識しちゃってる相手なのに、こんなことされちゃったら――


「それとも、だんなさまがもっと大人になれるように応援してあげたほうがいい? 頑張れ♥頑張れ♥だんなさま♥ 早く大人になぁれ☆」

「も……もがもが……!(も……もうダメ……!)」


 ボクが理性を手放しかけた、その瞬間だった。



「――イサリさまっ! どうして追ってきてくださらないのですか?」



 さっき勢いよく部屋から飛び出していったルーナが、今度は飛び込むように部屋へ駆け込んできた。


 おそらくはボクが追いかけてくる気配が無いことに途中で気付いて、慌てて引き返してきたのだろう。


「「っ!?」」


 ボクと、寝台ボンクの上でボクと抱き合っていた(ように見えるだろう)カグヤは思わず息を呑み、慌てて身を起こして離れるも、時すでに遅しだった。


「イサリさま……? カグヤちゃんと寝台ボンクで何をして……?」


 持っていた短冊を床に落とし、口元を押さえ、青ざめた顔でボクとカグヤを順繰じゅんぐりに見、問い掛けてくるルーナ。


「ち……違うんだ、ルーナ! やましいことは何もしてない! 信じて!」


 てかもう何度目だよ、この手のやりとり。


「説得力がありません! だって、あんなにくっついてたじゃないですか! それも寝床で!」

「まったくもってそのとおりだけど、それをキミが言うかな!?」


 毎晩勝手にボクの寝所に潜り込んでボクを抱き枕にして寝てるコにだけは言われたくないぞ!


「ヒドイです、イサリさま! 短冊に『ちゃんとルーナのところに戻ってこれますように』って書いたその日のうちに他の女性とねやを共にするなんて……!」

「いやあれは書いたというより書かされたと言ったほうが……ていうかまだ閨を共にしてはいないから!」

「ぐすっ……カグヤちゃんもズルイですよぉ。イサリさまと出逢ったのは、わたくしのほうが早かったのにぃ……。イサリさまに大人にしてもらうのも、わたくしが先なんですからねっ」

「もぉ~。子供みたいな屁理屈言ってないで、泣き止んでよルーナ。……そりゃあ今のあなたはまだ十歳の子供だけどさ」


 子供みたいな屁理屈……かなぁ?(汗)

 今このコ、さらっと爆弾発言した気がするんだけど。


「うわぁぁぁぁぁぁぁん! カグヤちゃんのズルっコぉ! 泥棒猫さん!」

「流石に聞き捨てならないよ、それは! 確かにだんなさまを見つけたのはあなたのほうが早かったけど、想いの強さならわたしだって負けてないんだからね!」

「ちょっ、ルーナ! それにカグヤも! もう夜も更けてるんだから、そんなに大声で騒いじゃ――」

「イサリさまの伴侶に一番相応しいのはわたくしだもん! イサリさまからはーなーれーてー!(ポカポカ)」

「もん、て。微妙に幼児退行しながら言っても説得力が皆無なんだけど。――いたっ! やったなコイツぅ!(ポカポカ)」

「こらーっ! 夜更けにヒトの部屋でキャットファイトを始めるなー!」



「うるさああああああああああいっ!」



「「「う!?」」」


 バン、と出入口の扉が開くと同時に飛んできた叱責に、ボクはもちろん寝台ボンクの上で取っ組み合っていたロリ二人もピタ……ッと動きを止める。


 恐る恐る扉のほうを見ると、そこには怒りで顔を真っ赤にし、目尻を吊り上げながら入室してくるリオンさんの姿があった。


 その背後うしろには他の女性陣の姿もある。ツバキとアリシアはリオンさん同様目尻を吊り上げカンカンな様子だし、クロエとイリヤはジト目をこちらへ向けているし、シャロンとダリアは寝起きなのか寝ぼけまなこを擦ったり欠伸あくびを噛み殺したりしながら立っていた(寝てていいのに)。


 ちなみにそのまた背後うしろでは、マリナとスズランさん……もといナズナさんが、「あはは……」と苦笑いを浮かべていた(見てないで助けてほしい)。


「あなたたちねぇ!」リオンさんは吊り上がった目でボクとロリ二人を順繰りに睨み、「今、何時だと思ってるのっ!? ドッタンバッタンと何をやってるかしらっ!? うるさくて寝れないじゃない! 夜更かしはお肌の大敵なのよっ!? これ、他のみんなと違って三十代の私には結構切実な問題なんだからっ!」

「「「ご、ごめんなさい……」」」


 ボクとカグヤ、ルーナは思わず並んで土下座し謝る。


「特に旦那様! あなたはカグヤちゃんやルーナちゃんと違って子供じゃないんだから、夜は静かにしないとダメだってわかるでしょ!?」

「はい……」

「ちょっとそこに直りなさい! あなたの本当のお母さんに代わって私がお説教してあげる!」

「もう土下座してるのにこれ以上どう直れと」

「口ごたえしないっ!」

「ハイすみません」

「いい!? あなたはカグヤちゃんやルーナちゃんよりお兄さんなんだから、本来なら二人がイケナイことをしていたら注意しないとダメな立場で――」

「なんでボクが一番怒られてるんだ……」

「聞いてるのっ!?」

「ハイごめんなさいっ!」



 ――そんな感じで。

 リオンさんのお説教は、そこから小一時間ほど続いたのだった。



 ……この年齢としになって、こんな子供みたいな叱られかたをするとは思わなかったよ……。



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