♯9 ツンツンしたお姫様と、みんなを護るために戦った(後編)
第9話。バトルの後編です。
※前半はイサリ、後半はツバキ視点のお話です。
子供のころ、沢山のヒーローに憧れた。
漫画。アニメ。小説。映画。いろいろな媒体でいろいろなヒーローに出逢ったけれど、ボクが中でも強く惹かれたのは特撮番組のヒーローたちだった。
銀色の巨人へと変身し、光線などを駆使して怪獣や宇宙人と戦うヒーローとか。
肉体を改造された悲哀を仮面で隠し、バイクに乗って怪人と戦うヒーローとか。
様々な色のスーツを着た仲間たちと、巨大なロボットを操り戦うヒーローとか。
まあ、そういったヒーローたちだ。
だけど、ボクが今回イメージしたのは、そのいずれでも無かった。
正直に言えばボク自身、『それ』を、いつ、どこで目にしたヒーローだったのか、もう憶えていない。最近だったような気もするし、ずっと昔だったような気もする。どころか、『それ』がなんの媒体で活躍したヒーローだったのかすら憶えていない(あれも特撮番組のヒーローだったんじゃないかなーとは思うのだけれど、正直自信が無い)。我ながら「そんなことある?」って感じだが、事実なのだから仕方ない。なんなら今朝くらいまでは憶えていたような気がしなくもないのだけれど、今日はとにかくいろいろありすぎたせいで、綺麗サッパリ忘れてしまった。
あれだ。起床直後のぼんやりした頭がかろうじて憶えていたはずの夢を、しばらくしてから思い返そうとしたら、サッパリ思い出せないあの感じ。感覚的にはあれに近い。
白状すると、カグヤにあんなに「イメージが大事だ」と言われたのに、ぶっちゃけ『それ』の外見すら、あやふやにしか思い浮かべられなかったくらいだ。
もちろん『それ』の名前だって思い出せない。
でも、あの『深きものども』とかいう名前らしい半魚人と戦うための姿を想起しろと言われたとき、ボクが真っ先に思い浮かべたのは『それ』の姿だった。
あの理外の存在――『良くない存在』と戦うのなら、『それ』の姿が一番相応しいと思ったのだ。
理由はわからない。
ボクの中の何かが、「そうしろ」と叫んだのか。
ボクが忘れているだけで、何か重要な意味があるのか。
あるいは、理由なんて実は何も無いのかもしれないけれど。
とにかく――ボクは自然と、『それ』の姿をぼんやり思い浮かべていた。
頭上に掲げた蒼色の果実を握り潰し、低く、唸るように咆えながら。
「―― 『月火憑神』!」
頼むぞカグヤ本当に大丈夫なんだろうな万が一コレで何も起こらなかったらボクただの痛い奴だぞ――頭の片隅でチラッとそんなことを考えてしまった矢先、変化は生じた。
ボクの手で握り潰された果実が、無数の蒼い光の粒と化して消滅し。
次いで、撒き散らされた果汁、陽光を反射してキラキラ輝いていた無数の飛沫が――発火する。
ボッ ボッ ボッ ボボッ ボボボボボッ――
ボクの全身に振り撒かれるはずだった飛沫が、蒼い火の粉と化して降り注ぐ。
それはボクの肉体に着火すると、たちまち轟! と炎上し、渦巻く太い焔の柱となって全身を包み込んだ。
白鯨の背に聳え立つ、蒼い焔の柱。
正直、吃驚しすぎて悲鳴を上げるどころか反応することも出来なかった。
もうちょっと驚きが少なかったら、ボクはたぶん「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ焼け死ぬぅぅぅぅぅぅ!?」と悲鳴を上げてその場で転げ回っていたかもしれない。
臆病者で良かった。逆に。お陰でみっともない醜態を晒さずに済んだ。
そして数秒後、焔の柱はまるで幻だったかのように一瞬で消失し――
「これは……!」
気付けばボクは――『変身』を果たしていた。
「これが……ボク……?」
両腕を見下ろし、魔法を掛けられたシンデレラみたいなセリフを吐いてしまう(男なのに)。
端々に施された黄金色の金属彫刻と所々に浮かび上がる白鯨を模った純白の光芒が神々しい、まるで幻想文学の世界から飛び出したかのような美しい留紺の――
全身防護服。
「……全身防護服?」
あ……あれ?
ボクが漠然とイメージしたのは、なんていうか、こう……ロールプレイングゲームの勇者とかが装備してる感じの西洋風の甲冑だったのだけれど……。
なんで全身防護服?
まさか……失敗した?
やっぱあんな漠然としたイメージじゃダメだったのか?
変に捻らず、ハッキリと姿を記憶している子供のころに憧れたヒーローとかにしておくべきだったか?
一応、色味や雰囲気といった全体的な印象は、イメージしたモノと似ていないこともないのだけれど……。
「うーん……?」
全身をジロジロと眺め回す。やはり何度見ても、ボクが身に纏っていたのは甲冑ではなく全身を覆うジャケットだった。
山部が低い代わりにつばが幅広いテンガロンハット風の帽子に、長手袋、襟の長いコート、スラックス、ブーツ。全身隙間なく覆うそれらすべてがほとんど重さを感じない不思議な金属で出来ていて、目が醒めるような美しい蒼色をしており、白鯨を模った光芒が表面を泳いでいる。
そしてあちらこちらで熄のような蒼白い残り火が今この瞬間もチラチラと燃え続けていて、なんというか……とてもミステリアスというか……ぶっちゃけ、いかにも亡霊、って雰囲気を醸していた。
何も知らないヒトが夜半に今のボクを見たら間違いなく腰を抜かすと思う……。
「一番近いのはカウボーイの服装……かな? にしては、あちこちの意匠がファンタジーな世界のそれっぽいけれど」
あと、視界がなんかおかしい。肉眼で見ている感じがしない。どちらかと言えば眼鏡越しの景色を見ている感じだ。
……と思ったら、今ボクが目にしている光景は本当に肉眼で捉えたモノじゃなかった。すっごいリアルだけれど、これ、すぐ目の前にあるモニター越しの景色だわ。この全身防護服、つばが幅広い帽子とコートの長い襟の隙間が蒼色の水晶みたいなモノで塞がっていて、その水晶が外の景色を捉えるカメラとそれを映すモニターを兼ねているんだ。そのため口元も塞がっているワケだけれど、息苦しいということは無い。不思議。
「この全身防護服、誇張や比喩じゃなく、正真正銘、一分の隙も無く全身を覆っているのか!」
なんだろうね……意地でも装着者を護ろう、傷のひとつも負わせてなるものかという執念じみたモノを感じる。その意地、執念が誰のモノなのかはわからないけれど……。
「まあいいや、これで」
イメージしたモノとはちょっと違うけれど、『変身』自体は成功したということにしておこう。
どのみち、どうしようもないし。
「――すごい……」
そのときボクの耳に、ルーナの震える声、独白が届いた。
「昔の船長さんみたい……」
え? と思い、改めて全身を見回す。
船長さんみたい……かな?
ああ、言われてみれば大航海時代の提督とか艦長とか、あの辺りの格好に見えなくもない……か?
いや、どうだろ? ルーナには申し訳ないけれど、その表現は微妙な気が……。
カウボーイよりは、まだそっちのほうが近い気がしなくもないけれど……。やっぱデザインが致命的にファンタスティックなんだって、この全身防護服。
たとえ船長に見えたとしても、だよ?
全身で燻っているこの熄のような蒼白い残り火のせいで、幽霊船の船長にしか見えないと思うんだ。
ボクが憧れているのは、のんびりまったりな『なんも船長』なのに。
なんていうか、これじゃあ――『幽霊船長』だよ。
……あと、その「すごい」は「格好良い」っていう意味でいいんだよね?
「そんなコスプレみたいな格好を平気で出来るなんてすごい神経」って意味じゃないよね?(被害妄想)
「オイィィィィィィィィィィッ! ていうか、ボーッとしとるでない! 齧られとる! お主、さっきから思いっきり齧られとるぞ!」
ツバキの忠告に、え? と再度思い、首だけで振り返る。
……例の半魚人がボクの両肩を押さえ、テンガロンハット風の帽子に覆われたボクの頭頂部をおもいっきりガジガジしていた。
Oh……。
一切の痛痒を感じなかったものだから、逆に気付けなかったよ……。
すごいな、この全身防護服。トンデモない防御力だ。
あ、そっか。さっきから視界の隅で点滅していた『CAUTION!』の光文字はこのことを教えてくれていたんだね。
……呑気過ぎない? ボク。
「よっと」
長手袋で覆われた右の拳を振り上げ、半魚人の顎をアッパーの要領で撃ち抜く。
たったそれだけで半魚人はひっくり返り――そして、ボクの拳伝いに燃え移った熄のような蒼白い残り火が轟! と燃え上がって半魚人の全身を呑み込んだ。
そしてそのまま塵ひとつ残さず灼き尽くす。
……何? 今の。
ボク、普通に撲っただけなんだけど……。
「なっ……」
「イサリさま、すごい!」
一部始終を見ていたらしいツバキが絶句し、その横でルーナがぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現する。
「――ふふ……ふふふ……」
そしてカグヤは――微笑っていた。
喜悦で震えそうになる小さな身体を、その両の腕で抱き擦りながら。
頬を紅潮させて、どこか恍惚としているようにも見える、年齢に似つかわしくない表情で。
「嗚呼……やっぱりあなただ……あなたがわたしの『だんなさま』なんだね……」
………………。
うん。なんか怖いから、見なかったことにしよう……。
この全身防護服を纏っていていても身の危険を感じる。
命の危険じゃなく、身の危険。貞操の危機的なヤツだ。
あれ、あの年齢の女の子が浮かべていい表情じゃないと思うんだ……。
ギョィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!
ボクの思考を、それまで男衆と対峙していた半魚人どもの咆哮が引き戻す。
残る四体のうち三体が、男衆をその爪で弾き飛ばし、一斉にボクのほうへと向かってきた。
ボクは迫り来る三体の異形を冷静に見遣りながら、ポツリと呟く。
「へぇ……。仲間の死に対して、何かしら感じられる程度の知能はあるんだ」
それが仲間を失った悲しみなのか、仲間を斃したボクに対する憤怒や恐怖なのか、または『あり得ない事態』への混乱なのか――そこまではわからないけれど。
「先に襲ってきたのはそっちだろ? どんな結果も受け入れなきゃ。まさか殺すつもりはあったのに殺される覚悟は無かったのか?」
最初の一体の攻撃、爪を、左腕でガッチリと受け止める。流石に生身だったら無理だったろうけれど、この全身防護服を纏っている状態ならなんの問題も無いという確信があった。
現に、爪を受け止めた場所は傷ひとつ付いていない。一瞬硬直した相手の喉元を、手刀で貫く。
間を置かず、二体目が飛び掛かるようにこちらの頭頂部、テンガロンハット風の帽子に齧り付いてきた。……おまえ、さっきのボクと仲間の戦いを見てなかったの?
一所懸命ガジガジしている相手の鳩尾に、容赦なく正拳突きを叩き込む。
最後。三体目……と思ったら、相手はこちらに背を向けて海のほうへと走っていた。逃げるつもりらしい。なるほど……この中じゃあこいつが一番賢かったようだ。見逃してやりたいところだけれど、でもダメだ。ここで逃がしたらまた誰かが犠牲になる。こいつらは一匹たりとも生かしてはおけない。
幸い相手は『走る』という行為は苦手だったようで、すぐに追いつくことが出来た。背後から跳び蹴りを見舞う。転倒した相手の喉を踏み砕く。
斃した三体すべてが、やはりボクから燃え移った熄のような蒼白い残り火の爆発的燃焼に包まれて炎上――塵ひとつ残さず消滅する。
――ふう……。さて、残るは――
「きゃああああああっ!」
一息ついたその直後、ルーナの悲鳴が聞こえた。慌てて振り返る。
見れば、唯一ボクに向かってこなかった最後の一体が、対峙していた男を爪で弾き飛ばし、ルーナとカグヤを庇うように立つツバキへ襲い掛かろうとするところだった。
マズい。間に合うか!?
ボクが舌打ちして駆けつけようとしたその瞬間――
ぶしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!
足元の白鯨がいきなり潮を吹いた。
「えっ。おまえ生きてたの!?」
ボクは走りながら驚いたが、ツバキの棍を弾き飛ばし「きゃあ!」と可愛らしい悲鳴を上げて尻餅をつく彼女に爪を振り下ろそうとしていた半魚人もまた吃驚したらしく、動きを止めて硬直していた。
「ナイスだ鯨!」
お陰で間に合った。
気を取り直してツバキを切り裂こうとする半魚人の腕を、途中で掴んで止める。
振り返った半魚人に告げる。
「悪いけど、お姫様には指一本触れさせないぜ」
「あっ――」
ギョィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!
涙目のツバキからボクへと標的を変えて襲い掛かってくる半魚人の攻撃を、掌でパンと弾く。そのまま半魚人の右腕を掴み、捩じり上げ、脇腹に肘鉄を叩き込んで、怯んだ相手を一本背負いの要領でぶん投げる。
すべて先程と全く同じ流れ。
最後に、仰向けになった半魚人の眉間にトドメの一撃を叩き込もうとして。
「――あ。思い出した」
叔父さんから教わった胡散臭い格闘術。その流派の名前。
そしてこの技の名前も。
すとん、と、まるで答えが降ってきたみたいに。
このタイミングで思い出しちゃった……。
……思い出しちゃったからには仕方ない。
「神威体現闘法<漁火の拳>――『星火燎原』」
咆える、と言うより呟いて。
ボクは、拳を振り下ろした。
☽
「――勝った……あの化け物どもに……?」
『深きものども』、その最後の一体が、先の四体のときよりも遥かに強力な蒼白い焔に包まれて消滅していく様を茫然と眺めていた妾の口から、無意識の呟きが零れ落ちる。
「妾たちは……助かった……生き残れたのか……?」
もう絶対に助からないと思ったのに……。相手は不死身と恐れられた、あの『深きものども』じゃったのに……。
以前襲われたときは、相手が一体だけだったにもかかわらず、逃げるので精一杯じゃったというのに……!
これまで『深きものども』に勝った人間など、誰一人存在せんかったのに!
なのに――妾たちは勝てたのか! あの化け物どもに! とうとう……!
「……いや、違うの」
勝ったのは――あの化け物どもを斃したのは、妾たちではない。
そう、妾や、妾の連れでは。
斃したのは、目の前の下郎じゃ。
それも実質一人で! 五体すべてを!
……下郎。
イサリとかいう名前らしい、カグヤがずっと捜していた『だんなさま』。
カグヤが言うところの、『魂魄の伴侶』……。
「おっ?」
物思いに耽る妾の目の前で、下郎――いや、イサリが、何かに気付いて両腕を見下ろす。
それを見て、
な、なんじゃ!? どうしたんじゃ!? まさか怪我でもしたのか!?
と、妾が(自分でも吃驚するくらい)焦っていると、
ボボッ……ボッ……ボ………………
松明を振り回して強引に火を消したときのような音、白煙を上げて、それまでイサリの全身を包んでいたけったいな装束がいきなり消失しおった。
「これは……。『変身』していられる時間をオーバーしたってこと? それとも敵がいなくなったからオートで解除されただけ? どっちなんだろ……?」
――妾にはお主が何を言ってるのかサッパリわからんぞ。説明しろ、この下郎!
イサリを見上げ、そう言おうとしたのじゃが、……何故か言葉が出て来んかった。
代わりに、
――『でも、お姉さんが離れててくれれば、少なくとも護ることは出来ると思うから。カグヤやルーナと一緒にね』
――『ゴチャゴチャ言い訳を並べちゃったけれどさ。白状すると、ぶっちゃけ女性、それもお姉さんみたいな見目麗しい美人さんに戦わせて、男の自分が安全圏にいるってのは抵抗があるんだよ。ボクにも一応、矜持ってモノがあるんだ』
――『悪いけど、お姫様には指一本触れさせないぜ』
イサリの言葉、顔が、次々と甦る。
「………………っ!」
どうしても声が出ない。
動悸が激しい。
呼吸が乱れる。
顔が――熱い。
……なんじゃこれ……。
妾……どうしてしまったんじゃ?
「お姉さん……? 大丈夫? 何か様子がおかしいけれど……もしかして、棍を弾かれたときに怪我でもしちゃった? 立てる?」
顔を真っ赤にし鯉のように口をパクパクさせるだけの妾は、傍目には余程おかしかったと見える。イサリはそう言って、妾の顔を心配そうに覗き込んできおった……って、
「あっ……」
顔……近……、
「っ」
なんじゃコヤツの髪は妾たちヤポネシアの民と同じ黒髪なのはまあいいが男にしては艶々しすぎじゃろ女かお主は黒瞳も女の子みたいにパッチリしとるしそんなだから遠目には女に見えてしまうんじゃろうが声も男にしてはちょっと高めだしちゅーか顔立ちそのものが童顔で女の子みたいだしまったく紛らわしいにも程があるまあでも瞳のほうは男らしい鋭さもしっかりあって強い意志の光を宿しておるように見えんこともないなそれに顔立ちも確かに屈強や精悍、強面という言葉から程遠いがだからこそ戦っている最中の凛々しさが余計際立つというか格好良…………あれ? 妾、さっきから何を考えとるんじゃろ?
「お姉さん? もしもーし? ホント大丈夫? ……あ、わかった。足を挫いちゃったんでしょ? もう、変な意地張ってないで正直に言いなよ」
え?
……って、ちょっ!? コヤツ、断りも無しに妾をお姫抱っこしおったぞ!?
くっ……こんな女々しい男――しかも三歳か四歳は確実に年下だろう男に抱っこされるなんて! なんたる屈辱じゃ!
――ええいっ、離せこの下郎っ! 妾を誰じゃと思っとる!?
……いや、だから、なんでさっきから声にして言えんのじゃ!?
あああああ頬が熱いっ! 心臓がバクバク言うとる! 汗が! 変な汗が出てきおった! なんじゃこれ!? もしや恐怖がぶり返してきおったのか!? いや、『もしや』って時点で違うじゃろ! だ、ダメじゃ! イサリと目を合わせられん! 妾、ホントどうしてしまったんじゃ!?
「……ん?」
え? な、なんじゃ? イサリの奴、なんで怪訝そうな顔をしとるんじゃ? ってオイ、なんで妾の股を見る!? この助平――ん? 違うな? コヤツ、正確には妾の股でなく、妾の太腿の付け根辺りを支えている自分の腕を見とるぞ? え、なんでじゃ?
いや、だからなんじゃよ、その「あー……(納得)」って顔!?
何に納得したんじゃ!?
なんで気まずそうに妾から目を逸らす!?
「……えっと。気にしないほうがいいよ、お姉さん。あの状況だもん、仕方ないさ。化け物に殺されるトコだったんだし……生理現象なんだから不可抗力だって! ほら、お姉さんだってか弱い女の子なんだしさ。汚れちゃったボクの腕は海で洗えばいいんだし」
か、か弱い女の子……? 妾が……? そんなこと初めて言われ――
………………いや、待って。待ってほしいのじゃ。なんか、すっごくイヤな予感がする。
生理現象なんだから不可抗力……お姫様抱っこしてくれたイサリの腕が汚れちゃった……?
………………あ。
妾、気付いちゃった。
いっそ気付かないほうがよかったのかもしれんが……それでも気付いてしもうた。
…………ま、まさか…………、
い、いや……この年齢でそれは流石に……、
あ、でも、言われてみれば、股のところが冷たくて……気持ち悪いような……?
「えっとぉ……。その……じゃな。まさか……まさかとは思うんじゃが……妾、」
「大丈夫。お姉さんがお漏らししちゃったことは二人だけの秘密だよ☆」
「っ!」
…………妾…………もう…………お嫁に行けない…………。
あんな調子の良いことを言っておいて、ちゃんと護ってくれなかったイサリのせいなのじゃ……。
こ……こうなったら、カグヤには悪いが、責任を取ってもらうぞイサリ……!
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