♯96 続・黒いアイツと、商魂逞しい褐色娘に助けられた
お待たせしましたの第96話です。次話より(やっと)『武神祭』が始まります。
この蒼き月の海に流れ着いたあの日から今日まで、ボクも様々な経験をし、だいぶ宇宙の神秘やこの世の不条理といったモノに慣れたつもりでいたけれど、案外そうでもなかったようだ。
自分で思っていたほど理外の存在、超常現象なんかへの耐性が出来ていたワケではなかったらしい。
『なーにマヌケな顔をしてるカァ、なのだ! まさか貴様、本気でアタシをただのカラスだと思っていたのカァ!? どんだけ呑気さんなのだ!? そんなんでアタシのダリアを護れるとでも思ってるのカァ! このアンポンタン! ロリコン!』
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ! 化けガラス!」
ボクは寝椅子の上でガクガクブルブル震えながら、翼をバッサバッサと羽搏かせて『怒っているぞ!』とアピールしているカラス――ダークノワールブラックシュバルツを見下ろす。
『誰が化けガラスカァ! 不敬な!』
「だってボクと会話が成立している時点でどう考えても普通のカラスじゃないだろ、おまえ!」
そもそも今、自分で『本気でアタシをただのカラスだと思っていたのか』って言ったじゃん!
『ハァ。ディードレとマーシー、そしてスーザンとクーリエに認められた男がこんな臆病者野郎だなんて信じられないのだ! その上ロッカにも気に入られてるみたいだし』
「鳥類に臆病者野郎呼ばわりされる屈辱……っ」
って、ん……?
『――確かにこの第52平行宇宙にはオリジナルの地球を出自とする魂魄が他に存在しない以上、選択の余地は無いのカァもしれんが。本当に大丈夫カァ? この臆病者野郎が守人で』
「いや、そんなことよりもさ、」
ディードレとマーシーってのはカグヤとマリナのことだよな? で、ロッカってのは『ビュルグ』で会った銀の髪のオーバーロード……<神の財産目録保存者>の名前だったはずだ。オマケにスーザンにクーリエの名前まで……。
「なんでおまえが月と地球の造物主たちの名前を知ってるんだ? ダリアのことも知ってるようだし」
『……まーだわカァらないのカァ?』
鳥に呆れの眼差しで見られてしまった……。
『それとも貴様、ディードレのチカァラがどういうモノなのカァ、聞いてないのカァ?』
「ディードレのチカラ?」
えっと、確か……。
「ディードレ……カグヤのチカラ『地球系統』は、神霊や魂魄などの実体の無い存在に肉体を与えたり、生き物を成長させたり、傷付いた肉体を修復・再生させたりといったことが可能なチカラだって聞いてるけど」
『そのとおりなのだ! そのため、本来実体を持たない霊的な存在である我らも、ディードレのチカァラを借りれば、ヒトとして受肉・顕現することが出来る! 借りたチカァラが尽きるまで何度でもな』
「それは知ってるけど」
『そしてそのチカァラを応用すれば、ヒト以外の動物として受肉・顕現することも可能なのだ!』
…………………。
えーと……(汗)。
「なんか……この話の流れだと、キミの正体は『地球系統』を使ってカラスの姿になっているオーバーロードだとしか聞こえないんだけど……」
『だぁカァらぁ、そう言っているのだ!』
…………マジかよ。
「ゴメン。いったん整理させて」
このカラスの正体は、(その言を信じるなら)オーバーロードである。
で、コイツがボクの目の前に現れたのは『ビュルグ』からの帰路だ。
ボクが『ビュルグ』で出逢ったオーバーロードは二柱。<神の財産目録保存者>ロッカと<神の財産目録削除者>ハナビだけ。
そしてコイツのここまでの物言い、口調から、コイツがロッカであるとは考えにくく……。
そうなると、コイツの正体は……。
「ひょっとしておまえ、ハナビか!?」
『やっと気付いたカァ! この鈍チン!』
マジかよ……。
「おま……キミ、そんなキャラだったのか」
相手が造物主サマであるとわかった以上『おまえ』呼ばわりするのも気が引けたので、途中で『キミ』と言い直す。
「『ビュルグ』では喋ってるところを一度も見なかったから、こんなキャラだとは思わなかったぜ」
『こんなキャラで悪カァったなっ』
「いやホント、なんだってまたそんな姿に」
美しい黒髪をツインテールにした、金色の炯眼と唇から覗く鋭い八重歯が印象的な褐色の肌をした十二か十三くらいの少女の姿を思い出しながら訊ねると、
『知らないのカァ!? アタシたちオーバーロードは基本、月と地球の住人への干渉を禁じられている! つまり、貴様はともカァく貴様の仲間たちの前にヒトの姿で現れるのは本来あまり望ましいことではないのだ! だからこそアタシとロッカは、かつてアタシが管理する<神域>の入口だったあの島で、貴様の前カァら一度姿を消したのだ!』
……そういや『ビュルグ』は元々、第三<神域>スターマインの<遺跡>だったんだっけ。
「そういや、ロッカは? あのコは今どこにいるのさ? もしかしてあのコもキミみたいに姿を変えて付いてきてるの?」
『…………サー? アタシ、ナーンニモ、知リマセーン』
なんで急に似非外国人みたいになる……?
「まあ、いいや。――話を戻すけどさ、みんなの前にヒトの姿で現れるのが問題なら、さっさとボクの身に宿ればいいんじゃ」
『たわけ! なんで「魂魄の婚姻」を結んでもいない男の身に宿らねばならんのだ! アタシはまだ貴様を旦那様とは認めてないぞ!』
「……ひょっとしてこれ、またなんらかの試練に挑まなきゃいけないパターン?」
『当然なのだ! ……と、言いたいところだが、貴様はアタシが課すつもりだった試練を既にクリア済みなのだ』
「え? いつの間に」
『貴様は「死の植物」と戦い、これを斃しただろう?』
「……ああ、そういう」
『ダリアたちを護るため強大な敵に挑む貴様の後ろ姿は、その、なんだ、そこそこ格好良かったぞ(ゴニョゴニョ)』
ハナビはプイッと顔を背け、小声で何か言っていたが、よく聞こえなかった。
「で? なんで試練をクリアしたのに、ボクを主人と認めてくれないのさ」
『決まってる! 甘い言葉でアタシの可愛いダリアを誑カァしたカァらなのだ! ロリコンが旦那様なんてイヤなのだ!』
えー……。
「ボクがいつダリアを誑かしたっていうのさ。変な言いがかりはヤメてくれないか」
『しらばっくれるな、なのだ! ダリアに求婚したくせに!』
「求婚なんてしてねーよ!」
『キミはボクが必ず幸せにしてみせる、だカァら一緒に生きよう、みたいなことをダリアに言っていたではないカァ!』
どこで聞いてたんだコイツは……。
「それはあくまで、これからはお母さんの代わりにボクがキミを見守っているよ、だからボクのことはお兄ちゃんと思ってくれていいよ、っていう宣言だって!」
『……お兄ちゃん~?』
……その胡散臭いモノを見るような目をヤメろ。今はカラスのくせに。
「そ。ダリアだってボクのことはお兄ちゃんみたいな存在としか見てないはずさ」
『……相手が十一歳だからって油断しすぎじゃないカァ?』
? どゆこと?
「てか、キミのそのダリア贔屓はいったいなんなのさ……」
『ダリアは最近までアタシの「核持ち」だったのだぞ! 情が移って当然! 肩入れしたくなるのが普通だろう!』
「でもさ、事情が事情とはいえ、そういう一個人への肩入れ、贔屓って、造物主的に問題ないワケ? オーバーロードは基本、月と地球の住人への干渉を禁じられているんだよね?」
『陰で推してるだけだカァら問題ないのだ! 直接干渉はしてないのだ!』
「推して……」
なんだろう……。以前クーリエが『スーザンの推しはアリシアらしい』って言ってたし、今、造物主の間では推し活が流行ってたりするんだろうか……。
「まあいいけど……。――それで? 結局、キミはどうしたらボクを主人と認めてくれるのさ?」
今後のためにも、ハナビの助力を得られるのならばそれに越したことはない。
『そうだな。今カァらアタシが言うことを復唱し、約束できるというのなら、認めてやらないこともないのだ!』
「復唱……約束?」
『うむ! 行くぞ!』
「え、もう!?」
『「私はまだ幼いダリアに、いカァがわしいことは絶対しません」!』
「……『私はまだ幼いダリアに、いかがわしいことは絶対しません』」
あっちから寝床に潜り込んできて、知らぬ間に同衾しちゃってた場合は、不可抗力ってことでいいよね……?
『「ダリアにはあくまでお兄ちゃんとして接し、何カァあったら全力で守ります」!』
「……『ダリアにはあくまでお兄ちゃんとして接し、何かあったら全力で守ります』」
念押しされるまでもないのだが……。
『「ただし、ダリアが大人になっても自分のことを異性として慕っていた場合は、その想いごと彼女を受け止めます」!』
「『ただし、ダリアが大人になっても自分のことを異性として慕っていた場合は、その想いごと彼女を受け止めます』……って、え?」
ちょっと待て。それだとまるで……、
『あと――「ハナビ様と婚姻を結んだら、ハナビ様を一番目の正室にします」!』
ファッ!?
『「最低でも一日一回は精神世界のハナビ様に会いに来ます! そしてアタシだけに愛の言葉を囁き、接吻をします」!』
あ……あれ? 気のせいかな? なんか話が妙な方向へ……。
『「オーバーロードと子作りするときは、まずアタシと作ります」!』
…………………(汗)。
「あ、あのー。ハナビさん?」
『? どうしたのだ?』
「ひょっとして、なんですけど……。キミがボクに対してやたらツンツンしてるのって、ボクが自分以外の相手と既に『魂魄の婚姻』を結んでいたから……? ボクのこと、実はそこまで嫌ってなかったり……?」
ハナビって……俗にいうツンデレさん?
『っ!?』
カラスって赤面できるんだ。
『ばっ……バーカァバーカァ! 勘違いするな、なのだ! アタシは貴様のことなんカァ、これっぽちも好きなんカァじゃないのだ!』
再度バッサバッサと翼を羽搏かせてハナビが抗議したその瞬間、
「――ただいまです、お兄さん」
今さっき出掛けたばかりのスフレが帰宅した。
「帰りが遅いお兄さんを心配して捜し回っていた方々を大通りでお見かけしたので、お連れしましたよ」
見れば、彼女の後ろには、
「旦那様っ! 大丈夫!?」
「無事で何よりだ、船長殿」
「話はスフレお嬢さんから聞いたよ、イサリ船長。大変だったらしいね」
目に大粒の涙を湛えたリオンさんと、安堵の表情を浮かべたロウガさんとヨハネスさんの姿があった。
「すみません……ご心配おかけしました」
「心配したんだからっ」と子供みたいに胸に飛び込んでくるリオンさんを受け止め、謝って、次いで気になったことを訊ねる。
「リオンさん。シンラさんたちは?」
例の三姉妹――アイリン、メイリン、シャオリンと、その祖父であるシンラさんの姿が見当たらなかった。
「あのお爺さんとお孫さんたちなら、逃げる途中ではぐれてそのままよ!」
「そうですか……無事だといいけれど」
「もうっ、旦那様ってばっ。ヒトのことより今は自分のことを心配しなさいな! スフレちゃんから聞いたわよっ。すっごく高いトコから落ちたんでしょっ!?」
「だ、大丈夫ですよ。どこにも怪我はありませんし。このとおりピンピンしてますから」
「本当にっ?」
「本当ですって」
「……いいわ! 本当に怪我が無いか、私がチェックしてあげるっ。さあ、服を脱いで!」
「ちょっ、ヤメて、裾を捲らないで! ほ、本当ですって! 本当に大丈夫ですから! いやあぁぁぁぁぁぁぁえっちぃぃぃぃぃぃぃっ!」
と。そのとき。
『カァー!』
「あっ」
「見せつけるんじゃないっ」と言わんばかりに鳴いて、ハナビはそのまま開けっ放しになっていた玄関から外へと飛び出していく。
「あらら……。どっか行っちゃいましたね、あのコ」とスフレ。「こころなしか不機嫌そうに見えましたけど、騒がしいのがイヤだったんでしょうか」
「……そうかもね」
適当な相槌を打つボクに、スフレは隠し事の気配でも感じたのか、こちらを半眼でじ~っと見つめてきた。
「……念のため確認しておきますが、約束どおり二階にある私の寝室は覗いてませんよね? お兄さん」
「ホントどんだけ信用ないんだよボク」
ここまで警戒するって……。まさか本当に他人に見られたらヤバいモノがあるんじゃないだろうな、このコの寝室……。
だ、大丈夫だよね? 単に異性に寝所を見られるのが恥ずかしいってだけだよね?
実はスフレは連続殺人鬼で、二階の寝室には被害者たちの遺体の一部がコレクションされていて……とか、そういうホラーな理由だったりしないよね……?(汗)
「何か変な想像してませんか、お兄さん」
「思考を読むな」
☽
星々の代わりに0と1を模った緑の光が明滅する夜空と、そこに浮かぶ凍てついた白銀の地球。
それらを鏡のように映している黒い海面を漂う白鯨の背の上――だんなさまの精神世界で、わたしとマリナ、スーザンとクーリエは、瑠璃色の翅を持つ夥しい数の蝶が集まって出来た巨大なスクリーンを見守っていた。
今そこに映っているのは、だんなさまの見ている光景。視点だ。
「すっかり受肉・顕現するタイミングを逃しちゃったなぁ」
本当ならわたしとマリナは、<バグ>との戦闘が終了した直後――だんなさまが高空から地面へと墜落し気を失った時点で、受肉・顕現するつもりだった。
だが、間を置かずダークノワールブラックシュバルツ……もとい、ハナビに先導されたスフレが現れ、だんなさまを自宅に運んだため、機を逸し今に至る。
「スフレが外出している隙に受肉・顕現しちゃえばよかったかなぁ。リオンたちが来ちゃったから、またしばらく受肉・顕現できないじゃない」
「イサリさんと二人きりになったハナビさんがどういう行動に出るのか気になったのでここから出歯亀……もとい様子を窺っていたのが裏目に出ちゃいましたね」
わたしの言葉に双子の妹であるマリナが隣で苦笑しながら同意し、
「まあ、いいのではないか、ディードレ。もとい、カグヤ」
「そーそー。お陰で面白いモンが見れたしな。――あのハナビの赤面だぞ? まあ、カラスの姿だったけどよ」
背後からニヤニヤと面白がるような笑みを浮かべた<種を摘み取るもの>スーザンと<種を播くもの>クーリエが慰めの言葉を掛けてくる(以前言ったとおり、わたしは普段スーザンのことをスー、クーリエのことをクーと愛称で呼んでいるのだが、今回も愛称は使わずにおく)。
「……なんであなたたちはそんなに楽しそうなの」
わたしのチカラ『地球系統』で墜落時のダメージはとっくに癒してあるとはいえ、この二人はもう少しだんなさまの身を案じてあげるべきだと思う。
わたしなんて一刻も早く受肉・顕現しだんなさまの肉体に本当に傷が残っていないかチェックしたくて仕方なくて、さっきからずっとソワソワしてるのに……。
「過保護なんだよ、オメーは。イサリなら大丈夫だって。リオンがいるし、アイツは『月棲獣』や『死の植物』、そしてあのキロウスと戦って生き延びた男だぜ」
「我が姉の言うとおりだ。旦那様はハナビと軽快なトークが出来るくらいピンピンしているではないか」
軽快なトークねぇ……。
「どう見ても軽快なトークをしているってふうじゃなかったけれど」
蝶たちの翅で出来たスクリーンに映る映像は無音だから推測でしかないけれど、だんなさまとハナビがさっきまでしていたのは、まず間違いなく甲斐性なしな男と素直になれない女のなんの生産性も無い会話だと思う……。
わたしが知るハナビは、なかなか面倒くさい性格――だんなさまふうに言うならツンデレ気質ってヤツだし。
ハナビがだんなさまと未だ『魂魄の婚姻』を結んでおらず、そのくせカラスに姿を変えてここまで付いてきてるのだって、そういうことだと思うだし。
「まあ、いいけどね」
今はそれよりも気になることがあるし……。
「どうしたんですか、カグヤちゃん。難しい顔をして」
マリナは『自分の迂闊な言動が原因で歴史が変わってしまうようなことがないように』と、だいぶ前に自らの想い出――『最善の未来に辿り着けた歴史』での記憶に封印を施してあるからか、なんの危惧も抱いていないようだけど……。
「うん……」
わたしは腕組みをして唸り、答える。
記憶を封印する前のマリナからほんのちょっとだけ聞き出せた『最善の未来に辿り着けた歴史』の話を思い出しながら。
「――あなたたちも知ってのとおり、十一番めの試練のはずだった『月棲獣』撃破をだんなさまが既に成し遂げてスーザンも合流しちゃってる時点で、この歴史はわたしがマリナから聞いた『最善の未来に辿り着けた歴史』からは外れてしまっているワケなんだけども」
ついでに言うと、だんなさまがスーザンと深く繋がらないと『変身』できないバージョン<メテオストライカー>を使って『死の植物』を斃している時点で、『ビュルグ』での顛末もまた『最善の未来に辿り着けた歴史』とは違っているはずなのだけども。
「――わたしが記憶を封印する前のマリナから聞いた話では、さ。この『ヘルクレス』でだんなさまが仲間にする<魔女>は確か三人のはずなんだよね」
「「「?」」」
マリナたちがきょとんとした顔を向けてくる。
「それがどーしたんだよ?」
代表して訊いてきたのはクーリエだ。
「大方その三人が、<バグ>に追われていたあの三姉妹なんだろ。この蝶たちのスクリーンに映る映像は無音だから、アタイたちにはイサリとあの三姉妹が何を話してるのかわからなかったけどよ。あの三姉妹、真剣な表情でイサリに何かを告白してたじゃねーか。たぶんだけどあれ、『自分たちは<魔女>なんだ』って明かしてたんだと思うぞ」
「そうなんだろうけどさ……。だとしたら、『秩序管理教団』の船から自力で逃げて今もこの島のどこかに潜伏しているはずの<魔女>を、だんなさまは『最善の未来に辿り着けた歴史』でも仲間に出来なかった――救えなかったってことになるでしょ?」
「「「あっ」」」
「でも、わたし、マリナから『だんなさまにも救えなかった<魔女>がいた』なんて話は聞いてなくて……」
「つまり?」と、これはスーザンだ。
わたしは先程抱いた危惧を口にする。
「仮に。『最善の未来に辿り着けた歴史』では『秩序管理教団』の船から逃げ出した<魔女>なんてモノはそもそも存在しなかったのだとしたら。わたしたちが今歩んでいるこの歴史は、『最善の未来に辿り着けた歴史』からいよいよ完全に外れてしまったと判断していいのかもしれない。この先待つモノは、全く未知の展開なのかも」
「「「!」」」
だが――だとしたら。
「だとしたら、」マリナが青ざめ、震える声で呟く。「最悪の場合、わたくしたちは、まだ見ぬ『運命の少女たち』も救えない可能性があるかもしれない……?」
……そう。
あまり考えたくないことではあるが。
「リズやレネ、ユーノといったまだ見ぬ仲間の誰かが、とっくにどこかで命を落としている――そういった最悪の可能性も想定しておかなきゃダメかもね……」
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