ゆいこのトライアングルレッスンM【ゆいこ×たくみの両片思い】〜アラサーおさげの相合傘〜
『ゆいこのトライアングルレッスンM』に投稿したものです!
毎日レッスン!2日目!
当たり前だった。いつも隣にいることが。
塾の帰りに、二人が迎えに来てくれることが。
ずっと変わらないと思っていた。あなたを好きになるまでは……。
恋は、まるでコンパスだ。
中心の針に近づくほどに、わたしは綺麗な円を書けずにいる。ジタバタして強がったり、思ってないことを口にしたり、自分が嫌になる。
あなたと目が合うと、瞳に吸い込まれそうで直視できずに下を向く。
あなたが他の女の子と楽しそうにおしゃべりする度、不安になる。
「おい、ゆいこ、何お前ボーッとしてんだよ」
「たくみ!」
「あの小説、ペンネーム『アラサーおさげ』はやめた方がいいと思うぞ?」
「ちょっと! 何勝手に読んでるのよ!」
たくみが、わたしの書いた小説を勝手に読んだ!?
ダメ!あんな、たくみをモデルにした妄想恋愛小説なんて読んじゃ……!!
「ゆいこは、そのぉ……あんな感じの恋愛がしたいのか?」
「ええ!? いや、別にあれは違っ……!」
「小説に出てくる相合傘、たくみ、やってやればいいじゃん」
突然、ひろしが口を開く。
「バカ、な、なんで俺がそんなことやらなきゃいけねーんだよ! そういうのは、ひろしがやればいいじゃねーか!」
ひろしも読んだの!?
あの願望にまみれた、わたしの小説を……。
たくみは、面倒ごとはすぐひろしに押し付ける。
やっぱり、たくみは、わたしのことなんて、見てないんだよね……。
たくみにとってわたしは、一体どんな存在なのだろう。
やっぱり、妹みたいな存在なのだろうか。
知りたいけど、聞いて今の関係が壊れてしまうくらいなら、ずっと今のままでいい。
× × ×
雨が降ってきた。
「ゆいこが傘忘れるなんて、珍しいな」
「うるさい! そういう日だってあるわよ!」
「ふーん」
わたしは嘘をついた。
本当は、傘を持っている。
今日は午後から雨予報、そんなことは分かっていた。鞄の中には、折り畳み傘がある。
でも、今だけは……。
「ったく……」
たくみがわたしを傘に入れる。
何か話そうと思ったのに、言葉が見つからない。
相合傘に、雨音だけが響いた。
傘から落ちた雫が、たくみの左肩を濡らす。
そこに、たくみの優しさを感じた。
「もっと、こっち近づきなよ」
「はっ? ちょっ、ゆいこ!」
「たくみが濡れちゃう」
わたしはたくみの腕にくっついた。
「別に、お、俺は、ゆいこの小説再現してるわけじゃねーからな?」
「はいはい」
「でも、そのぉ……良いストーリーだったとは思うぞ?」
「へっ……?」
「恋は、まるでコンパス……なんだろ?」
「ちょっとぉ!」
「ゆいこ、俺、書くから。綺麗な円……」
「もう、バカっ……」
明日は、ゆいこ×ひろしの両片思い!
『勝負の遊園地、ラスト観覧車!編』をお届けしますっ!!