冬の過ごし方・前編
ここは私が生まれ育った国にあるバーク様のお屋敷。
そこにある大きな出窓で庭の景色を眺めながら猫の姿でお昼寝中。
冬の寒さは苦手だけど、晴れた日の陽射しは穏やかで気持ちいい。特にここの出窓は大きく、午後から日当たりもよくなるので、バーク様が忙しい時はここでお昼寝をすることも。
すると、使用人Aのどなたかがふかふかの猫ベッドを置いてくださり、極上のお昼寝空間に。
「むにゃぁ……」
(気持ちいいですぅ……)
ぽかぽか陽射し浴びてホカホカに温まった体。ただ、この国は冬になると昼間が短いため、もう太陽が地平線に。
「うにゃぅ……」
(そろそろ起きないと……)
うっかりこのまま寝ていると今度は窓の外の冷気に襲われ、せっかく温まった体が冷えてしまう。でも、この微睡みの瞬間が気持ち良くて……
至福の時間を満喫していると、バタンと勢いよくドアが閉まる音がした。それからドタドタと近づいてくる大きな足音。
ピクピクと耳だけを動かして、その音を追う。
(この足音は……)
顔をあげると同時にドアが開いた。
「ミー! 夜市場に行こう!」
「ふにゃぁ、みゃ?」
(夜市場、ですか?)
コテンと首を傾げる私にバーク様が手を伸ばす。
「冬にしかやってない市場があるんだろ? 行ってみたくて仕事を早く終わらせたんだ」
強面が満面の笑みを浮かべている。その笑顔に私の胸がドキリと跳ねた。こうして一緒に暮らすようになっても何故か慣れなくて、何度もときめいてしまう。
そんな気持ちを隠すように私は大きな声で返事をした。
「にゃ!」
(はい!)
伸ばされた手に飛びつき、そのまま大きな懐の中へ。太陽の香りに包まれ、思わずうっとりとなる。
「うおっ、あったかいな」
そこに降ってきた驚いたようなバーク様の声。
そのどこか慌てたような様子に私の悪戯心がむくむくと育つ。
「みゃん!」
(えい!)
私は懐から顔を出して手を伸ばした。ピンクの肉球がぷにっと褐色の頬に触れる。
「なっ!? お? あったか柔らけぇ!」
強面がとろんと溶けて嬉しそうに頬ずりする。最強で有名な竜族の盟主とは想像できない腑抜けた姿。とても他国のお偉い様方には見せられない。
でも、これが私の大好きなバーク様で。
「うなみゃぁなん」
(お仕事を頑張ったご褒美です)
私はバーク様が満足するまで前足を自由にさせ…………るつもりでしたが、途中でにおいを嗅ごうとしたので強制終了しました。
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竜族のギルドに届いた奇妙な依頼文
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