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【WEB版】婚約者に浮気された令嬢は異国の強面盟主に溺愛される〜呪いで猫になりましたが、毎日モフられています〜【コミカライズ・電子書籍4巻配信中】  作者:
番外編

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夏の味覚~後編~

「みぃにゃぁ……」

(疲れました……)


 軽く息が上がってしまった私とは反対に、疲れた様子もなくゴソゴソと桶の中を動くザリガニたち。


 その中の一匹が再び外へ出ようと動きだした。


「むにゃ!」

(ダメです!)


 サッ、と前足を出した瞬間、ザリガニのハサミも素早く動き……


 バシッ!


 白金髪プラチナブロンド色の毛が挟まれた。


「ぷにゃぁぁぁぁ!!!!!」

(ひゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!)


 ザリガニからの思わぬ反撃に驚いて出た叫び声。

 素早くバーク様が反応する。


「ミー!? どうした!?」


 バーク様がカゴを投げ捨てて駆け寄ってきた。


「みゃみゃう!」

(バーク様!)


 私を素早く抱き上げる大きな手。無骨な指が優しく私をすくいあげる。

 その温もりにホッとする一方で、バーク様は心配のあまり眉間にシワを寄せていて強面が極悪面に。


「大丈夫か? 挟まれたのか? 怪我は?」

「にゃ。みゃみゃうにゃうん」

(大丈夫です。挟まれたのは毛だけですので)


 前足を振って無事を伝えると、緊張していた強面が緩んだ。


「桶から溢れるぐらい獲れていたか」


 バーク様が魔法で見えない蓋をする。

 それから、私を片手で抱いたまま投げ捨てたカゴを拾い上げた。中には大量のザリガニ。


「……適当に投げたのに、一番多く獲れたな」

「にゃう、みゃみゃう!」

(すごいです、バーク様!)


 バーク様が右手に桶、左手にカゴを持って歩く。ザリガニたちは相変わらずゴソゴソ動いているけど、魔法で蓋をされたため出られない。

 ちなみにバーク様の私は肩の上。ゆらり、ゆらりと心地よい揺れに、ついウトウト……する前に暑い! さすがに、この時期の毛皮は暑い!


「ミー、どうした? 大丈夫か?」

「うなゃぁ……」

(暑いですぅぅ……)


 逞しい肩の上でへにょんと脱力する私。


「ちょ、すぐ戻るから! 戻ったら、体を冷やそう!」


 バーク様が全速力で走って屋敷へ戻った。



「はぁ……」


 屋敷に戻り、なんとか体を冷やして落ち着く。陽は沈みかけており、気温も下がってきた。


「大丈夫か?」

「はい、大丈夫だと思います」


 冷えたレモン水が火照った体を冷やしていく。

 そこに、腕まくりをしたオンル様がやってきた。


「また大量に獲ってきましたね」

「今日の夕飯にちょうどいいだろ?」

「今晩は食べられませんよ」

「なんでだ!?」


 驚くバーク様にオンル様が淡々と説明する。


「泥抜きのために、綺麗な水に一晩つけますから。今、大きなタライを持ってきて、そこに分けてきました」

「そうか。じゃあ、明日の夕飯だな」

「はい。ところで、休日デートは楽しめましたか?」


 オンル様の言葉にバーク様がハッとする。

 それから、思い出したように頭を抱え……


「そうだったぁぁぁあ!!!!! 今日はミーとデートのつもりだったのにぃぃぃい!!!!!! なんで、オレはザリガニ獲りで一日を……」


 四つん這いになり、床を叩いて悔しがる。

 そんなバーク様に私は慌てて近づいた。


「とても楽しかったですよ」

「……ミー」


 感動したように顔をあげて私を見つめる黄金の瞳。それから、ハッとしたように目を伏せる。


「けど、食べ歩きとか、服を買ったりとか、もっといろいろするつもりだったんだ」


 沈んでいく声とともに落ち込んでいくバーク様。

 私は胸の前で握り拳を作り、明るい声で励ました。


「それは次の休日にしましょう。ザリガニは今が旬ですから、今日を逃したら獲れなかったかもしれません」

「ミーは優しいな!」


 ギュッと抱きしめられる。


 二人で買い物をするのも楽しいけれど、こんな休日も悪くない。


 私は逞しい腕の中で、穏やかな幸せを感じた。


~翌日~


「「うわぁ……」」


 真っ赤に茹ったザリガニタワーを前にバーク様と私の声が重なる。


「これ、どうやって食べたらいいんだ?」

「殻をむいて中の身を食べます。あ、ハサミの中にも身がありますよ」

「へぇ」

「こうやって剥きます」


 私はザリガニの殻を剥いて渡した。


「いいのか?」

「どうぞ」

「ありがとう」


 バーク様がザリガニを受け取ってパクリと食べる。


「……カニのような海老のような味だな。あ、でも海老に比べて弾力がある。ん、これは、これで旨いな」

「みなさんも、どうぞ」


 オンル様を始め、興味津々に見ていた使用人Aの方々がザリガニを手にして殻を剥いていく。


「……これは」

「確かにカニと海老の中間のような味ですね」

「いけますよ」

「パンに挟んでもいいかもしれません」

「スープや炒め物でもいいですね」


 次はどういう料理にするか話ながら食べて……いたはずなのに、気が付けば全員、無言で殻を剥いて食べていく。

 ザリガニを食べる時はなぜか無言になってしまう。それは竜族も例外ではないらしく。


 いつも賑やかなバーク様でさえも無言にさせる茹でザリガニ。


 ある意味、一番凄いと料理だと思ってしまいました。





お読みいただき、ありがとうございました!

また機会がありましたら、短編を投稿します!


コミカライズ合本版2巻にも書き下ろしSSと茶色井りす先生の描きおろし漫画とコメントがあります!

可愛い楽しいコミカライズ合本版2巻もお楽しみいただけたら嬉しいです!

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