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【WEB版】婚約者に浮気された令嬢は異国の強面盟主に溺愛される〜呪いで猫になりましたが、毎日モフられています〜【コミカライズ・電子書籍4巻配信中】  作者:
番外編

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水遊び・後編

 横抱きのまま空を飛ぶ。とても安定していて不安や不満はない。ただ、どこまでも同じ景色が続くので少々飽きて……


「着いたぞ!」


 バーク様の声に私は視線をさげた。眼下には大きなテーブルマウンテンがあり、真ん中にポッカリと大きな穴がある。

 真っ黒で不気味に見える穴に降りていくバーク様。私は思わずバーク様の服にしがみついた。


「スピードが速いか?」

「い、いえ。その、穴が……暗くて、怖いような……」

「あぁ。でも、中から見ると違うぞ」

「なか?」


 少しずつ穴の中が見えてきた。周囲を木々がおおっているため、その影で暗くなっていた穴の底はキラキラと煌めいていて。空をそのまま移したような青い池がある。


「……綺麗」

「だろ?」


 バーク様が池の端に降りた。乾いていた空気が重く湿っている。けど、そんなものは気にならないほど。


 私は目の前の絶景に言葉を失った。


 池だと思ったところは地下湖で。透明な澄んだ水が青一色となり広がっている。しかも、沈んだ岩や木がそのまま見えて、手を伸ばしたら届きそう。


 少し視線をあげて周りを見れば、不規則に並ぶマーブル模様の柱。太さも大きさもバラバラ。

 そこに水面から反射した太陽の光が映し出され、柱から天井の岩盤までゆらゆらと揺れている。まるで、水中にいるみたい。


「ここは……昔のお城の跡か、なにかですか?」


 静寂に私の声が響く。もしかしたら、洞窟のように奥深くまで続いているのかもしれない。


「いや。これは自然にできた場所だ。誰も手を入れていない」

「これだけの場所が!? 自然に!?」


 青空が覗く穴からは、太陽の光がカーテンのように降り注ぐ。緑の葉と多様な花が穴を覆うように垂れ下がり、彩りをくわえる。

 これだけの景色を自然が作ったなんて信じられない。


「そうだ。すごいだろ」

「すごいです……」


 呆然と眺めていると、バーク様が私の右手に触れた。視線をむけると、片膝をついて私を見上げている。


「バ、バーク様!? どうされっ!?」


 驚く私を表情を硬くしたバーク様が見上げる。


「ミー……いや、ミランダ。聞いて欲しいことがあるんだ」

「は、はい」


 真剣な顔のバーク様。私も思わず固唾を呑む。そこに……


「「「「水場だぁぁぁ!!!!」」」」


 可愛らしい声がバーク様を直撃した。それから、次々と空から降りてくる手を繋いだ子どもたち。


「はーい。じゃあ、ここで休憩しまーす。あ、盟主。こんな所で、どうされました?」


 子どもたちを誘導していた先生がバーク様に声をかける。私の手を離し、地面に崩れ落ちていたバーク様が力なく言った。


「オレのことは気にするな」

「そうですか。では、遠慮なく。あ、奥にいったらダメよ!」


 先生が子どもたちを追いかける。

 私は屈んでバーク様に訊ねた。


「あの、聞いて欲しいこととは何でしょうか?」

「……また今度でいい」

「わかりまし……きゃ!?」


 はしゃいでいた子どもの一人が私にぶつかった。そのままバランスを崩した私は……


 バシャン!


「んにゃ!?」

(えぇ!?)


 見事に湖に落ちて猫になりました。なんとか猫かきをして溺れないようにするけど、服が! 服が体に絡みついて!


「大丈夫か!? ミー!」


 バーク様が急いで私をすくい上げた。ボタボタと水が滝のように流れ落ちていく。しかも、湖の水が予想以上に冷たくて。


「くちゅん」


 ブルッと震えてクシャミが。このままでは、風邪を引いてしまいそう。


「ちょっと待てよ」


 バーク様が私に手をかざした。


『火の温もりよ、その恩恵を与えよ』


 びっしょりと重くなっていた毛がふんわりと軽くなる。冷えていた体もポカポカ。


「にゃにゃ……」

(ありがとうござ……)


「「「「うわぁ!! なに、その生き物!?!?」」」」


 散らばっていた子どもたちが一気に集まる。キラキラと輝く大きな目。


「かわいい!」

「ふわふわだ!」

「いいなぁ!」

「触らせて!」


 子どもたちの小さな手がいっせいに伸びてきた。その様子にバークが慌てて私を頭の上に乗せる。


「だ! ダメだ! ダメだ! ミーはオレのだ!」


 バーク様の言葉に子どもたちから一斉に文句が。


「えー! 盟主のケチー!」

「心が狭い男は嫌われるんだぞ!」

「少しぐらい触らせてよ!」


 頬を膨らます子どもたちから逃げるようにバーク様が走り出す。


「ダメだったら、ダメだ!」

「あ! 逃げた!」

「待ってよ!」

「盟主のイジワル!」


 バーク様が背中に翼を出して、そのまま飛び立った。


「触りたかったのにぃ!」

「ケチケチ盟主!」

「もふもふぅ!」


 下で騒ぐ子どもたち。正直なところ、私はホッとしていた。あのままだと、たぶん撫でまわされ、もみくちゃにされていただろう。


「悪いな。もう少しゆっくり景色を見たかったんだが」

「んにゃにゃぁ」

(いいえ)


 首を横に振る私をバーク様が頭から降ろす。空を飛んでいるし、そのまま胸に抱かれるのかと思いきや……


「んにゃ!?」

(えぇっ!?)


 バーク様が私の顔に頬を擦りつけた。


(イケメンのどアップ! が、眼福だけど刺激が強っ!?)


 わたわたとする私とは反対にバーク様がポツリと呟く。


「もう少しだけ、ミーを独占させてくれ」

「ふにゃ!?」

(んぅ!?)


 耳元で囁かれた、その艶めかしい声が。言葉を理解するより先に、全身の毛が逆立って。

 その声に酔いしれて、失神してしまいそうになりました。





本著の下巻が7/14に出版となります!

その時に少し長めの短編を投稿する予定です!

出版日が近くなりましたら、活動報告に情報を載せます!


お読みいただき、ありがとうございました!

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