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【WEB版】婚約者に浮気された令嬢は異国の強面盟主に溺愛される〜呪いで猫になりましたが、毎日モフられています〜【コミカライズ・電子書籍4巻配信中】  作者:
第二章〜解呪編〜

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いつもの日常に~オンル視点~

 解呪は中途半端になったが、本人たちがこれで良いというので竜族の里に戻り、いつも通りの日々……のはずだった。


 本日は執務室で書類仕事。毛玉は代筆の仕事がないため、いつもなら猫の姿でバークの膝で昼寝……が。


「じゃあ、この案件はもう一度現場を視察するから日にちを決めてくれ」

「……はい」

「あと、これはこのままで進めてくれ」

「……はい」

「よし。じゃあ、次の書類を」

「あの、バーク」

「どうした?」


 私はため息をこらえて言った。


「その()の毛玉は、どうにかなりませんか?」

「ん? なんでだ? 今までも膝にのせて仕事していただろ?」

「今までは猫だったからいいんです。人の姿は視界の邪魔になります」

「そうか?」


 バークが膝に座っている毛玉に視線を向ける。ずっと居心地が悪そうな顔をしていた毛玉が頷いた。


「ですよね? やはり仕事中に人の姿で膝はちょっと……」

「オレは気にならないぞ」


 あまりにも平然と言うので私はこれ見よがしにため息を吐いた。


私たち(・・・)が! 気になるのです!」


 執務室の入り口で控えている使用人たちも大きく頷く。


「えー。けど、オレはミーが膝にいたほうが仕事がはかどるんだけどなぁ」


 たしかに仕事はどんどん処理している。だが……


 私の事情を無視してバークが話を進める。


「可愛いミーが目の前にいるんだぞ。膝にのせたいし、触りたくなるだろ」

「あの、ちょっ、バーク様」


 バークがゆっくりと毛玉の頬をなで、そのまま指を髪にからめる。体を密着させ、毛玉に微笑むバーク。そのクソ甘い雰囲気に全員が砂糖を吐き出す。

 私はすべてを吹き飛ばすように執務机を叩いた。


「そういうところです!」


 しかし、私の怒りもバークにはどこ吹く風。


「おまえにも大事なヤツができたら分かるって」


 の一言で片付けられる。


「とにかく! そういうことは仕事が終わってからにしてください!」

「そうですよ、バーク様。みなさんの仕事の邪魔になることは出来ません」

「……ミー?」


 珍しく……いや。初めて? 毛玉がバークの行動を(いさ)めた。驚いている私たちの前で毛玉が左腕を伸ばす。


「本日は代筆の仕事がありませんので、バーク様の仕事が終わるまで私は猫の姿で過ごしますね」

「へ?」


 毛玉の左手首に淡いピンクのポーチがついている。バークが怪訝な顔で覗き込んだ。


「ミー、それはなんだ?」

「クラ様からいただきました。なにかあった時に身を守れるようにと、いろんなモノが入っているそうです」

クラ(あいつ)から!? まだ、処罰中だろ!」

「その辺りの詳しいことは分かりませんが、私宛に送られてきたそうです」


 頭を抱え、バークが唸りながら言った。


「だからって……そういう時はオレに見せてから身につけてくれ。危ないモノだったら、どうするんだ?」

「ですので、オンル様に確認しました」

「なに!?」


 バークが私を睨む。私は仕事を進めながら説明した。


「変な仕掛けや毛玉を傷つけるようなモノはなく、安全面は問題ありませんでした。どうやらバークが捕まっていた時に吸収した魔力で作ったようで、毛玉との相性も良いです」


 ぐぐぐ、と唸りながらバークが毛玉に訊ねる。


「なんでオレに言わずにオンルに見せたんだ?」

「クラ様からの手紙に、バーク様には見せないように、とありましたので」

「あいつぅ!」


 バークは怒りながらも、毛玉が腕につけているポーチを取り上げる様子はない。

 製作者がクラなので高性能なのは確実。毛玉を守るモノとして非常時に役立つ可能性もある。

 バークが渋々言った。


「次にそういうことがあったら、オレにも見せてくれ」

「わかりました。ですけど、これって本当にいろんなモノを入れられますし、いろんなモノが入っているんですよ」


 そう言って毛玉が取り出したのは細長いガラス瓶。


「これも便利で中身は水なんですが、一度空になっても時間が経つと、水が入っているんです」


 説明を終えると毛玉はガラス瓶の蓋を開けて、ひっくり返した。



 ポンッ!



 軽い音とともに毛玉が猫になる。左前足には猫サイズに合わせて小さくなったポーチ。持ち主の姿に合わせて大きさまで変わるとは。想像よりかなり高性能かもしれない。


「みゃん」


 猫になった毛玉が着ていた服をくわえて歩きだす。そこに使用人の一人が現れ、手を差し出した。


「片付けておきます」

「にゃーにゃにゃー」


 礼を言いながら毛玉が頭をさげる。その姿にどんな訓練でも表情を崩さない使用人の顔が緩む。竜族の中でもトップクラスの優秀な戦士でさえも、この状態。毛玉の威力、恐るべし。

 そこで不機嫌顔になったバークが立ち上がる。


「ミーに近づくな」

「みゃ!」


 毛玉がすかさずバークに片手をあげた。それはまるでバークを制止しているかのようで。


「ミ、ミー?」


 困惑するバークの前に毛玉が執務机の上に移動した。そのまま書類を前足でちょんちょんと叩く。


「さっさと仕事をしろ、と言っているようですよ」

「にゃーん」


 正解だったようで毛玉が可愛らしい声を出す。バークは仕方なさそうに椅子に腰を下ろした。毛玉がバークの膝に移動し、そのままコロンと丸くなる。そして、安心したように欠伸を一つ。小さな口から小さな歯がのぞく。


「……くぅ」


 バークから感極まったような声が漏れた。これでいつもの仕事風景に。


「はい、はい。では、さっさと今日の仕事を終わらせてください」


 やっと仕事に集中できると思ったが、バークが小さく肩を震わしている。


「どうしました?」

「…………仕事したくねぇ! ミーと一緒に昼寝してぇ!」

「さっさと終わらせてください!」


 私の怒鳴り声とともに執務室内が吹雪となりました。







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― 新着の感想 ―
[一言] 今思ったけど猫になった時服の他に下着は…どうなるんだろ パークさまーー片付けて良いの?他の人が
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