小説 コロナ準病棟奮闘記 原作 菊田はるみ
この世界のどこかの病院でCOVID-19の、
大量クラスターが発生して、半年間、閉じ込められ、全病床280のうち、130もの、クラスターによるコロナ陽性患者の、クラスターの中で、半年間、
コロナ陰性を貫き通した、たった三人の物語、
君は、生き残れるかな?
ある都市の大町精神科入院病棟の西3病棟はこの病院の入院患者を一手に引き受ける「隔離病棟」がある。それと同時に急性期の患者も引き受けるこの病院の「心臓」だ。最近、実際に隔離病棟でコロナ患者が出た事も有り、増々、この病院は警戒のレベルを上げた様だ。西3病棟の体制も、各階の師長、看護部長、副部長、デイケア、OTの人員を借りて、段々と西3病棟の隔離の準備も整って来た様だ。まだ患者のマスクはまばらでも、スタッフは全員、サージカルマスクとフェイスガード、「隔離エリア」では、宇宙服みたいな、服を着て、看護に当たっている。着々とコロナ対策が進んでいるのが患者側にもひしひしと伝わって来る。緊張感と切迫感が同時に感じられる。新しく出向してきた職員も初々しい。しかしここはコロナ準病棟、決して気を抜く事は許されない。職員に取っても命取りなのだ。命の危険の分からない老人の患者を含んだまま、病棟は回復に向かって全職員と西3の患者で突き進んで行く。
この病棟は今年の春に大幅な人員の入れ替えが有り、同院の成功モデルとも言える「開放路線」を取って来たが、ひずみで9月に大量の職員を失い、補填と転向で、西3は今、運営されている。その軸となるのが主任大原氏である。剛腕で西3を切り盛りし、西3の実質的な中核であり、この病院の看護部長、各階の師長、各主任とも太いパイプを持つ。まさに西3の大動脈だ。西3の徹底の消毒も12月に成って始まったが、次亜塩素酸による食堂の消毒も11日に成って本格化した。度重なる即戦的な会議と実行、今現在までの過剰勤務の職員の休息と一気に西3病棟は機能的にシステムをシームレスに変えていった。今現在新規入院は1週間程止まっているが、この体制が確立されればいずれ、入院もまた開始されるだろう。果たして、今居る入院患者は、無事退院にこぎ付けるのだろうか?私の予定は2ヵ月、健康で安全な状態で無ければ、施設に受けれてはもらえない。
今回の事も有って、こればかりは医者に言わせても「コロナが収まれば」だそうだ。最近は職員の不陰気も落ち着きを取り戻し、他からの出向者や、新人を取り入れての医療チームと成って居る。12月11日の夜勤は看護師1名、作業療法士1名の混合チームだった。脱退と編入を繰り返し、組織は再生されていく。まさしくこの医療スタッフチームそのものだ。やはり、ケアワーカーチームの仕事は忙しい。朝から新聞の配り、朝の車いすの出し入れ、配膳下膳、食事の台車の管理、食事の介助やお風呂の介助、リネンの管理、おむつ交換、患者の清潔管理、売店への代理買い入れ、中には掃除専門のワーカーさんも居る。それが朝昼夕、365日、幾度となく繰り返されている。まず、粘りが無いと出来ない仕事だ。看護職に成るともっと専門的だ。医者に指示され、看護師の判断で出来る医療行為も有る。夜勤帯の患者の拘束や、カルテによる頓服薬の投与などだ。今、そこに居る、その場の看護師スタッフの即時の判断が必要なのだ。一刻を争う判断もある。医者は全館で1名、その看護師の判断が命を救う。そう言えば最近、パートの夜勤の職員来ていない。
隔離エリアのスタッフが全然知らないスタッフだった。かなりシステムが変わったのは、コロナと人員の余りの足りなさによるものだろう。そう言えば、これだけ人員3倍にも増員して、どうやってシフト組んでいるんだろう。今までは西3のシフト全部、正樹師長がケアワーカーさんの分も含めて作っていた。今のシフト、一体どうなっているんだろう?今、患者さんも隔離が続いて外出、外泊が出来ない、面会も出来ないのしわ寄せがかなり来ている。その中で患者が居るベッドの空間でも、隣のベッドにコロナ疑いの患者が居る。本音は嫌だ。今日の夕食時、12日だ、知らない医者がナースステーションでコロナ担当の看護師と綿密に打ち合わせでカルテを突き合わせてる。同室のコロナ容疑の患者に異変か?今夜の西3病棟は荒れそうだ。夕食の様子も差し迫って食事は急がされ、患者は途中で食事を止めて薬を飲む、或いは口の中にご飯が有るのに薬を入れられる。これが今の現実。50人以上居る西3ではわがままは許されない。食事の後、一応食後の薬の台車が周って来る。薬は一概に飲みたく無いと思うが、飲めるだけ良いのだ。
3人目のコロナ患者が隔離に担ぎ込まれた。12月12日だ。彼は13日に転院を楽しみにしていた。残念な事だ。私の部屋では2日掛かりで消毒が行われていた。今に振り返り、西3の特徴を思い出してみる。一つは主任の力強い牽引力、もう一つ特筆すべきは、西3の全体の責任者の看護師長の正樹師長が“聴く耳”を持っていると言う事だ。これが最大の“開放路線西3”の特徴である。師長が直接、患者や職員の声を足を使って拾うのである。今までの西3との大きな違いだ。これにより最大限の患者の意志の反映が病棟全体にされていると思う。それと同時に患者の状態が即時評価され、異変が有ったり、トラブルが有れば、他の病棟に編入されていく。ある意味、病院全体の動きが西3と連動して、西3を中心に動いていく、そういう趣きさえ有る。その判断の会議の中心となるのが特に西3の主任と師長を中心とした看護チームである。現場では、医師の指示よりも看護チームの評価の方が優先されるので有る。入退院は医者の判断だが、やはり判断基準と成るのは看護チームの記録と判断なのである。
患者への差別、区別は常に有る。食事の時、お風呂の時、おむつの時、薬を飲む時など、常に差別は付きまとう。障害別もそうだが、職員別でもそうである。大概の職員さんは優しい。患者間の差別や病院上のシステム、設備上の問題での差別も有る。行政や法律上の差別も有る。これは難しい。ネグレストでは無いが医療の報告を無視するパターンも有る。患者の通報を無視である。これは痛い!一つ一つの差別が壁と成って、患者が心を塞ぐ原因に成ったり、障害が重く成ったりする場合もある。塞き止められるダムのようにだ。それを改善するのには長い時間と心の治療を要する。障害者の心と言うのは健常者の心と何一つ変わらないのである。12月18日(金)今まで隔離され続けて来た安全な患者が随時一般病棟に編入される。10名程、西3と西5に1名、新規入院患者も1名、ストレッチャーで入院して隔離された模様、今の主任情報によると、白田主任も明日、復帰との事、古山さんも次々だろう。
12月22日(火)とうとうコロナの波が西3の一般病棟にやって来た。看護の中核、次期主任の中村さんがコロナに倒れた事が患者に発表、西3病棟全体の1~2割の患者がカーテン隔離と成る。マスクをしてのトイレ以外は隔離だ。1日目、この状況を説明しないまま隔離が行われたので一部大声を出す。私も隔離だった。名目は期限のないカーテン療養だそうだ。まず、配膳する人が居ない。日勤の看護師8名に一人の看護師が全く居ない。夜勤帯は男性看護スタッフ2名のみ、ケアワーカーさん全滅。日勤の看護師、声が聴こえるのは1名、車いすの方の朝ご飯は40分遅れ、西3病棟全体がコロナ体制に入る。保健所も入った模様。全職員と全患者のPCR検査は昨日終わり、今日の昼にも判明すると言う。コロナ組とそうではない組に分けられる。コロナ組の治療もどこで治療するか分からないらしい。ここでの治療もあり得るそうだ。(患者の場合)
運命は今日の昼に出る。職員がコロナの場合、解雇だろう。
患者の場合、コロナ患者が多ければ、ここで治療だろう。明日、日勤の看護師20名とケアワーカー、10名戻ってくるのだろうか?
12月24日10:30、続々とコロナ対策部隊の看護師とケアワーカーが入って来る。それぞれ宇宙服みたいな防護服仕様だ。各セクションの責任者が忙しそうに説明に追われている。日勤看護は出向も入れて3名らしい。防護服の看護師に熱を計られる。PCR検査の結果はあと2時間、看護師に心のコンディションを聴かれ記入される。受け入れるしか無いと答えた。俺も緊張しているせいか、大の方が緩い。まずトイレは許されている。マスク必要!流石、病院だ、打つ手が早い。とは言ったものの、この状態が長く続くと心と体に悪い。マンガでも描いていようか?もう少しして、
コロナの判断が出る。良くても悪くてもこのフロアーに留まらなければいけないのかも知れない。外部から来た応援部隊に次々と指示が出る。これからコロナ実働部隊が来てから初めての昼食だ。お手並み拝見と行こう。11:20、一気に人気が引いた。ご飯の時間が遅れるのは、これから良く有るだろうとの事、他病棟や外来から来た助っ人たちは、どこまで強力なのだろうか?どうしても老人の食事介助をした後で無いと、配膳出来ない様だ。今まで汚物室で話していた人たちは助っ人のケアワーカーで、衛生を担当するらしい。ざっと5人か?食事は30~40分遅れの冷たいご飯だろう。俺の入れ歯は俺のそばのテーブルにケースに入って入りっぱなし。使ってみるか?助っ人の話によると、テーブルを拭く布巾もまだ、11:30でも洗っていないらしい。俺は部屋食で良いが。あれ?夜勤の看護師主任の声が聞こえる。彼は正義感が強い。いつも通り、老人患者のドアをバタンバタンとうるさく閉める音が響く。耳が聴こえないのだ。諦めよう。ご飯の後はPCRの判断、もう出ているかも知れない。
そう言えば今日か明日の木、金は担当医の回診だが、暫くの間、担当医には会えないだろう。もしかして、コロナがOKでも退院が危うい。施設の受け入れ手が無い。保健所が来たと師長が言っていた。テレビや新聞で病院名が出ると、もう行き場が無い。おまけにコロナ病棟。良くても悪くてもあまり良い事は無い。多分、看護師によるナースステーションの中のコロナのクラスター(20名)と、それに付随するクラスター(50名)(食堂などだろう)今ここは、俺のベッドはコロナの真っただ中なのだ。ここがコロナ。コロナ病棟、コロナコロニーなのだ。もうすぐ12:00,15分後、多分、ご飯は人が引いたので30~40分遅れの冷たいご飯。ご飯食べるのメンドクサイ。コロナ対策ケアワーカーは説明を終え、帰ったのか?今、感染患者の徘徊に対して、職員から主任に質問している。主任は帰らないつもりらしい。コロナ対策ケアワーカーは元居たセクションに帰ったらしい。取り残された西3病棟。担当医、担当看護師、担当ケアワーカーに会いたい。食堂でご飯食べたい。廊下を通るのは完全防備の職員のみ。ただ言われ無く閉じ込められる。他の患者からもコロナ患者扱い。なんか嫌だな。
12月24日、クリスマスイブ、昼の12:00を過ぎた。今年のクリスマスイブは何だかな。ただ怒りと憤りが突き上げる。どうせ美味くない飯。おまけに冷えてる。1Fの厨房自体も遅れているらしい。今日のメシは病院にしては普通。明日は予算出て、夕食はバターライスにチキンレッグだそうだ。病院にしては頑張ったと思う。夜勤だった男性主任、いつまで居るつもりだろう。多分、午後から、コロナ組とそうで無い組に振るい分けられる。俺、どっちなんだろう。なんか、どっちでも良い感じ。どうせ退院出来ない
こういう場合、誰が患者や職員に責任を取るのか?病院だって被害者。心理的苦痛?言われなき監禁?失業?水でも飲んで飢えを凌ぐ。流石に患者からの言われなき迫害は辛い。12:25,食事の台車の音もしない。小さな4人分乗りの台車が来た。自分のを取ろうとすると職員に何回も大声を出され、
メシも食えないのかよと思い、ベッドに2回八つ当たり。メシを持って来たが、あえて話さない。入れ歯やお茶のフォローが無いので「お茶欲しい」と言い、貰う。相変わらずのメシ。ベッドで食べるとより、悲壮感漂う。薬に来た看護師にPCRの結果を聴くと「職員は昼過ぎ、その後だよ」と、時刻を明確にしない。13:10、する事が無い。PCRがOKでも、する事が無いだろう。私は作文とマンガ創りと、小説とコレと、自分の歴史か?一族の歴史は結構探した。大和朝廷時代から有る俺の一族の歴史は殆ど調べつくした。北海道開拓記念館にも一族の写真が飾られていたらしい。大正3年9月13日の写真である。話を濁したが病院側は患者や職員のコロナ感染情報を本人にも、特に患者本人に知らせない事も有るかも知れない。俺はコロナで無いのにずっとコロナ扱いかも知れない。精神病院とは一概にそういう所なのだ。14:40、いよいよコロナの判断が出て、患者の振り分けが始まった様だ。日勤の看護師が忙しそうに台車を連れて病室を周っている。先程「菊池さんOK」との声が聴こえた。ホッとした。
16:40,部屋の全員が軟禁された。コロナ患者が意外と多いそうだ。豚箱状態、ナチスのガス室に似ている。これが治療だそうだ。今、この西3病棟が保健所管轄に成ったことが分かった。札幌市保健所直轄、響きは良いが、あまり良い物では無い。今回の病院の判断は非感染者も多く含まれるが、感染者の割合も多く、患者全体をコロナ患者扱いだそうだ。精神患者がゴミの様にひとまとめにされて、ゴミ箱に入れられる様な気がした。コロナ対策部隊はこの為のものだったのだ。入院費を払わされ続けられ、ゴミ扱い。半年は固い。やられた。PCR検査はOKなのにな。違法的にコロナ患者の刑6ヵ月。20:00,コロナ班が動いた。隣と向かいの2名連れ出されて保護室へ。コロナの為だろう。俺もか?手荷物まとめて用意する。突然の出来事に少し焦る。二人は暫くは戻らないだろう。だって保健所管轄のコロナ保護隔離だから。なんで俺で無いんだろう。次は俺か?12月25日7:45、今想ったのだが、今の西3病棟が昭和40年代の精神治療病棟の様な気がして来た。それか留置場。衛兵が消毒ポンプを持って追って来る。夢を見そう。これがこの病院の会議の結果。いつ、この状態、解除されるのかな?その頃には看護師も替わっているかも?間もなく朝ご飯の予定。俺は食べられるか分からない。朝ご飯はどうでも良い。どうせ30分遅れの冷たいご飯。ここ以外の精神病院もコロナにやられている。7:55、何かケアワーカーさんらしき声がする。隣の患者は入院30年の偏屈で人が死んだニュースがテレビで流れると喜ぶ。とっちゃんぼうや。今、この部屋3人しか居ないのに、8:00ケアワーカーのリーダーとかの声がする。なんだか心が解れる。彼女たちは仕事もするが、ここの潤滑油。患者の心を滑らかにする。看護師は調査役と強制執行役、医者は後ろで見ているお目付け役と言った所か?師長と主任は調査と強制執行のボスだろう。担当ケアワーカーの声が聴こえた。結構、担当ケアワーカーは子供っぽい。少し可愛い。俺もこの歳に成ると皆、自分の子供に見える。世話をしているのは彼女たちだが・・・台車の音がする。食事の台車がすぐそばまで来ていた。職員検疫兵みたい。
12/25、8:45、食事を終えた。思ったより食事早かった。食堂での食事が無い為。よく考えればこの部屋の俺たち、PCR検査OKなのに軟禁、なんか嫌だけどケアワーカーさん復活や看護師まで復活ならまぁ良いか。取りあえず、患者は全員部屋に待機状態で、看護やケアワーカーのサービスを受けるらしい。お風呂どうするんだろう。後で聴こう。流石ケアワーカー、手際が良い。さっきから偏屈な部屋の患者が、カーテンを出て、部屋の中を歩き回っている。何か耳障り。あまり酷かったら俺から言う。8:40おや、あれは看護師中島さんの声か?これから引継ぎだろう。何と病院全体か?9:00大原主任の声がスピーカーからする。無事だった様だ。看護体制も復活か?1日の空白の時間が怖かった。隣の患者は透析が出来なくてイライラしている。3日間透析しなかったら体が腐って来るだろう。コロナ体制に成ってから、患者の出入りが余計に厳しくなった。今、計温に周って来た看護師情報によると、コロナ感染者がいる限り、この体制は続くとの事、厳しい。同室からコロナ患者2名出た事も有り、何とも言えない。職員の一人からここでクラスター発生との事、やはりな。
看護師が完全防護服で訪問し、湿布を配って行く。小さい湿布3枚貰った。何か戦場に居る看護師みたい。自衛隊みたい。野戦病院ナイチンゲール。先程、ひょっこり食事前に担当医が会いに来た。全体の事なので仕方無いと医師に伝え、鉛筆で描いていたマンガを見せる。案の定、担当医も完全防護服だった。ゴーグルも生々しかった。木曜のジュース、昨日飲めなかったので、今日飲めると嬉しい。夕食はバターライスにチキンレッグ、期待はしていない。俺に与えられたのは紙と10本の鉛筆の自由だけだ。やはり廊下で聴こえた話だと、トイレも食事も、ここの何もかにもが俺たちを“コロナ患者”を前提に運営していく様だ。PCR検査は関係なく取り扱われる様だ。退院後もだ。完全に西3病棟の患者はコロナ患者と病院運営に認定されたが、昨日のPCR検査って何だったのかな?意外とアバウトだな、この病院。いつ外に出られるんだろう。しかもコロナと認定されながら、コロナに掛からない様に。何か面倒臭い。廊下で大原主任に西3病棟の安全な患者をコロナ、“コロナ患者として扱え”と指示していたのは、どうやらPCR検査の時に来ていた外来の部長らしい。
16:00コロナ部隊再び動く。コロナ班、看護師4名ケアワーカー4名の特別部隊がこの307の空いたベッドを次々と消毒して、ベッドを創っていく。今、他の病棟(東2か?)から5名、編入。この部屋に男性の痴ほう症の患者を入れるそうだ。ベッドの元主は二人ともコロナ患者。念入りな消毒をした後、ベッドを創る。入って来る患者は東2のクラスターの同部屋の患者らしい。16:15、1人目、到着、看護師が迎え入れる。クラスターのコロナ患者。今までこの部屋に居た3人はコロナ患者として扱われ、耐性が有ると判断された模様。東2病棟でもクラスター発生で、丸ごと西3に持って来た感じ。まるで鳥インフルエンザが流行って、皆殺処分されたい気分。これから入って来る老人、徘徊癖や泥棒癖が無ければ良いが。3人まとめて、入って来いやって感じ、多分、コロナの濃厚接触者だろう。賑やかに成るな。コロナ患者の移動の手続きと実行がどんどん進む。今、この部屋には2人入った。あと一人、老人が来る。汚染エリア、汚染病棟、レッドゾーンと、イエローゾーン、グリーンとかクリアーゾーンとかは無い。
夕食が始まった。食器は味気無いプラスチックのペラペラに変わった。でもしっかりバターライスとコーンポタージュ、骨付きの鳥の足が付いていた。何だか今、今日がクリスマスだった事を思い出した。職員に、“メリークリスマス”と言ったらそのまま帰って来た。今夜の夜勤の女性看護師にも“メリークリスマス”を言おう。今日は、いつもは言わない歩き方がとぼとぼして可愛い看護師にその事を伝えると“だってそういう気分でしょ?”担当のケアワーカーは子供っぽくて可愛いのでそのことを伝えると、もっと言って欲しいそうだ。今夜の夜勤の看護師にはクリスマス・イブが有ったかどうか聴いてみよう。この看護師は俺のマンガを褒めてくれる。わりかし可愛い。今夜は落ち着いた夜に成りそうだ。20:00早速新しく来た老人の患者さんが自分のお金が無いと言う。やっぱりか。葬式だそうだ。今、ここは老人部屋を通り越して汚染病棟の一室なのだそうだ。担当ケアワーカーさんが言っていた。本音を言えば、俺も逃げたかった。少しもの救いが看護師の笑顔かな?この痴呆患者、夜、ちゃんと寝てくれると嬉しいな。隣も寝てくれよ。2021年1.1、久し振りに書く。クリスマスイブのとぼとぼ歩く可愛い看護師は、コロナに感染した。今現在の看護体形は日勤3人。次々と患者が死んでゆく。今日は元旦なのに4人目、ケアワーカーも2人コロナに倒れた。3人で回している。看護は2人コロナでこのフロアで感染者、30名近く。全員で看護入れて60名くらいなので1/2がコロナ患者50%、死亡4名、違う医療機関に患者を移す気などさらさら無いらしい。レッド(コロナ組)は回復か死亡、イエロー(濃厚接触者)ずっとイエローをキープか、レッドに落ちるか、濃厚接触者と回復者に成り切るだけの価値は俺には有るのか?
現在のレッドは隔離10名、1号6人、2号3人、3号、5号それぞれ2名、13号6名、合わせて29名不思議な事に302はレッド、イエロー混合だ。29人のレッドが全員死ぬか回復、残りのイエロー25人、キープか?物凄く切羽詰まる。せめて、トイレはこのフロアーに2カ所有るのだから、男性トイレを感染者、女性トイレを非感染者用にする位の配慮が有って良いと思う。現在レッド29名イエロー25名
1/4にまたPCR検査が有り、振り分けられる。俺は右か左か?
1/12(火)以前にPCR検査で非感染者5名感染者63名に、
今日行った個別の検査でさらに非感染者3名に何故か俺は3名に入っている。寝たきりのお爺さん2名と俺だけが非感染者だ。師長も感染したようだ。昨年の12/28まで看護として働いていた高本さん復帰、スーパーの看護師が2名に成った。師長は病に倒れながらも指揮とシフトをこなしている模様。西3はこの通りだが、西4の放送が頻繁に入る。西3と西4でパニック。西3は、これから全員、感染者(患者)になってスーパーコロナと成り、お風呂や西3の指揮もしやすく成るそうだ。。2週間西3の現場に出ていて、コロナに感染しない看護師が多少愚痴っている。気持ちは分かる。俺も残り3名の中の一人の非感染者なのだ。いっそ、マスクを取って、廊下を歩きたい。今日は薬を飲んで抑えた。2021/1/14(木)10:00、何回目かのPCR検査結果が出た。今回は陰性の患者3名と職員、隔離の患者2名もPCR検査を受けた模様。
西3一般患者の3名は相変わらず。今日来ている職員にも変動はない。多分、隔離の畠田氏ともう一人の患者さんにも変動無し。前から隔離担当の看護師さん曰く、俺や長く陰性が出ている患者や職員は自然免疫が付いているだろうとの事、俺も昨年から今年で10回程PCR検査を受けた。免疫が異常に強いらしい。昔、何か変な物でも食べたか?マスクこそすれ、コロナ患者と同室や握手、近距離での会話をしているが、一向に体調の変化無し。かえって俺は異常らしい。想えば第1号のコロナ患者は隣のベッドのお爺ちゃんだった。そこから広まってしまったのだ。病棟のナースの説明によると、カーテンをしているから大丈夫だそうだ。んなわけが無い。あっという間に同室から3名同時にコロナ陽性が出た。俺は濃厚接触者とされたが、3週間以上経った今日まで陰性を保っている。病棟の初期隔離が失敗した形だ。コロナも広がりクラスターと成って廊下中クラスターの香りが漂い、廊下の床にはコロナの濃厚クラスターが流れた。今現在は濃厚クラスターは収まり、感染しようも無い所まで感染も落ち着き、コロナ陽性患者の復活を病棟は待っている。無菌と成った
コロナ患者は俗称“スーパー”と呼ばれ、コロナ菌に対しては無敵と成る。重症化するリスクを除けば、“スーパー無敵”は素晴らしい。看護師にも“スーパー無敵”に成って帰って来てくれた看護師が2名居る。一名は20代なので、生殖能力が心配だが、たまに腰を押さえているので辛いのだろう。彼女たちはヒロインだ。もう少しで師長も“スーパー師長”として帰って来る予定だが、まだ治りが遅いらしい。今は陣頭指揮は大原主任で踏ん張っている。先程俺のコロナ陰性の事で陽性に成ってしまった仲の良い患者に誹謗され、ばたばたが有ったが、お互いが辛い想いをしているのだと、結局のところ、話は収まった。来週はまたするであろうPCR検査で全員、何と結果が出るか分からない。陽性患者は無菌に成って早く退院出来るのである。こうなった場合、スーパーの方が退院は早いと言われ、「もうそろそろ陽性だよね!」と言われたが、陽性に成れないのである。何か悔しい。マスク、100枚有るけど着けるの止めようか?1/1からイエロー25名、レッド29名、1/14(木)イエロー3名レッド6*8+2+2+5=57名、生き残り、約3名、うち俺一人。
今日の夕食時、食堂で同じテーブルだった沢口さんが呼吸器不全の為、亡くなったらしい。301号室の彼のベッドの周りに緊急セットと「胸部圧迫と人工呼吸」のメッセージが繰り返される中、看護師3名程度が集まって処置したが、機械の音が止まり、西のエレベーターで搬送する放送、遺族の方々は「有難うございました」との言葉。俺も牛乳のストローを通して食べやすくしてあげた事等を思い出す。昨日も亡くなった人が居たのに残念だ。俺は服を着こみ、体温を上げ、免疫を少しでも上げる様に努力する。お風呂は師長、主任が揃って出てきたら考えられるとの事、福祉施設からの鉛筆と色鉛筆、消しゴム等を郵送で病院に送って欲しいと薬を持って来た看護師に聞かれたので伝えた。福祉施設に買わなくても有るのだ。削り器まである。こう書いていると鉛筆の消耗が激しい。いつもの夜勤の古山さんにコート着を見せた。一度振り返った。今の西3では鉛筆と色鉛筆は貴重なのだ。出来ればシャンプーと石鹸も欲しい。頭のかゆみを止める為、頭を刈りこんだ。電気カミソリで。
夜勤の古山さんが少しおどけて夜の薬を飲ませに来る。彼はおどけて様子を見るタイプ。先程、患者が一人亡くなったとは言い出しにくかった。彼だって辛いのである。今まで書いた小説と手記が短編も入れて20作品位有ったので、読み返していた。意外に時間が掛かる。童話と挿絵、オリジナルの塗り絵などが20作品位ある。時間だけはこの病棟には有る。印刷した12作品のファンタジーまでは長いので、読み返す気にはならなかった。こうやって自分の死の怖さから逃げている。明日は我が身だ。わが心と身を引き締めよう。鉛筆の使う量が半端無い。一週間に3本づつ、注文している。看護師たちからは作品と呼ばれている。まずまともに見ようともしないが。年末年始に西3で仕事をしていたOTから出向の女性職員2名の顔を見ない。頑張っていただけにコロナに成ったのなら残念だ。俺が親しかった職員だった。1/15(金)8:35「看護師方の誰か、諏訪さんの所、行ってください」の緊急放送掛かる。昨日今日と立て続けだ。今朝方も薬を飲み、何だかんだ言って昼食が来る。今日の昼は醤油ラーメンに野菜餃子、フルーチェだ。薬の看護師に頭がお坊さんだと言われたので、何教を唱えるかと言う。創価学会の地域幹部だと言うと、
看護師は少し驚いていた。先祖の代から曹洞宗で、お経を唱える。ここでそれはしてはいけないと思った。今朝10:00前、コロナに成ってから14日間経ったコロナ患者を菌が抜けたとしてお風呂のサービスが部分的に始まる。俺は感染していないので、この西3全員“スーパーコロナ”に成って菌が抜けるまで駄目だと思う。お風呂の湯舟、入りたい。体が痒い。それにしても頭を刈り上げた俺は徳が有るお坊さんなのか?自立で西3では俺一人だけ濃厚接触者で済んでいる。3人以外は患者全員、コロナ患者、もしくはスーパーコロナ。スーパーコロナ患者がいよいよ続々と増えて来た。仲間内では来週の火曜日には殆どスーパーコロナ患者に成ってお風呂可能、最後まで3日前まで濃厚接触者だった小崎さんは、今日で三日目、その全員がスーパーコロナ化って気が遠くなる。1/15本日、正樹師長復活、髪を切り上げて、それでお風呂復活だったのだ。おかえりなさい。大原主任、白田主任、良く踏ん張りました。これで看護の一部、正常化。西3からの外部への通信も一部正常化と成る。まだ医者は来ない。書き物ばかりしているので、たまに塗り絵か、塗り絵の元絵でも創ろうかを考える。隔離から出て来た畠田さんに鉛筆と色鉛筆を渡そうか、考えてまず本人に聴こう。
塗り絵の色付きを何枚か渡そうか考える。必要とあらば紙だ。部屋まで何度かアクセスしたが無理なようだ。見せる絵を書き物は溜まっているので見せれるときに見せよう。紙はその時で良いだろう。鉛筆も未使用3本だけ残して後は使いやすい様、こなれておく。程よく長く短く。福祉がOKなら鉛筆10本追加、色鉛筆20本位追加、これは大きい。消しゴムも大きいのが6個くらい有ったはず。ボールペンもA4のコピー用紙も200枚くらいか。郵送なので、OKなら気長に待つ。隣の区からの郵送だ、手間を掛ける。塗り絵済13枚、未塗りが33枚、大きいサイズが済み16枚、未4枚、おばさんに見せてあげたい。岡田さんは絵や文章を欲しがる。ノート紙100枚便箋150枚大判脳波裏紙100枚半分200枚メモ130枚。
結構有る方。鉛筆長6本色鉛筆少々、何か日記に成って来た。平和じみて良い。何か絵を描くのに集中できない。散歩しよう。15:00緊急に大原主任さんが部屋に入り同室の隣人のおじいさんのバイタルをこまめにチェック、酸素が少ない、呼吸数がとの事で、ナースコールで詰所と連絡しあう。隣部屋のおじいさんと共に監視に入る。コロナの疑い。
同時に俺は隣の個室への移動を指示され、すぐさまケアワーカーがベッド移動、俺はこの西3で自立唯一の非感染者と成った。概算56+4名、隔離6名、合わせて66名の感染者に対し自立俺一人+寝たきり2名の非感染者である。どうなっているのか?俺のするべきことは?いや、止めておこう。自然に任せよう。何か俺一人が自立で唯一感染していないなんて逆に変で恐ろしい。廊下で仲間に話を聞いて来る。おまけに今まで隔離看護の主軸だった小内看護師が調子が悪いとの事で早退したいと主任に相談、彼も長く隔離に居て、「俺たち、免疫が有るな」と俺と話していた。残念な話である。
唯の風邪か疲れだと良いが。1/18、11:45現在、陽性30名かんかい者17名濃厚接触者4名、もう少しでかんかい者+濃厚接触者が陽性者に逆転、少し先が見えたか?次のPCR検査で濃厚がキープで日数的と内容を内科医が判断してかんかい者とする。かんかい者とは、精神病院的で、俗に言う“スーパーコロナ無敵患者”
コロナ菌に関しては無敵である。ここの師長さんも“スーパーコロナ無菌者”に成った。年配のケアワーカーさんも帰って来てくれた。もう一方と台湾の方、いつ戻れるのか?
相変わらず俺は立場の弱い非感染者4人の内の一人だ。今日、月曜なので、水、木当たり、この4人と職員がPCR検査か?もうPCR検査はしないと言う話もある。コロナ陽性30名の方が無菌に成らないと非感染者はキツイ。風呂、廊下、トイレ、皆、制限を受ける。またコロナ陽性と成ってコロナを拡散させる可能性もある。微妙な立場なのだ。今日の昼メシはカレーうどんにいつものドールのジュース、月木のコーラも付けるそうだ。少し嬉しい。この病棟は初め、入院時のコロナ拡散を防ぎ、急性期の患者を受け入れる病棟だったが、今ではこの病院全体で発生したコロナ陽性と接触者を西3が全員隔離する、そういう使命を持った病棟に成った。病院全棟が陽性が収まるまで、ここはエマージェンシーなのだろう。どんどんコロナ陽性患者が病院全棟から送り込まれてくる。誰一人とも治るまで西3は白血球的な役割を果たす。西4も怪しいが。昼食後、職員の話で15:00に師長、部長、院長を含めた会議が有るそうだ。西3の在り方、退院、入院、いつまで、ある意味病院の非常事態宣言を続けるのか?収束宣言とか衛生関係とか給食、患者の状態把握とか様々だと思う。何せトップの理事長が、
医療関係じゃないから難しい。食事に関しては多少は改善されて来たような気がする。事細かに関しては、次回のPCR検査と内科医の判断、院長、事務長、理事長の判断だろう。西3病棟が掃き溜めに成らない事を祈る。18日夜から19日朝に掛けて、今まで入った事のない暖房が入る。たまには入っていたが、今回は通しで入った。これか今回の会議の一つの成果か?西3は切り離され、患者全員と職員が命の危険に晒された。殆ど同じフロアーに居たというだけで、濃厚接触者扱い、初めの一人の患者の対処に病院側は失敗して職員を巻き込み、今はこのフロアーで非感染なのは4人、60名近くが感染、少なくても20名は死んでいる。これがこの病院の現実、テレビで発表の180名の病院クラスターの内、新聞発表の病院280床のうち130名感染、少なくてもこのフロアーで60名がクラスター感染、テレビで名前が出なければ良いというモノではない。西3以外でも西4でもクラスター発生、酷い病院だ。封鎖だそうだ。職員泣き寝入り。病院の金金主義が引き起こした人為的人災、何人死ねば良いんだ。病棟からいつの間にか居なくなった患者は殆ど死んでいる。西3の職員と患者は人が死ぬことに慣れてしまった。15号か、隔離から「お母さ~ん」と叫ぶ男の声がする。
これが西3の日常、今の普通。15号は俗称「霊安室」命が厳しい患者が酸素マスクを付けられる病室だ。酸素ボンベの大きいのが置いてある。そこで一線を超えると帰れない。その奥に隔離の「保護室」が有る。暴れる患者がその個室に入る。個室は6室。今は昔からいる古い患者が多い。そう言えば保護と15号室から諏訪さんと青川さんの名前が無い。何か怖い。看護師に聴くとこの病院の封鎖は札幌市の保健所の許可が無いと解けないそうだ。気が遠くなる。1/19(火)13:45一体の遺体が出て行った。無言の退院となる。ビニールでグルグル巻きだった。今まで仲の良かったおばさんや若い面倒を見ていた患者に見切られる。原因は俺の話が面白くないので無視だそうだ。非感染者であり短期入院帰る場所が有る俺への迫害だと思う。ちなみにおばさんは警察沙汰で一年確定、お兄ちゃんも一年確定、俺の退院予定日は明日の1/20だった。ここ一か月は退院ムリ確定で、何人かは退院の予定は立っていると言う。今日(火)なので、(水か金)にでも医者かケースワーカーに話してみる。帰る部屋は有るらしい。妹と福祉の職員が仲が良いと妹から聞く。それとなく妹にも当たってみようか?出来れば来月以降に退院したい所、俺は非感染者でスーパー無敵ではない。
施設にとって復活したスーパー無敵が良いのか、接触者のままが良いのか、俺には判断出来ない。早く違う安全なフロアーに行きたい。少なくても西4、西3は人が死に過ぎた。これからも人は亡くなるだろう。今想うんだけれど、以上に増えたコロナ陽性が少ない非感染者をバカにして煽りはぶる。何だか最近の小中学校のイジメを連想する。コロナ組は退院した後、食事会だそうだ。別に良いと思うんだけれど、今現在の非感染の俺にとって、君たちは害のあるハードルにしか見えない。しかも西3にはコロナがはびこっている。実社会の環境とは陽性と陰性の立場は全く逆なのだ。病院方針のせいだ。スーパーコロナのおばさんを断ち切るには仕方ない選択だったと思う。俺の湯舟はいつだろう。一か月、風呂に入っていない。今日一日で何人もの人が死んでゆく。13号室と15号室は戦争だ。