第二章 ワダツミノウタ
今回の作品は非常に痛い、と思うかもしれません、否、痛いですかなり、恋愛描写はかなり苦手なので許してくだせぇ
カラリと晴れた空、昨日の土砂降りと打って変わって、実にいい気持ち
「すいません、モルグはこちらでいいんですか?」
二人は街道を南に進んでいた、途中行商に道を尋ねる
「ああ、あってるが・・・、あんたたち何かあったのかい?」
カイルはズボンが泥だらけの軍服に身を包み、アリアは服が濡れていたので、カイルの軍服を着て
下は黒のスカートという何とも変な組み合わせ
「あ、ありがとうございました」
二人はそそくさと先に進む
「何か私達目立ちますね」
「うん、早いところ着替えないと」
いくらか進むと、街道の近くに白い花が咲いてた
「あ、これフィラの花だ」
「どれ?」
アリアはしゃがみ込む
「絵でしか見た事無かったけど、やっぱり綺麗」
そっと摘み取ると立ち上がり、観察しながら進む
「確かに綺麗だね」
「これは綺麗なだけじゃなく、殺菌消臭作用もあるの」
カイルは不安になり尋ねる
「もしかして、僕の服、臭い?」
「いえ、あなたの服、とてもいい匂いです」
アリアは言ってしまってから、しまったと思う
「よかった・・・って、アリア?何やってるの」
アリアは恥ずかしいさの余り、顔を隠す
そうこうしてるうちに、港町が見えてきた
「アリア、あれじゃないか?」
「そうみたい、カモメも飛んでる」
二人が町に入ると、潮の香りがしとカモメが出迎える
「まずはこの服だね」
二人は旅人向けの洋服店を見つけた、少し寂れてはいるが贅沢は言えない
「すいませーん」
カイルは叫んだが長らく返事は帰って来ない
「あのー、買い物したいんですがー」
何もする事が無いアリアは店を眺める、奥行きのある店内は、幾つかのオレンジの輝石で照らされている
ずらりと並んだ服は、右側が婦人服、左側は男性服となっている、壁の商品棚は手の届かないような高さまで均一に間隔を開けて造られている
本棚のようだ、そこには様々な形や色の帽子が飾られているが、埃は被っていないようだ
「凄い数ねー」
「アリア、なんかいないみたい」
「そう、残念ね」
二人が帰ろうとした時、一番奥の扉が開いた
「いらしっしゃい」
出て来たのは高齢のおばあちゃん、曲がった腰に
質素な杖、白い帽子を被っている
「あ、よかった、僕達服を探してて」
「御自由に」
そう言うと近くの椅子に座る、このお婆ちゃんと同じ位の時間を、
共有して来たであろう、クッション部分が緑の丸い椅子だ
「どれにしようかな・・・」
「えーと、これもいいしあれもいいわ」
二人は無尽蔵の服と格闘していたが、結局選べずにいた
何とも優柔不断な二人であった、そんな二人にお婆ちゃんはニコニコしながら言った
「私が見繕いましょうか?」
「いやーすいません」
「お願いしますわ」
お婆ちゃんはゆっくりと服を選び始めた、最初から決まっていたのか、迷う事無く選び終わる
「はい、お二人にぴったりの服を選びましたよ」
お婆ちゃんはゆっくりと腰掛ける
「アリア、着替えよう」
二人はそれぞれ試着に入り、着替える
同時に試着室から出て来た二人は声を上げる
「おー、かわいいね!」
「カイルも似合ってます」
カイルはダークグレイのシャツの上に、ベージュを基調とし、濃いブラウンでアクセントを加えたジャケットを着る
ジャケットにはポケットが多数ついており、機能性とデザイン性を高めるてくれる
下には淡い青のカーゴパンツをはく、何とこのカーゴパンツは、暑い時に膝についてあるチャックを開く事で、半ズボンにする事が可能である
アリアは、若草色のワンピースを着ている、ひざたけ10センチ下程の長さで、ひらひらがついており女の子らしさをアピール
その上に羽織るのは、白いシフォンブルゾン、軽やかで柔らかい雰囲気を与え、ワンピースの清楚さをまとめる、履いているサンダルはシンプルで主張しないので、コーディネートを崩さない
「あらまあ、皆さんとてもお似合いですよ」
お婆ちゃんはやはりにこにこ、だがカイルは気付く、お金たりない!
アリアも幾らかお金を持ってきたと思うけど、もともと自分は苦学生だったので、今あるはずがない
「なあ、アリア・・・・その・・・」
アリアは鏡の前でくるりと回ったり楽しそうだ、アリアの服もお金持ちの娘が着るような服だろう
二人合わせて12万ニル位だろうか、もっとあるかもしれない
カイルはアリアを呼んで会計を聞く、アリアはがっかりするだろうけどしかたない
「そうだねぇ・・・・1300ニルでどうかねぇー」
「えっ!?」
カイルはその安さに驚愕した、がそこでアリアがとんでも発言
「少し高くないかしら?」
カイルはマッハでアリアの方を向く
「アリア、これって爆安だよ?、ていうかこんなお婆ちゃんから、これ以上ぼったくったら犯罪じゃないかな」
カイルは真顔で迫る
「ご、ごめんなさい、私ったらお金に関しての常識がないから・・・」
カイルは再びお婆ちゃんの方を向く
「いいんですか?こんな値段で」
お婆ちゃんはコクリと頷く
「もう少しで私の子供と一緒に暮らす事になってね、ここを離れるんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ、子供が言うにはこんな寂れた港町は嫌だって言うんですよ」
カイルはこの町に来た時を思い出す、町というには人が少なく、村と言う方があっていた
「ここを離れる時、この子達を業者に叩き売りするんですよ、だから少しでも大事に着てくれそうなあなたたちにと思いましてね」
お婆ちゃんは優しい目で店の服や帽子を見る
「だから大切にしてやってください」
二人は頷くと、店を後にした
「いやーお得な買い物したなー」「そうですね」
二人が表通りに差し掛かる
「アリア、止まって!」
「カイルさん?」
「聖国だ・・・」
カイルとアリアは身を潜める
「では、この人相に心当たりはないですか?」
聖国兵は紙を町人に渡す
「・・・しらねぇな」
「そうですか、ではこちらの人相書きを酒場にお願いします」
そう言うと、兵士は紙その場を後にする
「もう人相書きが回ってる・・・」
「色々あって聞けなかったけど、何があったのか教えて」
カイルは周りを十分に警戒しながら歩きだす
「よし、あの酒場で話そう」
二人は一軒の酒場に入る、中は荒くれ者達で溢れていた
下品な笑い声や大漁節が響く、
「凄い人のりょうだな」
「え、ええ・・・」
酔っ払った大男が二人の前に立ち、ジョッキの酒をあおる
「おう、ここはガキが来る所じゃねえぞぉ〜、ガッハッハ!」
アリアはカイルの後ろに隠れ、袖を掴む
「おいおい、つれねぇーな〜」
男はドカドカと足音をたてて店の奥に行く
「大丈夫?」
「ええ、男の人は何だか慣れなくて・・・」
カイルは店の一番奥を選び向かう、アリアは席に着くまでカイルの袖を離さなかった
「ようやくゆっくりと話せる」
カイルは息を吸う
「前にも話したように、僕とクライブは聖国騎士団に合格、そして入団して間もなく、不穏な動きがあった」
「それは?」
「アリア、君を拉致監禁するというものだった」
「なぜアリアを連れ去る必要があったかは僕にもわからない、でも君は帝国と聖王国のどちらからも狙われているんだ」
「そんな・・・折角自由を手に入れたはずだったのに」
アリアの顔が不安と絶滅の色に変わり、俯く
「僕が守る」
アリアが顔を上げる
「アリア、君は僕が絶対に守る」
その力強い声と、真っすぐな瞳は、アリアの心の黒い影を瞬く間に打ち払った
「何故そこまでしてくれるの?私の為に、夢も友達も置いてきて、しかも危険な目に会う事もわかっていたのでしょ?」
カイルは腕を組み考える、そして答える
「僕は騎士であり続けたいんじゃ無くて、より多くの人を助けるため、騎士になりたかったんだ」
「まあ、少しはかっこいいからっていうのもあるけど」
「ふふっ」
二人は微笑み合う
「おーおー、妬けるなぁお前ら」
突然横槍が入る、話しかけてきたのは、いかにもがらの悪い男
他にもお仲間が2〜3人ほどいる
「そっちの子、中々いいじゃん?、酒ついでくんねーかなー」
アリア少し怖くなって下がる
「あ、あのー、すいません、アリアも怖がってるのでやめて下さい」
後ろのピアス男が前に出る
「ハァー?野郎に用はないんですけどぉー」
男はカイルを押し退け、アリアに迫る
「だからアリアが・・・」
そう言いかけるとピアス男は、カイルの顔を殴る、殴られたカイルは床に転がる
「カイルさん!」
「あーあ、カイルちゃんが刃向かうから、手が痛いなー、アリアちゃん、高いよ?」
ピアス男がアリアに迫る、するとカイルは布に包んだサーベルを手にとり、立ち上がる
「僕に剣を抜かせないで下さい」
場に緊張が走る、男達はそれぞれ手に得物を持つ、がすぐにその緊張は解かれる
「てめーらぁー!!!」
突如現れた少年が、がらの悪い男を、跳び蹴りで吹き飛ばす
「てめー、やりや」と男が何か言う前に、その少年はピアス男の足を払い
みぞうちに、かかと落としをする、残りの男は逃げ出す
「あっ、てめぇ!」
逃げた男は出口近くまで逃げる
「捕まってたま・・・うぁっ!?」
男は逃げ出す一歩手前で、大きな影に遮られる
「けじめはきっちり払いな」
その大きな影は、男を押さえつける、酒場に入った時に話した男だ
「おうレックス、ちゃんと仕留めろよ」
大男はまた酒をあおる
「おっさん、また世話になったな」
「ばっかやろー、ガントおじさまって言え」
カイルは剣をおく
「すいません、助けていただいて」
アリアもお辞儀する
「オレはレックスって名前だ、ここで働いてる、そのおっさんはガント、漁師やってる、まあほとんど酒ばっかだけど」
「わしの出番をとるな」
「僕はカイル・ブレフォード、いまは・・・パン屋です」
「私はアリア・フェルミナ、お、お花やさんです」
「ぐ、ぐるじぃ」
「おっと、マスター縄くれ」
男を縛り上げた後一段落、みんなで座る
「っていうと、カイル達は聖王国からの旅行者で、リトニア観光の道中ってことか」
「はい、そうなんです」
「なあおっさん、リトニア・・・ってまたかよ」
ガントは爆睡している
「まあ、いいや」
アレックスは豆をつまむ
「じゃあそろそろ僕達行こうか」
カイルとアリアは、嘘がばれないか心配でならない、早くこの場所を離れたかった
「なあ、あんた達、嘘ついてるっしょ?」
カイルはいきなり図星をつかれる、なんとか動揺を隠す
「嘘なんてついてないよ」
「じゃあ、なんでパン屋のあんたが聖国騎士団の印の入ったサーベルを持ってるんだ?」
「それは・・・」
「しかも、最近人を斬っただろう?柄に血が拭き残ってるぜ」
カイルはピクン、と震える
「あんたらがもし、とんでもねぇことしたなら、この町で同じ事をしないとも限らない、正直に話してくれねぇか?」
アリアはカイルに頷く
「では、誰にも話さないと約束して下さい」
「場合によるけどな」
カイルはいきさつを話す、自分とアリアの事
帝国と聖国に狙われている事など事細かく説明
「・・・という事で、私達はこの町に来たんです」
アレックスは真剣な顔付きで、腕を組んでいる
「つまりは【愛】ってやつか」
「へ?」
アレックスは腕を組みながらうなづく
「自分の夢を捨て、このこの為、危地に飛び込むとは・・・顔に似合わず、漢だね〜」
アリアは顔い赤くしながら腕をふる
「だだだ、だからこれはそんなんじゃ無くてですね・・・」
カイルは顔を輝かせる
「そう【愛】です!」
アリアはドキッとする
「これは友愛と正義です!」
「うわ、つまんね、そっち系か」
アリアはほっとしたが、どこか残念な気がした気がする
「所でさ、もう少しここに残らないか?」
アレックスが思い掛けぬ提案をだした
「リトニアは首都だ、多分警戒が厳しい、ほとぼりが冷めるまでここにいたほうがいい、それに近い内に祭があるんだぜ!」
「確かに、でも大きな問題が・・・」
カイルとアリアが顔を見合わせる
「私達、お金がないんです」
カイルとアリアはほぼ一文なしで飛び出したのだ、それを聞いたアレックスは思案する
「よし、家に泊まったらどう?」
カイルとアリアは驚く
「いいんですか?」
「いいも何も、一軒だけの宿屋はつぶれちまったしな」
「アレックスさん、ありがとう」
アリアは御礼をする
「可愛い子は大歓迎!」
アレックスは快活に笑う
「じゃ、行こうか」
アレックスは二人を案内する
「ぐがぁぁぁぐっ、んー・・・アレックス?・・・・まあいいか」
ガントはまた眠り始めた
アレックスに連れられ、カイルとアリアは道を歩く
あちこちで、網やボートや浮きがちらほらと見当たる、船置場には貝や魚の生けすがある、
「アレックス、やっぱりここらへんの魚は美味しいの?」
「当たり前だろ?、魚以外にもダホ貝が美味い、炭火焼きか生がお勧めだぜ、俺は一夜干しが1番だけどな」
アレックスは少し歩くと一軒の家の前で止まった
「ここがオレん家、入って」
二人はアレックスの家に入った、中は質素な内装だが綺麗に掃除してある
「母さーん」
「アレックス、叫ばなくても聞こえるって言ってんでしょ」
奥からアレックスの母が出てくる、歳は結構若い
「あら、この方々は?」
「さっき酒場で会ったんだよ、泊まりたいけど宿屋潰れちまったろ?
、泊めてやろうと思ったから連れてきた」
アレックスの母は、アレックスにげんこつする
「いってー、殴んなよ!」
「あんた!会ったばかりなんでしょ?泊めてやるなんて偉そうな事言わない」
「じゃあ駄目なのかよ?」
「そんなこと言って無いでしょ、すいません家の子が」
アレックスの母が頭を下げる
「いえ、アレックスさんには、酒場で怖い男の人達から助けて貰ったんです」
そういうと、アリアはお辞儀する
「なっ?」
調子に乗ったアレックスを母がこずく
「何にせよいらっしゃい、ほらアレックス、お客さんに部屋を案内して」
「わかったってば」
アレックスは母に押されて、二人の荷物を持ち案内する
「部屋狭くてごめんな、今ここしか泊められそうにねーし」
部屋には大きなベットとサイドテーブル
小さなランプが一つ、アレックスは二人の荷物を隅に置く
「じゃあ飯ができるまで待ってて」
アレックスは部屋のドアノブに手をかける
「アレックス、アリアの部屋は?」
「いや、だから部屋さここしか無いって」
アリアは、はっとした、まさか男の子と一緒の部屋?
「でも、私女の子だし・・・」
「大丈夫だって、ベットは大きめだから体はつかないよ」
そんなには、と付け加えアレックスはニヤニヤしながら出て行く
「僕が床に寝るから大丈夫」
カイルはシーツと枕を床に敷き始める
「いや、あのっ、大きめで大丈夫だと思います」
アリアは流石にここまで守って貰って、カイルは床で自分がフカフカベットは酷い気がした
「え?でも男の人にがてなんだよね?」
「あ、あなたとなら寝ても大丈夫です」
たしかに本当の事だが、聞く人が聞く人なら大変な勘違いをしかねない
「そう?、ならいいけど・・・」
カイルはそっち方向には考えなかったらしい
「た、試しに寝てみましょう」
アリアはさっきの言い間違いの恥ずかしさで、頭が茹だっている
「まだ早いし、ご飯もまだ・・・・」
「いいから早く来なさい!」
完全に暴走している、カイルは変な迫力に押される
「は、はい」
二人は微妙ーな空気でベットに入る
「ど、どう?」
「くっついて無いみたいだけど」
二人は背中合わせにベットの中で話し合う長い、沈黙が流れる
変な雰囲気に堪らず、同時に振り向くと、ぶつかりそうなほどに顔が接近する
「あ・・・・」
アリアはカイルの顔を見つめる、カイルは歳の割りに幼い顔付き
整った鼻と大きな目、小動物系といった印象を受ける
「お二方〜、もう飯はできてたから来いってさ」
そこでタイミングよくアレックスが登場
「・・・・・」
カイルはやったご飯だ、と嬉しそうに起き上がり、アリアは真っ赤な顔をし、アレックスは無表情で食卓へ向かう
食卓についた四人は食事を始める
「これ美味しいですね!」
「そうでしょ、和えるソースに秘密があるのよ」
カイルとアレックスの母は結構話しが弾む
アリアはさっきの出来事で頭がいっぱい、刺したジャガ芋を落としたりしてる、アレックスは今だ沈黙
「アリア、なんか変だよ?」
「そんな、事、ない」
「そうならいいけど、言葉がぎくしゃくしてるよ?」
そんな二人の話しを聞いて、アレックスは口を開く
「まだ日暮れ前だと言うのにねぇ」
アリアのジャガ芋が上に飛ぶ
「な・・・・」
カイルの頭にカレー味のジャガ芋が飛来
「うわぁ!」
「アレックス、おっしゃいなさい、何があったのか事細かく」
「はい、母上」
アレックスの母も悪のりする
「あわわわ」
「私、アレックスが少しの間、ほんの少しの間目を離したら、まあ仲のいいこと」
「だって、友達だし・・・変?」
流石カイル、鈍さが存分ににじみ出る
「どんなに仲がよかったのかしら」
「それはもう・・・」
アリアはアレックスの口を塞ぐ、カイルはそんな様子をよそにアレックスの母に尋ねる
「あのすいません、ここらへんで、何か仕事はありますか?」
「仕事かー、酒場ならアレックスで間に合ってるし・・・、剣は使える?」
「あ、はい多少は」
「じゃあ、漁師達の護衛をお願いしたいんけど」
アレックスは身を乗り出す
「それは危険だって、鱗さまの洞窟は魔物だらけだし」
「大丈夫、少し位なら魔法も使えるし」
「まあ、そういうなら仕方ない、危険だぜ?」
「ああ、ありがと」
「アリア、もうジャガ芋飛ばさないでね」
アリアはコクリと頷く
「さっさと食っちゃおうぜ、冷める前に」
四人は晩御飯を平らげる、アリアは何回かさっきの話しを掘り返すアレックスの口に芋を詰める
「あー食った、ていうか食わされた」
アレックスが腹を叩く
「ごちそうさまー」
「おさら、私も洗います」
「いいのよ、私がやっとくから、変わりにアレックスを使うわ」
「え〜面倒臭ぇ」
「あんたが案内したんだから、あんたも増えた分やりなさい」
アレックスの母はアレックスを引きずりこむ
「あ、二人とも風呂に入ってもいいわよ」
そういうと奥に消える
「今日は疲れたし、早めに風呂に入って寝よ」
カイルとアリアは風呂に入った後、寝室に向かう
「疲れたね、壁側とこっち側のどっちがいい?」
「えーと・・・」
カイルはアリアの戸惑いを察知する
「無理はいけないよ、やっぱり僕が床に」
「いえ、外側で」
そういうと、アリアはカイルをベットに押し込め、ランプの光を消してからベットに入る
「あー、眠い、アリアお休み」
「お、お休みなさい」
お休みと言ったが、アリアは緊張して寝れなかった
いつまでもそわそわしている、月明かりはアリアの薄紫の髪を照らす
「アリア、起きてる?」
「はひっ!」
アリアは突然呼ばれて驚く
「あの森で僕は、殺さないといけなかったのかな?」
アリアは家を飛び出した時を思いだす、暗がりから襲って来た兵士を、深く剣で突き刺したのだ
「あれは突然だったから・・・」
「そう、突然だった、でも僕が冷静であったら、正しい対処してたら死ななくてすんだかもしれない」
アリアは何も言えなかった、確かにあの兵士は死んでしまった、危めたのはカイル
だが、襲い掛かるベテランの兵士相手に、騎士に成り立てのカイルが加減して勝てただろうか?
あまつさえ、自分を守る為に立ち向かったカイルに
悪いと言う事は出来ない、誰かが悪いといえば、原因となった私かもしれない
アリアは月明かりの中、カイルの肩に手をかけて励ましたかった、でもどうしても月光と暗闇の間を越える事はできなかった
カモメの鳴き声と朝日にアリアとカイルは目を覚ます
「アリアおはよう!」
「おはよう」
アリアはカイルが落ち込んでなくて安心した
「下にいこう、ご飯が食べられたら大変だ」
二人は急いで食卓へ向かう、食卓ではちょうどご飯が出来ていた
「ちょうどよかった、今呼びに行こうと思ってた」
「みんなそろったみたいだし、たべますか」
四人は、卵にかける物で激しく討論しながら食事を終える
「だから塩に決まってんだろ!」
カイルは紅茶をのみながら言う
「分かってない・・・・何年卵を食べてるんだ?、ソースの塩味、酸味、スパイスがあってこその卵、そう、調和だ」
カイルとアレックスの無駄な討論が続く
「ほら、そろそろ行くよ」
アレックスの母が言うとそこで一旦終了、支度を整えて、船着き場へ向かう
「おう、カイルにアリアじゃねーか、見送りか?」
「いえ、アレックスと一緒に護衛のバイトを」
「何だって?パン屋のカイルが護衛だって?」
カイルとアリアは苦笑い
「実は僕、剣をたしなんでて印章術も使えるんです」
「ほぉー印章術を使えるのか、あいつら鱗が刃を通しやがらねぇから役立つじゃねぇか」
「よし、そうと決まったら乗ろうぜ!」
カイル達は船に乗り込む、じょじょに陸から離れる
「アレックスさん、ちょっと・・・」
「ん?」
アリアはアレックスを船の奥に呼ぶ
「はぁー、綺麗だな」
カイルは海を眺める、今までの出来事とこれからことをゆっくりと考える
カイルはサーベルを取り出した、このサーベルは聖王国騎士団の印しが刻まれている
鞘は純白で鞘の口は細やかな模様が刻まれている、直刀の刀身は切っ先から拳を守るナックルガードまで血で汚れている
「僕は・・・」
途方もない罪悪感が心をおおう
「拭かなきゃ・・・・」
カイルは布で何度も何度も何度も繰り返し拭く
「カイル」
カイルはアレックスに呼ばれ、サーベルを急いで鞘にしまい、血に汚れた布を隠す
「何?アレックス」
「アリアから森の事を聞いたよ、無遠慮に色んな事聞いて悪かった」
アレックスは頭を深く下げる
「いいよ、きにしてないから」
カイルはごまかすが、その沈み様は隠しきれない
「カイル、お前甘くないか?」
「え?」
その言葉にカイルは動揺する、今出るはずもない言葉だった
「帝国と聖王国に本気で狙われて、一人も殺さずにアリアを安全な所まで送り届ける、そんなことできると思ってるのか?」
「だからって!」
カイルの声が大きくなる
「殺しを正当化するなんて言ってないだろ!、お前は覚悟が必要だって言ってるんだ」
「覚悟?」
「ああ、アリアを守り抜く為のな」
カイルはアリアに誓った言葉を思い出す
「最後まで守り抜けば、死んだ兵士だって無駄死にじゃない、これから増えるかも知れない犠牲だって、お前が持つ強い意思、大事な人を守り抜くという信念を通せば十分に見合うはずだ!」
「そうか・・・・」
その話しを聞くと、心にこびりついていた罪悪感がじょじょに剥がれ落ちる
「ありがとう、アレックス」
「もっと褒め讃えろ」
「おーい、もうすぐ鱗様の祠だぞー」
二人は外を見る、だが祠は見当たらない、あるのは大きくな洞窟
「あれ?祠は・・・」
カイルの声とは裏腹に、どんどん中に進む
「鱗様は奥に奉られてるんだよ、途中モンスターがでるから漁師だけでは近寄らないんだ」
そのうち船は波止場に止まる
「おーい、おめぇら青春してねぇで準備しろ」
洞窟の中にガントの声が響く
「こっちはオッケー、おっさんこそ準備は出来てんの?」
「船の方は任せとけぃ!」
ガントは胸をはる
「カイル、お前はオレと一緒に鱗様を取りに行く」
「ガントさんだけで大丈夫?」
「おっさん?大丈夫だよ、素手でマーマン倒せるし」
マーマンとは、固い鱗に身を包んだモンスター、魚に脚がついただけの外見だが、あごの力が異常に強い
「す、凄いね」
「焼いたら旨いつってた」
「怖じけついたか?」
ガントが茶化す
「カイルいくぞ」
「うん」
二人は松明に火をつけて奥に進む
壁面は黒光りしている、角度を変えると様々な方向に鈍く光る
「ところでさ、なんで鱗様って言う名前なの?」
「そりゃー鱗様だからだ」
アレックスが当然のごとく言う
「いや、だから名前の由来は?」
「鱗だからだ」
「う、鱗?」
「綺麗な水晶球の中に青い鱗、それが鱗様だ」
「そのまんまじゃん」
「こら、馬鹿にすんな」
「なんで鱗が偉いの?」
「おっさんの話しでは、水に関わる者を守護する海神様、海が出来た頃から住んでいた水竜らしいぜ」
「確かに凄い鱗だね」
「そう、海の全てを統べ、見通しているんだ、お前とアリアの営みもな!」
「営み?」
「おいおい、しらばっくれるか?そこで」
「しらばっくれるもなにも・・・まず営みって何?」
「お前化石級だな、ガキの面してるだけあるぜ」
アレックスは頭を押さえる
「気にしてるんだからそういう事言うな!」
不意に何かが走ってくる音がする
「何か来た!」
「そうだね」
カイルはサーベルを抜き、アレックスはナイフを手にとる
「カイル、マーマンはあごの下と目が弱点だ、狙っていけ」
「印章術は?」
「巣に遭遇した時まで温存」
二人はじきに現れるであろうその敵に身構える
「カイル〜、アレックス〜」
「アリア?」
暗がりから現れたのはアリアだった
「アリア、モンスターで危険だからだめって言ったじゃないか」
「貴方達が怪我したら誰が手当するの?」
「アリアちゃん、それは確かにそうだけど、俺もカイルもそんなへまはしないぜ」
「で、でもなにもしないで貴方達ばかりにまかせきりはできないし・・・後ろにいるならいいでしょ?」
アリアはじっとカイルを見る
「後ろにいてね、絶対だよ?」
「はいっ!」
アリアは小走りで二人の元に近付く
「・・・真ん中だ」
アレックスはいつにない真剣な表情で言う
「毎回真ん中じゃない?・・・」
「全部真ん中だからな」
アレックスは目を細める、なぜか誇らしげだ
「っていうかなんでこんなに穴があるの?」
「そりゃおめぇ、鱗様を守る為だ」
「こんな単純じゃ意味ないよね・・・」
「単純なんじゃない、真っすぐなんだよ・・・海の男はな」
アレックス、また目を細め遠い目をする
「鱗様って・・・プッ」
アリアの時間差爆撃
「あっ!、いま鱗様の事馬鹿にしただろ」
「い、いえ笑ったわけじゃなくて・・・」
「何か臭わない?」
カイルの言葉にアレックスの顔が一変する
「・・・マーマンだ」
三人は素早く壁に身を寄せる、アレックスが低い姿勢で先を見る
「数は・・・・多いな」
続いてカイルも覗く、青い光りが洞窟全体を照らしている
台座のまわりには大きな泡の塊と、それを守るようにマーマンが多数いる
「アレックス、どうする?」
「カイル、使える印章術は?」
「まだホーリアローしか刻んでないけど、少しは自信があるよ」
アレックスは考え込む、頬に青い光りが写る
「よし、俺は鱗様を取りに行く、カイルは魔法撃ちまくり、取ったらダッシュ、以上」
「それだけ?」
「1番安全な方法だ」
「アレックスさん1番危険よ」
「舐めんなよ?俺の《隼の印章》を!」
アレックスの腕が光る
「カイル!」
カイルは飛び出しホーリアローを放つ、がカイルは驚愕する
「えっ?」
アレックスはカイルの放ったホーリーアローより先に、マーマンのあごを蹴りあげ、上に打ち上げる
あらわになったマーマンの柔らかい腹に、光の矢がのめり込む
「ギシャー」
マーマンは転がり、のたうちまわる
「危ない!」
アリアの声が一つ先に危険を知らせる、横からカイル目掛けてマーマンが噛み付こうとする
「うわっ」
飛びのき避ける、マーマンは再び噛み付こうとする
大きく開けた口にホーリーアローを撃ち込む
「みんな、鱗様は手に入れた、逃げるぞ!」
アレックスの掛け声と共に、三人は殺意に満ちた大空洞から走り出す
「アリア、松明ちょうだい」
アリアは後ろから呼びかけるカイルに松明を手渡し、先頭をゆずる
三人は力の限り走り続ける、尾を引く松明は、カイル達と共に暗闇を切り開いていく
「ふぅ、まいたかな・・・」
カイル達は最初の分かれ道当たりで一息つく
「ここまでくれば縄張り外、おってこねぇと思うぜ」
アレックスは額の汗を拭い、ナイフをしまう
「み、皆さん体力が・・・ありますね」
アリアは息をするだけで精一杯なようだ
「ははっ、アリアは運動不足だな?」
「アレックスさんってなんでそんなにからかうのかしらっ!」
カイルは二人のやりとりを見ていた、その時アリアの背後でなにかが動く
「アリアー!」
カイルはすんでの所でアリアを突き飛ばす、アリアは持っていた松明を手放す
「このっ!!」
至近距離から直接光の矢を頭に撃つ、マーマンは声を上げるまもなく絶命する
「はぁはぁはぁ・・・怪我は・・・・無い?」
「ありがとう、あなたも・・・」
座り込んだアリアの顔に生温い物がかかる
「カイル?」
アリアは立ち上がり、カイルの体を触る
「ア、アレックス!」
アレックスは異変に気付き、床の松明を手に駆け付ける
「カイル、その傷!」
カイルは左肩から腕まで深い傷がついている
まるでのこぎりで斬られた様にズタズタになっている
「大丈夫」
「そんなわけ無い!」
先に進もうとするカイルを引きとめると、あっけなくアリアの方向に倒れ込む
「包帯、包帯は・・・・」
アリアは包帯をバックから取り出す、とめどなく流れる血を必死でとめようと巻き付ける
「ダメ、血が・・・・止まらない」
アリアは傷口を手で押さえるが依然、止まらない
「アリア、足音が近いて来てる」
アレックスは松明を壁に立て掛け、ナイフを構える
「アリア、逃げるんだ」
カイルが精一杯、強い口調で言い放つ
「それは駄目、絶対に駄目」
「みんな死ぬ訳にはいかないだろ!」
分かれ道と祭壇方向からマーマンが多数現れる、アレックスが印章を発動する
「いえ、誰も死なせないわ」
アリアは血に染まった手を胸に当てる
「アリア、来るぞ!」
暗がりから、鈍く光る鱗が覗く
「お願い・・・・カイルを・・・・・カイルを助けて!!」
叫び声が響く、アリアの胸元から温かい光りがあふれだし、暗闇を打ち消す
「これは・・・」
アリアの放つ光はカイルの傷を柔らかに包み、治してゆく
「キシュー・・・」
洞窟を埋め尽くしていたモンスターは、静かにさっていく
「アリア、今の光はなんだ」
呆然とするアレックスが尋ねる
「わからない・・・でもお母さんに、本当に危なくなったらお祈りしなさいって」
「カイルは?早く手当てしようぜ」
アレックスはカイルに目を向ける、肩から腕にかけての大きな傷は無くなり、服の裂け目から肌が見える
「傷が治ってる!」
声で目を覚ましたカイルがアリアの膝から体を起こす
「アリアはすごいなぁ・・・・皆を一人で助けるなんて」
「そんな、私なんて」
「アリア、君は本当に・・・・」
言葉が途切れ、ふらりと崩れる
「カイル、カイル!」
アリアは激しく体を揺する
「こりゃやべぇ」
二人は急いでカイルを運ぶ
ろうそくが放つオレンジの光りが、淡く部屋を照らす
回りの暗さに目をこらすと窓が開け放たれ、星が顔を覗かせる
「ここは・・・」
静かにドアが開けられる
「目は覚めましたか?」
アリアはカイルに歩みより一杯の水を手渡す、カイルはそれを飲み干す
「ぷはー、水ってこんなに美味しいかったんだー」
「よっぽど喉が渇いていたのね」
アリアは控え目に笑う
「アレックスは?」
「酒場のお手伝いですって、稼ぎ時だからかりだされちゃったみたい」
「アレックスも大変だね」
「本当に」
二人は微笑み合う
「今こうして笑っていられるのもアリアが助けてくれたからなんだよね」
アリアは首を横に振る
「ううん、あなたが身をていして守ってくれたから私が今ここにいる」
「そっか・・・」
カイルは少し考える、そしてベットから飛び出す
「アリア、行こ!」
「でもまだ・・・・」
「せっかくなんだし行かなきゃ損だよ」
カイルはアリアの手を引き、家の外に出る
外では人々でごった返していた、昼とは打って変わり、すごい賑わいである
「手、放さないで」
カイルはアリアの手を強く握り人込みを掻き分ける
右に左に強い力で押される、アリアはカイルに負けない位に握り返す
人込みを避けるため、カイルはアレックスが働いているだろう場所を探す
そのうち開けた場所でそれらしき場所を見つける
「やっと見つけた」
二人は開いている席に腰掛ける
「アレックスさんがここで給仕をやってるっていったけど・・・」
「カップル一組様ご来店〜」
後ろから能天気な声がする
「アレックス!」
「カ、カップルなんて茶化さないで」
アリアは顔を少し赤くして怒る
「顔が赤いな〜」
アリアは顔をそらす
「アレックス、この村にこんなに人いたっけ?」
「ああ、今日は慰魂祭なんだ」
「慰魂祭って何?」
「詳しくは説明してなかったな、慰魂祭って言うのは、海で死んだ漁師達の魂を鱗様に頼んで慰めて貰う為の祭なんだ」
「だから鱗様を・・・」
「まあな」
アレックスと話が進む中、人が減っている事に気付く
「アレックス、人減ってない?」
「ああ、もうこんな時間か、この祭の最後は歌で締め括られるんだ」
「歌?」
「俺は嫌いなんだけどな、死者達を鎮める為に海神さまの歌を歌うんだけど、湿っぽくなるから嫌なんだ、オレの母さんもメンバーに入ってる」
アリアは何か考える
「その歌って私も歌っていい?」
「いいんじゃね?、広場に俺の母さんいるから掛け合ってみ」
「ありがとう、カイル来て」
アリアはカイルを引っ張って広場まで急ぐ、すでに観客が集まりつつあった
「カイル、待っててね」
「アリア?」
アリアはアレックスの母に駆け寄る、二人は少しの間話したあと、アリアはその列の1番目立たない場所に列ぶ
「あのアリアが皆の前で・・・」
カイルはアリアの変わりように驚く
「カイル、私の歌を聞いてね」
列び終えると辺りが静まる、歌が始まるとカイルは綺麗な歌声に息を飲む
「これは・・・」
アリアは満月を背に透き通るような歌声で歌う、あの森で死んだ兵士に、一人、安らぎを願いつつ
ね?痛かったでしょ? これをダチに読んでもらってるんだけど、感想欲しい一面、かなり恥ずかしいのでもろ刃な感じです、ていうかアレックスのキャラは大丈夫かな・・・・では、出来れば 次話でまたお会いしましょう・・・・ゼロ使よみてぇ




