8 コルネリオからのお誘い
サンドラとコルネリオが、孤児院を訪問した時には、まだビアータからの手紙は届いていなかったが、サンドラは、『大丈夫ですよ!』と請け負っていた。
数日後に届いたビアータからの手紙も、受け入れ可能という返事だった。
夏休みの前日、ビアータの元執事ルーデジオが馬車で王都に来て、院長先生のご厚意で孤児院に泊まり、翌朝、女の子二人を連れて、学園にサンドラを迎えにきた。箱型の馬車だ。
「ルーさん、わざわざごめんなさいね。助かったわ」
サンドラは、気さくに声をかけた。ルーデジオはビアータの元専属執事で、今はビアータにとって相談役という名のなんでも屋である。それは、サンドラにとっても同じで、頼れるお兄ちゃんであった。
「いえいえ、そんなことご遠慮なく申してくださいませ。わたくしは執事なのですから。フホホホ」
執事時代からのクセは抜けず、少し固い口調は、しかたがないのだ。
「もう、それは昔の話でしょう!それにしても、この馬車で迎えに来てくれるとは思わなかったわ」
サンドラは、幌馬車を想像していた。
「女性をお迎えに来るのに幌馬車というわけには参りませんよ。どうぞ、お乗りください」
ルーデジオがエスコートの手付きでサンドラを馬車に乗せた。
「手紙にも書いたのだけれど、彼がコルネリオよ。道の途中のノリニティ伯爵州ファーゴ子爵領へ寄ってください」
サンドラがにっこりとお願いした。
「お世話になります。よろしくお願いします」
コルネリオは、丁寧に頭を下げた。
「はい!承っておりますよ。コルネリオ様、サンドラ様がお世話になっております。このようなことでしかお返しできませんが、ご了承くださいませ」
「え?え?え?そ、そんな、世話になってるのは僕の方なんで。今回もついでとはいえ、すみません」
ルーデジオの固い口調をまともに受け取ったコルネリオは、しどろもどろだった。
「そのお気持ちだけ受け取っておきます。どうぞ、お乗りください。早速出発いたします」
見送りも誰もいないので、とっとと出発する。
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宿をとりながら、3日後夕方には、コルネリオの家に着いた。
コルネリオの好意で、ファーゴ子爵邸に、宿を一晩借りることになった。女の子たちは貴族の家に泊まるのは初めてでとても緊張していたので、領主ご夫婦に挨拶をするのは、サンドラとルーデジオだけにした。女の子二人はサンドラと同じ部屋を使うことにして、先に部屋へと入らせた。
サンドラが挨拶をすると、ファーゴ子爵夫人はとても喜んでくれた。サンドラとしては、面映い。もちろん、ルーデジオは、きっちりとした挨拶をした。
ルーデジオは、使用人部屋へと願い出たが、領主ご夫婦の好意をあまり固辞するのも変なので、低頭で客室を使わせて貰った。
食事は、コルネリオが、ワンプレートにしてくれるように料理人へ頼んだ。そして、コルネリオとルーデジオの分も含めて、サンドラの部屋に用意してもらった。
「コル、ありがとう!この子たちのこと、考えてくれたのね。とってもありがたいわ!」
「そうでございますね。なかなかここまで気を回すのは大変でございます。お優しいお人柄がわかりますね」
サンドラの礼はともかく、ルーデジオに褒められたことは、コルネリオにとって、少し気恥ずかしかった。
女の子たちは、何が貴族のルールなのかわからないので、『キョトン』としている。ただ、ここの食事がとても豪華で美味しいことは、よくわかった。
「「美味しい!!お兄ちゃん、ありがとう!」」
女の子たちにとって、コルネリオは、孤児院では、何度か見たことのあるし、馬車の中では、勉強もよくみてくれたし、この4日間とても優しいお兄ちゃんであった。
4男末っ子のコルネリオは、『お兄ちゃん』と女の子たちに言われて、とても照れまくっていた。サンドラは、そんなコルネリオが可笑しくて、可愛らしくて、ついつい笑ってしまうのだった。
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その夜、女の子たちを大きなベッドで休ませた後、コルネリオはサンドラを中庭に誘った。夏でも、夜になれば風が気持ちよく、東屋で果実水を飲みながら話が弾む。二人でいると、植物の話が自然に多くなる。二人とも、学園に残した植物たちが気になるのだ。
「温室仲間に頼んで来たけど、長く空けるのは申し訳ないから、8月末には戻る予定よ」
夏休みは、9月の中旬までである。
「その頃には、僕もここに戻ってきているよ。帰りも、一緒だと嬉しいな」
「ええ、日にちが決まったら、手紙を書くわね」
「ああ、頼むよ。本当は、ビアータのところに一緒に行きたいんだけど、父上母上と旅行というか、三番目の兄の結婚式に行かなくちゃならなくて。とっても、残念だよ」
「何をいうの。お祝いならステキじゃないの。コルは、兄弟と仲がいいのね」
「そうかな?僕は、義姉上にお会いするのは、初めてなんだ。兄上は、同州の男爵家に婿養子に行かれるんだよ。学園で好きになった女性が、たまたま同州の一人娘だったんだって。奇跡みたいだよね」
嘘のような本当の話に、コルネリオは苦笑いだ。それに対して、サンドラは、目をキラキラさせた。
「まあ!奇跡みたいなんて、ステキな縁じゃないの。何かが繋がっていたのよ、きっと」
「へえ、サンドラってそういう見えない物を信じるタイプだったんだね。かわいいな」
サンドラの意外な一面に、コルネリオは優しい笑みを浮かべた。
「なっ!!そ、そんなっ!もう、寝るわっ!おやすみなさいっ!」
サンドラは、『かわいい』と一言言われただけで、顔を赤くして席をたってしまった。
「サンドラ!サンドラ!ごめんね!おやすみ!」
コルネリオは、怒られたと思い、サンドラを追いかける勇気はなかった。
男の子に『かわいいな』などと言われたことのないサンドラはただ照れて、どう反応していいかわからなかっただけなのだ。
追いかけて、優しく『ごめんね』と言えば済むことでも、コルネリオには難問に思えるほど、コルネリオもまた、女の子を褒めなれていなかった。コルネリオは美男子なのに、女の子に全く免疫がなかった。
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翌朝、朝食を食べ終わるとすぐに出立だ。
「「ファーゴ子爵様、ごちそうさまでした。美味しいご飯も、フカフカのお布団もありがとうございました」」
女の子たちは、元気に挨拶をした。
「まあまあまあ!やっぱり、女の子はかわいいわねぇ。はあ、コルネリオが女の子ならよかったのに」
コルネリオは、男4兄弟の末っ子だ。
「母上、やめてくださいよ」
コルネリオは小さい頃からそれを言われているので、本当に嫌そうだ。
「お前が、生まれる前から言ってることだ。あきらめるんだな。ハッハッハ」
ファーゴ子爵様が笑うので、みんなも緊張がほぐれて、笑ってしまった。
「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
「サンドラちゃん、気にしなくていいのよ。帰りも寄ってくれるのでしょう?その時には、お茶でもしましょうね。おチビちゃんたちも、お勉強がんばるのよ」
「「はーい!」」
二人は元気に手をあげた。
「はい、またコルネリオさんに連絡いたしますので、その時にはよろしくお願いします」
サンドラはきちんと頭を下げた。
「それでは、失礼いたします」
もちろん、ルーデジオも。
サンドラたちは、再び『ビアータの家』へ向けて出発だ。
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無理をすれば、1日で着くのだが、町で買い物もしていくことにして、2日かけて行くことにした。1番近くの町で、たくさんのパンと小麦粉を買って、ジャムなども買い揃える。ルーデジオの指示で買い物していき、たくさんの品物とともに『ビアータの家』に着いたのは、昼過ぎであった。
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