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22 猟

 今年になり、子供たちも10人も増えた。さらにルケッティ子爵領からの子供たち5人は残る予定だ。

年長者のジャンたちは17歳になっていた。


「アル、森があるだろう。恵みの森が」


 今までは、人数も少なく、子供たちも小さかったので、森では木の実やキノコ、山菜を取りにいくだけだった。それも、南にある小さな森だけだ。先日、木こり小屋とレンガ小屋を立てた方の東の大きな森には、入ったことはなかった。レンガ組は、ブリ川の支流が近くを流れているいて、そこを利用しているので、森の奥には入らない。


 冒険者たちはその森に出入りしているが、『ビアータの家』ほど南にまで来ることはほとんどない。それは森が潤っていて、関所近くで充分に稼げるからだ。

 デルフィーノは、ここに来る前、関所で話を聞いていて、東の森が良い狩場であることを知っていた。


「でも、急に狩りなんて無理だろう?」


 アルフレードがそう考えるのは当然だ。剣であれ、弓であれ、練習なしでできるわけがない。


「今なら、お前と俺と、木こりのチェーザがいる」


「弓ならわたくしも嗜んでおります」


「そりゃ、いい!それなら尚更、保存肉用だけでいいじゃないか。アル、今回は狩りは見せるだけでいい。ルーさん、しばらくは持つかい?」


 狩りに人を使った挙げ句、畑や家畜での食料が足らず金が尽きたでは、本末転倒である。子どもたちにはまだできないことなので、それを考えなければならない。


「ええ、まだ蓄えはございますよ。それに、その皮を売りに行けば、足りない分の小麦も買えるでしょう。ホホホホ」


「ハハハ、父さん、手ぶらでは帰ってこれないよ」


 アルフレードとルーデジオが、デルフィーノに笑顔でプレッシャーをかけた。


「だな。子供たちには、狩りの必要性を見せて、ルーさんに、弓の指導をしてもらえばよさそうだな。もし、家畜が病気で全滅にでもなったら、狩りは命綱だ。豚が食えるようになっても、定期的に狩りはした方がいい」


「ルーデジオ、指導はお願いできる?あと、弓はいくつ用意できるかしら?」


 ビアータは、話を聞いて、実践することを決めた。


「ビアータ、弓は用意してきた。大丈夫だ」


 デルフィーノの木箱は、宝箱のようだ。なんでも出てきてしまうことに、ビアータもみんなも驚く。

 ここまで、木こりの斤も、レンガ職人の木枠も、大工道具も、調理道具も、釣り竿や背負い籠、子どもたちの勉強道具まで、ありとあらゆる物が出てきていた。


「父さん!あの手紙でここまで用意してくれたなんて!ありがとう!本当に感謝しているよ」


 みんなは、アルフレードからの手紙がきっかけだということに納得したが、それでも、デルフィーノの先見はすごい。


「はい!お義父さんがいなかったら、きっと、どこかで詰まってしまったわ。ありがとうございます!」


「本当でございますねぇ。ルケッティ子爵様のご考察と行動力には、頭が、下がります。わたくしも、ここをやると決めた時点で、勉強が足りておりませんでしたね」


 ルーデジオは、なかなかの博識でここでも万事に活躍しているのだが、そのルーデジオでさえ、デルフィーノには感心が止まらない。


「なぁに!こんなこと、始めようなんてする方がずっと偉いさっ!それを手伝えるなんて、楽しくてしょうがねぇ!ハッハッハァ!」


 デルフィーノは本当に楽しそうに笑った。


「それにな、半分は母さんの意見だ。塩だの布団だのは、さすがに俺では気が付かない」


「わかったよ!母さんにお礼の手紙を書くね」


「アル、私も、お義母様に書きたいわ」


「おお、かわいい嫁からの手紙なんて、母さん喜ぶぞ、わっはっは!」


 デルフィーノはすでに嬉しそうだった。


 狩り組は、先日の牛の解体の様子を鑑みて、ジャンとウルバとデジリオになった。デジリオは、ジャンたちより1つ下の男の子だ。ウルバの代わりに大工組に二人の男の子に行ってもらうことになった。


〰️ 〰️


 狩り当日、天気はよく、朝日の出とともに狩り組とコルネリオが幌馬車で出立した。


「コル!明日は俺だぞ!」


 ファブリノもコルネリオも行きたがったが、どう話し合ったのかわからないが、今日はコルネリオが行くことになったようだ。


 狩りは3日ほど予定している。


 森の右手には、山小屋が2軒、木こり組とレンガ組の作業場用に作ったものだ。

 この森は、時々、中の人や冒険者が利用しており、凶暴な野生動物が多く確認されている。ガレアッド男爵領の関所と防衛壁は、この森のためだと言える。壁ができる以前は、ガレアッド男爵領で、熊に襲われたり、猪に突撃されて死んでしまう者までいたのだ。


 レンガ組が使っているブリ川の支流の水場から、森に入るとすぐにキノコや薬草は見つかったが、動物らしい物は見つからない。 


 川沿いを幌馬車で行けるところまで進む。川岸の幅が狭くなったので、幌馬車を降りて、歩くことになった。弓を持たない若者たちは、籠を背負う。


 ある程度奥に入ってから、デルフィーノは、川沿いの地面をジッと見ながら歩く。


「これはうさぎだな。こっちはシカだ。かなりデカイのもいるぞ。しばらくその茂みに潜もう」


 どうやら動物が多く出没する水場に来たようだ。デルフィーノの指示で潜みに行く。が、隠れる間もなく、100メートル先にうさぎが現れた。


「アル、久々だろう。やってみろ」


 アルフレードが、弓を引く。『パッ』放った矢は、うさぎの足に当たった。


「うわぁ、腕が落ちてるよ」


 アルフレードは、苦笑いして肩を落とした。


「ハッハッハ、久しぶりなのに当たっただけすごいさ」


 確かに、アルフレードは、学園に入学するため北の領地を出てから初めての弓だ。

 木こりのチェーザが逃げられないうさぎの耳を持って戻ってきた。


「よし、血抜きと内臓処理をしよう」


「お、俺にやらせてください!」


 チェーザの指導で、ウルバがうさぎの頸動脈をナイフで深く刺す。


 アルフレードが、うさぎの首を持って腹を上にして何度か腕から足に扱く。そして、自分の膝に置いたと思ったら、うさぎにすごい圧力をかけた。すると、うさぎの肛門から内臓が飛び出た。さすがに、それをみたコルネリオとデジリオは顔を背ける。


「これをやっとくとやっとかないでは、肉の旨さが違うからな」


 内臓処理の必要性は、牛の時に習ったが、さすがにこのやり方は、一朝一夕にはできないし、見慣れない。


 それから川沿いに、鳥やうさぎが現れて、全部で20匹ほど取れた。ジャン、コルネリオ、デジリオも血抜きを体験した。一度やれば、どうにかなるもので、慣れるためにと4人は、率先して獲物に触った。だが、内臓抜きは、コツがあるらしく、ジャンとウルバがチャレンジしたがうまくはいかなかった。




「そろそろ血の匂いで来るぞ。潜め」


 デルフィーノの指示で、みんなが、茂みに隠れる。川の近くには、先程仕留めたけど、血抜きをしなかったうさぎと、先程までのうさぎの内臓が置かれていた。

 しばらく待っていると現れたのは、熊だった。四足なのでわからないが、アルフレードよりは少し小さいだろうか?


「いくぞ!目だ、いいな」

 

 アルフレードとルーデジオが弓を引き、デルフィーノとチェーザは槍を構える。アルフレードとルーデジオの弓が、熊の顔にヒットした、熊はしばらくのたうち回っていたが、茂みから、飛び出て走るデルフィーノたちに気が付き、二人に向かって走ってきた。デルフィーノたちは止まって迎える。アルフレードもデルフィーノたちに追いついた。熊は直前で立ち上がって、こちらを威嚇した。四足の時は小さく見えたが、立ち上がるとデルフィーノほど大きかった。

 しかし、立ち上がった今こそ、チャンスだっ!アルフレードが熊の口に向かって槍を放った。デルフィーノとチェーザは、心臓あたりを狙った。3本は見事に致命傷となり、熊狩りは、大成功だった。


 ジャンとウルバは、早速その場へ走ったが、コルネリオとデジリオはしばらく茂みから出られず、ジッと見ていた。ルーデジオが側にいるので、心配はないだろう。熊も血抜きをする。



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