● 第6話ー狂王ルドウェル
王国に潜入したスーリが探りを入れていた頃…。
一方レティシア王国では…。
「さて、探りを入れますか。」
レティシア王国王城レティス城…。首都レティスにそびえ立つ白亜の城の一室で青髪青目の14~15歳位のメイドの少女が気合いを入れるかのように腰まである長髪をポニーテールに纏めていた。
彼女、いや彼?どちらでもある少女の名前はスミア=リーン。この城の副メイド長にして魔王レーナの四天王、スーリの仮の姿である。
ちなみにこの城には至る所にスミア、いやスーリの分身体が調度品に化けて潜んでいる。
「う~ん…。とりあえず玉座の間か軍議の間に行くかな?あそこには分身体を仕込めてないんですよね…。」
この二ヶ所だけは魔術的は防御が強く、スキルによる変化も、本体ならば兎も角分身体では解けてしまうため潜入出来ずにいたのである。
スーリが行動をおこそうとしていたその頃、軍議の間では…。
サラリとした青髪に狡猾そうな緑目をした青年と炎を思わせる赤い髪に強い意思を感じさせる鋭い金色の目をした青年が座していた。
軍議の間は大きな円卓とイスが十三脚ある以外には特に何もないシンプルな部屋で、中での会話が決して漏れることの無いように結界等で守られた部屋である。
その部屋のテーブルの上座とその横に座る彼がただ人では無い事が容易に想像が出来る。
青髪の青年はレイン=フォン=アッシュフォード。アッシュフォード侯爵家の長男で僅か二十歳という若さで参謀にまで成り上がったの天才である。
そしてもう一人がルドウェル=フォン=レティシア。僅か二十歳で国王となった男である。
ちなみにこのテーブルに着く事が許されているのは国王とこの国の十二人の軍団長で、国王であるルドウェルを除き星天十二将と呼ばれている。
炎天将 フレア=フォン=エンフィルド
水天将 アクア=フォン=クリスタ
地天将 ルーカス=フォン=ガイア
風天将 シルフィ=フォン=ウィンディーネ
樹天将 アウラ=フォン=フォレスター
金天将 グラス=フォン=スラスト
魔天将 フィーラ=フォン=アレイスター
力天将 フェイン=フォン=スカーレット
影天将 シェイド=フォン=クライスター
死天将 カミラ=フォン=エーデルヴァイン
幻天将 ライト=フォン=ミラージュ
智天将 レイン=フォン=アッシュフォード
彼らないし彼女らは一人一人が一騎当千の強者である。
今は智天将レインを除きここにはいない。
「さて、レインよ。作戦は上手くいっているか?」
「はい。金天将グラスと力天将フェインがクリスティア砦を無事に越えたと連絡がありました。」
レインはニヤリと笑っていた。
「そうか…。あの二人は魔力をほとんど持っていない故に探知にも引っ掛からずにすむ…。か。お前の作戦通りだな。良くやった。」
「ありがたき御言葉…。」
「この作戦が上手くいけばあの女に王手も掛けられよう…。レイン、お前の作戦に期待している。次の動きがあるまで休むが良い。」
「はっ!」
レインが退室した後もルドウェルはそこで物思いに更けていた。
ー 戦場で会ったあの時からの一目惚れだった。
美しい銀髪に宝石の様な濃藍の瞳。そして圧倒的な魔力…。女神だと言われても私は納得するだろう。
父…。先王は心臓さえ手に入れればそれで良かったらしいが私はそれでは満足しない。
あの女を手に入れ我が物としたい。あの女をひれ伏させその全てを蹂躙したい。だからこそ私は父を殺し王座を簒奪したのだ。全てはあの女を…。魔王レーナを我が物とするために…。例えどんな手を使っても必ず手に入れてみせよう ー
ルドウェルは今日もその日を夢見る。
その為に幾人の民が犠牲になろうとも何も感じない。
正に彼は『狂王』である。
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