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3.最初の夜会

 お嬢様との入れ替わりそもそもの始まりは、王家主催の夜会が初めてのことでした。


 伯爵夫妻とお嬢様による参加のため、私は先に奥様の準備をしていました。奥様のドレスはシックな紺を基調として控えめに白と黒の刺繍を入れたドレスです。派手さありませんが、プラチナブロンドの奥様の髪が映えて、とても麗しいのです。準備していた私までうっとりです。ドレスに合わせて、宝飾を選んでいると、ドアがノックされ、お嬢様がしゅんとした顔で入ってきました。


「ドレスが入らないわ。」

「「え!?」」


 その言葉に奥様と二人でびっくりです。卒業パーティで着ていたドレスを刺繍でアレンジしていたのです。この日の為に、ドレスの中を小鳥が飛び回るというちょっと、チャレンジしたアレンジです。


「ど、どうやら、太ったみたい......。胸が厳しいのよ。」

「参加、見送るしかないわね。」


 まだ、成長期とは恐るべし、お嬢様。

 がっくりとしている奥様と私を他所に、お嬢様が何かを考え、ちょっと来なさいと私を引きずり、お嬢様の部屋に連れて行かれました。本来、お嬢さまの御胸を凹ますべきでしょう!いや、お嬢様ががっくりと肩を落とすべきでしょう。と突っ込みいれたいのをどうにか我慢したのです。私、偉い!


「ちょ、ちょっとお嬢様?」

「これ、ちょっと着て見せて、急いで!」

「は、はい。」

「うん、ちょうどいいわね。」


 確かにぴったりではありましたけど、何故にお嬢様が着る予定のドレスを私が今着ているのでしょうか。そして、直ぐに脱がされ、湯浴みよと言われ、汗や化粧を洗い流され、髪を結われて、あれよあれよという間に、鏡台の前に座らされていました。

 お嬢様、私より侍女ですか!と突っ込みたくなる程の手際のよさ。


「じゃ、化粧をして、特に目元と口元ね。」

「え? え?」

「動いたら駄目よ。」


 あっと言う間にお嬢様の出来上がり。いやいや、確かに似てはいますが、バレますって。


「いけるんじゃない? お母様にみてもらいましょう。」



 唖然としている私を他所に、お嬢様もいつの間にか、私の侍女の服に着替えているし。


「お嬢様の準備が出来ました。後は宝飾品だけです。いかがでしょう。」

「あら? 何をやっていたのかと思えば......。」


 奥様を頭に手を当てて、流石に呆れておりますよ。そこに、伯爵様も準備が整えてきたのです。


「おぉ、綺麗だね。シャリー。」

「あなた?」

「エルザも綺麗だよ。さ、二人とも行こうか? おや? シャリー!? もしかしてアリーリアかい? そうすると、侍女のアリーリアがシャリーか?」

「お父様も見間違えるなんて、これならいけそうね。」


 伯爵様もどうなっているんだと奥様に尋ねていますが、肩を竦めるばかり。


「今日の夜会に公爵令嬢のミーシャ様とミモザ様がいらっしゃるでしょう? ミモザ様がこのドレスを楽しみにしていて。」

「でも、流石に入れ替わりは不味いだろう。面白いけどな。くくっ。」

「そうね。うふっ。」

「でしょ。ふふっ。」


 いやいやいや、そこはお休みでよいでしょう。体調崩したとか、なんとかで! 私は最後に頭を抱えたまま、手を引かれ、いつの間にやら馬車に乗せられていました。


「行ってらっしゃいませ。」とお嬢様が侍女服でにこやかに微笑みながらお見送りです。お嬢様、大満足的なお顔なのですか? そこは、残念というお顔でしょうに......。


 馬車の中では伯爵夫妻と三人で居心地が何とも言えず、言葉がでずに下を向いていたのです。胃がキリキリと辛いです、ハイ。


「シャリーがすまないね。今日はフォローするから、楽しみなさい。」

「私にお嬢様の代わりなんてできるでしょうか?」


 怖い。失敗したら、何か間違ったことを言ってしまったらと。夜会なんて出たこともないし、貴族として振る舞ったことなんてない。もしかすると、後でお嬢様に迷惑を掛けてしまうと考えると、憂鬱にもなります。


「大丈夫よ。私が付いているから、安心しなさい。今から貴方がシャリーよ。私達のことは、お母様とお父様と呼んでね。」


 奥様が横で優しく諭してくれて、頭を撫でてくれていた。不思議と気持ちが落ち着き、久しぶりの親の温もりに触れた気がした。本当にご主人様と夫人は優しい。伯爵家で働けて本当に私は幸せものだ。


「ありがとうございます。お、お母様。お父様。今日は宜しくお願いします。」

「うん。なんか娘が二人になった気がして嬉しいね。」


 そうこうしていると、夜会の会場に馬車が着き、会場に入った。会場は昼間かと思えるくらいに眩しく輝いており、色とりどりの花が咲いていました。

 今日の私の目的は、ミーシャ様とエルザ様にこのドレスを見てもらうこと。それさえ、バレずに過ごせれば私は隅によって大人しくしていれば良いと自分に言い聞かせて会場に足を踏み入れました。


 暫くは伯爵夫妻と挨拶周りで一緒に行動していました。その内音楽が会場内を包み込み、会場の中央でドレスが華やかに舞い踊り始めたのです。見ているだけで、キラキラとした夢の世界がそこに広がり、見とれている内に伯爵夫妻と逸れていたのです。


 折角だし、普段食べれない食事をしながら伯爵夫妻を探そうと、軽食をモグモグとし、飲み物を飲みながら辺りを見渡していました。美味しい料理ぐらいはと手を出してしまうのは許して欲しいと思いつつ、モシャモシャと。


「こんばんわ。お久しぶりですね。」

「学園卒業以来ですわね。ご無沙汰しております。エリオ様。」


 思わず、食べていたものを一気にゴクリと飲み込み、ふと横を見ると、エリオ様が立っていて、驚くものの表情は頑張って変えずに答えを返したことに我ながらよくやったと自画自賛していました。


「覚えていてくれて嬉しいよ。」

「もちろんですわ。あれから、まだ半年ですよ。」

「まぁ、確かにそうだね。卒業パーティ以来だし、踊りでも一曲どう?」


 エリオ様が片手を前に出し、その手を取って、踊りの場に向かった。ここで侯爵子息のお誘いを断れば、お嬢様の立場も悪くなるかもしれません。丁度三曲目が始まったところ。お嬢様の特訓とエリオ様のリードもあり、何とか踊れていることに安堵です。


「以前よりも、上手になったね。」

「あの時以来、踊っていませんよ? エリオ様のリードがお上手なのです。」

「私もあれ以来ですね。」

「ご冗談を。多くの可憐な花々がエリオ様を放って置かないでしょうに。ふふっ。」

「私の横で咲いて欲しい花は貴女だけですよ。」

「え!? お世辞でも嬉しいです。」


 驚き過ぎて、思わず世辞であることも忘れてしまい、うっとりと甘い言葉に酔いしれるところでした。しかも、エリオ様の笑顔は破壊力抜群なのだから、たまったものではない。

 これは、お嬢様にも報告すれば喜ぶかもしれないと思いつつ、こちらもにこやかに微笑み返したのです。


「やはり、貴女の笑顔はいつ見ても、心惹かれます。」

「ふふっ、エリオ様の笑顔につられてしまったようです。」


 踊りも身を委ねて踊り、甘い言葉を囁かれ、時間が過ぎるのも忘れ、二曲も踊っていました。周囲の令嬢の目がギラギラと光っていることなど、全く視界に入らぬ程に。


「今日はご一緒に踊ることが出来て、とても楽しい一時でしたわ。」

「こちらこそ、可憐な花の甘い誘いに二曲も踊っていることに気付きませんでした。疲れていませんか?」

「えぇ、大丈夫です。父と母を探していたことも忘れていました。」

「伯爵夫妻なら、あそこにいらっしゃいますね。ご一緒に行きましょう。」



 手を繋ぎエスコートされながら、夫妻のところまで行くと、二人ともニコニコしながら、「楽しめたようだね。」と声を掛けてくれました。


「チャンジャー伯爵、お嬢様を少々踊りに誘わせて頂きました。」

「エリオ君か。娘を踊りに誘ってくれて嬉しいよ。エリオ君も久しぶりの夜会かい?」

「えぇ、仕事が忙しくて、なかなか夜会までは。」


「そうなのですか? お久しぶりの夜会で、二曲もご一緒しては、お疲れになったのではありませんか?」

「大丈夫ですよ。仕事の疲れも貴女の笑顔で癒されましたから。」

「優しいのですね。エリオ様は。」


 そうして、会話を楽しみ、代理の夜会はつつがなく、終わりました。私にとってもとても楽しめたので良かったし、お嬢様とエリオ様の距離も近づくお役に立てたのではないかと思いました。

 お二人がお似合いだなと学園の時から思っていたので、二人が婚約でもしたら、私も嬉しい限りだと考えていたのです。


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