5 雷の王子様
「お金、どうしよう……。お金を払わないで持って行ったら捕まっちゃうし……」
グラスは頭を絞りますが、なかなか良いアイデアが浮かびません。そんな時、誰かがお店にやって来ました。
わざと大きいパーカーを着ていますが、あの少し長い金髪には覚えがあります。
ブラン王国の隣にある国、雷の魔法使いにして王子様のトネールです。
「トネールさん……!?」
「お、グラスじゃーん。ひっさしぶりだなー。お前はどったの? ついに家出か?」
「あ、その。プレゼントを渡そうと思って」
「……もしかしてオレ?」
「う、えっと……。確かにトネールさんには本当の兄のようだと思っていますが、実は」
グラスが言おうとすると、トネールはニヤリと笑います。
「――分かった。グラス、お前好きな子ができたな?」
「へ? どうして分かるのですか!?」
「顔を見たらすぐに分かったよ。分かりやすい顔してんなー、お前」
「そ、そうなんですか!? 恥ずかしい……」
トネールに軽く頭を撫でられて、グラスの頬はリンゴみたいに赤くなります。
「まー、好きな人ができるのはいいことだ。ちなみにどんな子だ?」
「……その子の名前は日和って言って、一目惚れしたんです。魔法ヘマして人間界に来ても、優しくしてくれて」
「超いい子じゃん……。オレ、人間界でバイトしてるけど、店長が厳しいんだよ」
「……まぁ、いい人に出会えて良かったな。お礼にそのマフラー、買ってやるよ」
思いがけない言葉に、グラスは目を見開きました。こんなチャンスは二度とないかもしれません。
「本当ですか!?」
「オレとお前。何年の付き合いだと思ってるんだよ」
そう言うと、トネールはもう一度グラスの頭を撫でて笑いました。
グラスもまた、トネールがもっと大好きになりました。