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あけよんのプチユーモアエピ

腐っても鯛

作者: あけよん

地上デジタル放送が始まった頃の事だ。

世間はテレビの買い換えをしなければならなかった。

新しい薄型のテレビを初めて手にした人は大半だろうか。


薄型テレビを入手したらそれまで使っていたブラウン管のテレビは必要なくなる。下取ってくれる店もあったが、そうでない店もあった。不要になったテレビは、自身で処分しなければならない場合があるのだ。


ある夜の事、私は近くの橋の上をジョギングしていた。この橋は夜は人通りがほとんどなく、自由に走れる場所だ。橋下には川が流れている。しかし汚い川なのでみんなドブ川と呼んでいた。魚も当然いない。だから釣り人も来ない。少し異臭はするが、個人的には別に悪くはない場所だと思っていた。


ジョギングをしていると向こう側から人が歩いてきた。


「珍しいな。きっとウォーキングでもしてるのかな」


互いが互いの方向に進んでるため、すぐに近づいた。そして気付いた。友人だった。


「何だ、お前か。ん?」


その友人は大きな荷物を持っていた。暗くて一瞬なにか分からなかったがよく見るとブラウン管のテレビだった。


「お前、そのテレビどこ持ってくんだよ?」


「いやぁね、薄型テレビ買ったからさ、もうこのテレビ要らないじゃん?処分するにも金かかるしさ、捨てようと思って」


「まさかこの橋から...」


「おう!」


その友人は不法投棄するつもりだった。


「なに考えてんだよ!犯罪だぞ!」


「別にいいじゃん。どうせドブ川なんだしさ。ここ普通にチャリとかも捨ててあるぞ」


「いや、そういう問題じゃねぇし!」


「いいからいいから。こっから落としたら音すごいかな?」


友人は橋から下を覗き込んだ。


「なんだ、そんなに高くねぇじゃん。とりゃっ!」


本当に落としやがった。マジかこいつ。


ッバッシャァァアンッ!!


すごい音だった。


しかし悪い事をするとバチが当たるのが常だ。

水柱が友人の顔面に直撃した。その汚くて臭いドブ川の水が。


「うわぁぁぁっ!」


まあこれは自業自得だな。さすがに呆れる。

馬鹿馬鹿しくなって私はジョギングを続ける気をなくしてしまった。


その後友人と一緒に橋を渡り帰ることにした。

今思えばこの友人は昔からこうだ。悪いことはバレなきゃ問題ないという考えの持ち主だ。しかし今回はしっかりとバチが当たった事だしいい刺激にはなったのではないか。


「お前さ、 今回は流石に反省した?」


「...」


やっぱりこいつは反省などするほど素直じゃない。こいつはこいつで変わらないだろう。そう思った。だが。


「...うん..まあ反省したわ。俺バカだった」


以外の展開だった。

まさか自分が悪い事をしたというのを素直に受け入れる事をするとは。精神的にもこいつなりに成長していたという事か。もしかしたらここからまともな人間に変わっていくかもしれない。なぜか私は嬉しくなった。

しかしその嬉しさはあっけなく終わりを告げる。


「...そりゃそうだよな、あんなの落とせばこうなるわな。次から何か落とすときは覗かないで避けとくわ」



いや、どこ反省してんねん



やっぱこいつダメだーーーー






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