第999話 霊王魔帝撃(れいおうまていげき)
「クラディウス・マークデウルにはこの程度では無理か」
「ジーク、ブリュンヒルデだけではない。私にもこの程度では無理だ」
「……なら、僕自身で」
ジークは手にしていた魔帝神剣を持ち、アレイスターへと向かい走り出す。
「ジーク、無意味だ!」
アレイスターの元へと走っていたジークの目の前にクラディウスの体を得たブリュンヒルデが立ち塞がった瞬間、ジークは転倒してしまう。
「くっ……走る事実を改変したな」
「そうだ。俺を前にすれば、どんな行動も全て変更可能だ」
「それが本物ならの話だ。偽物の君には本来の力を引き出す事が出来ない。偽物に負ける程、僕は弱くない!」
ジークは起き上がり、クラディウスの体を得たブリュンヒルデに魔帝神剣を向ける。
「……」
「思い通りにならなくて、困っているようだな」
「何故、法則改変が効かない?」
「降霊術だ。僕の体に別の魂を入れ、僕とは別の行動をした」
「……一度の改変に対応するために、己に魂を入れたか」
「こんな子供騙しは偽物である君だからこそ、有効なものになる」
「俺の力がお前ごときに止められるだと?」
「そうだ。偽物では、僕には勝てない。ここで解放しよう」
ジークは背中に背負っている黒棺の中から魂を無数に取り出すと、それらを魔帝神剣へと纏わせる。
「霊王魔帝撃!」
無数の魂が纏われた魔帝神剣を振るったその一撃は、魔帝神剣の黒いオーラと、分散された魂と元に放たれる。
分散した魂は周囲留まり、一部の魂はアレイスターと、クラディウスの体を得たブリュンヒルデの体内へと入り込んでいく。すると、ブリュンヒルデとアレイスターの動きが停止する。人間一人の器では魂は一つが限界であり、それ以上入ろうとする魂と元々ある魂と器の奪い合いが始まり、体が停止していた。そんな二人の元に腐敗の黒いオーラが襲いかかる。
「姉様」
ブリュンヒルデを守ろうとして、ブレア、レギンレイヴがブリュンヒルデの目の前に立ち、ブリュンヒルデを守り抜いた。腐敗の黒いオーラを受けた、ブレア、レギンレイヴの体は朽ちていった。
「……ブレア、レギンレイヴ……ジーク、貴様!」
「……君達の魂はここで僕が解放しよう。管理する神から君達の魂を解き放とう」
「……」
「ブリュンヒルデ、君達ワルキューレはもう解き放たれて良いんだ。僕がこれより、解放する」
ブリュンヒルデがジークの言葉を理解すると共にブリュンヒルデはアレイスターを見つめる。
アレイスターの体は腐敗の黒いオーラを受け、朽ちていた。