第997話 裏切りの影
ラインハルトは逃走を止め、影を伸ばし、影の手を千以上をジークへと伸ばしていく。
「……ジーク。君が年下が率いる組織に付くとは、アメリカ軍に所属していれば、こんな事にはなっていなかったよ」
ラインハルトが伸ばした影に呑み込まれたジークを見て、ラインハルトはため息をつく。
「君ほどの男が所属する価値があるのかい[レジスタンス]と言うものに、残念だよ。所属する所を間違わなければ君の名は世界中に轟いただろうに」
影に呑まれ身動きが取れず、無数の影の手はジークの体を万力の如く掴み、体を破壊させるそんな影に呑み込まれた時点でラインハルトは自身の勝利を確信していた。今までのこの影の手に掴まれ、生き残った者は居ないとされるからこそ、今回もラインハルトは自身の勝利を疑う事はなかった。
しかし、今回は違った。何故なら、今回影の手に包まれている相手はジークフリード・アンサンブルなのだから
「影が消えていく?」
ラインハルトはジークを掴んでいる筈の影の手の数が急激に減っている事から、ジークがまだ生きている事とこのままではジークが再び目の前に立ち塞がる事になると言う焦りから、ラインハルトは影の手を数千から数万単位に数を増やしてジークへと影を伸ばす。
しかし、どれだけ数を増やしても、攻撃回数を変えてもジークを捕らえる事が出来ず、影の手は消滅し続けた。
「これ以上、やっても無駄か」
ラインハルトは攻撃を止め、影の手を引こうとしたが、ラインハルトの体内から無理矢理影の手は引き出された。
「……影に混在した魂か。ジークめ降霊術で」
ラインハルトの体内に存在する全ての影がジークよって、奪われ、影に潜んでいた魂はジークの降霊術によって、ジークが背中に背負っている黒棺へと入れ込まれていく。
「ラインハルト、貧弱な君の能力の拡張もジークフリードを前にすれば、無意味だったようだ」
「アレイスター……話が違う。僕はフーバー家の」
「無理だ!」
アレイスターはラインハルトに手を向けると、ラインハルトを引き寄せる。
「何を?」
「貰うのだよ。君を!」
ラインハルトを掴んだアレイスターはラインハルトの体を吸引し、自身の体にラインハルトを取り込んだ。
「……ジーク次は私が相手しよう」
「ブリュンヒルデ、何故攻撃しない?」
ジークは目の前に居るアレイスターよりもクラディウス・マークデウルの体を得たブリュンヒルデを気にかけていた。
「私を無視するな」
「……アレイスター。君も降霊術を使うみたいだね」