第995話 法則改変(ルール・ブレイカー)
「やる必要が無いな。ここから逃げるつもりはない」
「それで、良い。殺してやる」
変装術によって、ブリュンヒルデはクラディウスの力の一部を得ており、屈強なその体を得たブリュンヒルデはその力を引き出していた。
ジークは身を持ってその強さを知っているからこそ、ジークは即座に魔法陣を出現させ、そこから魔帝神剣を取り出すと構える。自ら、攻撃することも無く。
「良い判断だな。俺の力を知っているからこそ、警戒だな」
「クラディウス・マークデウルの一部の力と言えど、警戒はさせてもらう」
「当然だな。お前なら、そうするだろう」
「僕の何を知っている?」
「全てだ」
クラディウスの体を得たブリュンヒルデはゆっくりと足を動かす。すると、足は地面に触れる前に宙を踏みしめた。何度も歩くその両足は宙に立ち、クラディウスの体を得たブリュンヒルデはジークを見下ろしていた。
「法則改変この世の理からも逸脱するか」
「これがあるからこそ、俺は最強とされる。さっさと来い。力の差を、嫌次元の違いを見せてやる」
ジークは手にしていた魔帝神剣を振るい、黒いオーラを放出させ、クラディウスの体を得たブリュンヒルデへ向け、放つ。魔帝神剣は切り付けた対象のものを腐敗させる剣であり、現在ジークが放った黒いオーラもその特性があり、このままこの黒いオーラがクラディウスの体を得たブリュンヒルデに直撃すれば、ブリュンヒルデの体は腐敗を初め、ジークの勝利は確実となるだろう。
しかし、ジークが放った黒いオーラを直撃して、クラディウスの体を得たブリュンヒルデの体が腐敗する事はなかった。
「改変したな」
ジークは魔帝神剣の効果が見られない事から、法則改変によって、効果あるものから、無いものへと改変した事を即座にジークは理解した。
「……では、次はこちらからだ」
宙に立っていたクラディウスの体を得たブリュンヒルデは真っ直ぐに地上へと下降すると、地面と接触する前に、地面を殴り付ける。
屈強な体を宙から降っていた事もあるが、それで殴られた地面は大して破壊は出来ないが、法則改変をよって、威力、規模、範囲等全てが改変された事によって、その一撃は周囲の地面を砕き程の威力となっていた。
「……やはり、偽物だな」
「なんだと?」
「本物は国一つを僕の目の前で落として見せたぞ。今のは精々、町一つだ」
「ジーク、お前をやるにはそれで十分だろ?」
「変装術の欠点だな。力はそのまま引き継ぐ事が出来ない」