第978話 魔帝神剣(グラム)を引き継ぐ者
逃走方法を模索する一夜と竜我の目の前に魔帝神剣が天から落ちてくる。
「魔帝神剣がどうして?」
戸惑う竜我の隣で一夜は鬼の仮面の相手をしている父親である五三六の居る方向を眺めていた。
「父さん……無事なのか?」
一夜は地面に突き刺さった魔帝神剣を触れる。
しかし、魔帝神剣に触れる事は叶わず、弾かれる。
「……俺を適正者として認めてねぇのか?それともまだ父さんの所有しているのか?」
「……僕も触れよう」
竜我は一夜に続いて、魔帝神剣を触れる。
結果は一夜と同様で、弾かれる結果となる。
「……一夜、五三六は生きているよ」
「神器は適正者を選ぶ者だ。俺達の二人では選ばれないだけかもしれない」
「そうかもしれないけど、今は確認する事も出来ないよ」
「そうだな。取りあえず、ここから逃走する事を考えよう」
二人は竜の仮面へと攻撃を繰り出したものの、前に進もうとしたその足は後ろに下がり、攻撃を仕掛けたものの、防御をしていた。
「……君達二人の攻撃を待っていたら、日が暮れそうだ。ここは待つよりも、こちらで動こう」
竜の仮面を付けた男は混沌を呼ぶ聖魔剣を強く握りしめると、竜我に向かい斬りかかる。
竜我は混沌を呼ぶ聖魔剣を理解しているからこそ、わざわざ、前に出る。そして、混沌を呼ぶ聖魔剣の効果によって、前に出た足は後方へと変更される。
「良し!」
混沌を呼ぶ聖魔剣を理解し、上手く回避した竜我を見て、安堵した一夜だったが、竜我の顔色は優れなかった。
「……混沌を呼ぶ聖魔剣を良く理解している。だが、自身の事ばかりを見ていては、他が疎かになる。自身は上手く回避してもこの剣が当たらなかった……この事実も逆転するんだよ」
竜の仮面を付けた男の言う通りに避けた筈の攻撃は逆転し、その剣撃は竜我の左腕を切り落としていた。
「竜我!」
一夜のその叫び声が響き渡る中、ジークは自身の能力、受注生産を発動し、剣を造り出すと、竜の仮面へと向かって走り出していた。
「……混沌を呼ぶ聖魔剣の効果が正常に発動しているにも関わらず、真っ直ぐ走って来れるとは……大したものだ」
ジークを称賛すると共に竜の仮面を付けた男は混沌を呼ぶ聖魔剣をジークに向ける。
ジークは混沌を呼ぶ聖魔剣の効果が発動している中で、軽々と竜の仮面へと切りつけるが、竜の仮面はそれを簡単にあしらう。剣を弾かれたジークは慌てて、剣を掴んだがその剣はジークが能力で造り出した剣出はなく、地面に突き刺さった魔帝神剣だった。