第977話 混沌を呼ぶ聖魔剣(カオス・フィールド)
竜我が皆に逃走を促すのには混沌を呼ぶ聖魔剣の脅威知っているからこそだった。
混沌を呼ぶ聖魔剣は名百名の混剣であり、持ち主を中心として、感情や思考、属性等真逆のものとし、攻撃を防御へと変える事も出来るため、攻撃した筈なのに防御をしていると言う事になるため、この混沌を呼ぶ聖魔剣を相手にする場合、一番賢い選択は逃走とされており、竜我のその判断は正しい事になる。
「……逃がす事はさせぬ。……逃げられもしないがな」
竜の仮面の言う通り、逃走を始めた筈の四人は竜の仮面へと向かって走っていた。
「……もう混沌を呼ぶ聖魔剣の影響が」
竜我は四人の行動が真逆になった事を見て、混沌を呼ぶ聖魔剣の効果が発動した事に気がつく。
「逃げたければ、逃げるが良い。逃げられるなら……だがな」
「……逃げられない様だ。僕が相手をする、様子を見て逃げてくれ」
竜の仮面の厄介さから竜我が一人に残り戦う事を決意する。
しかし、その決断を否定したのは一夜だった。
「……勝てるのか?命をかける事は許さない!」
「一夜、僕の神器、晴天開闢は全ての状態をゼロに元に戻す事が出来る。竜の仮面の混沌を呼ぶ聖魔剣を退けられるのはこの場に置いて、僕だけだ」
「……分かった。ジークと天舞音だけは逃がす」
「一夜……君はどうする?」
「対抗出来るのは俺も同じだ。動ける以上俺は無敵だ。お前も俺の傍若無神の事は知っているだろう?」
「……分かった。先ずは二人を逃がす事を考えよう」
竜我は一夜を残す事を認め、晴天開闢を発動させ、体内に宿る神器を手にする。
「美しい、天色の剣……晴天開闢だな」
「……この神器を把握しているなら、その効果も理解出来ている筈」
「……混沌を呼ぶ聖魔剣はあらゆるものの性質等を真逆にする。魔法、能力、異能の発動を真逆、つまり発動しない事にも出来るが、それはこの剣に触れた時のみだ。この剣で触れれば、その神器は体内に戻るぞ」
「触れたらね。一夜聞いたね」
竜我のその言葉に一夜は無言で頷く。
「お前達が逃げる時間を稼ぐだと?二人が逃げようとすると、混沌を呼ぶ聖魔剣が発動し、さっきの様に逃げる事は叶わない」
「だったら、お前に向かって走れば、それが逆となり、逃げられる」
「九十九一夜。皆最初にその考えにたどり着く。だが、そう上手く行くと思うか?」
「……そんなに単純な話なら、ありがたいが……無理か?」
「やるだけ、やるが良い。己の無力感を知る事になるがな」
「竜我逃がすのも、戦うのもキツいぞ」