第975話 獄卒を統べる金棒(インフェルノ・コントロール)
鬼と化した男が手にしていた仮面は九十九家の出身である五三六だからこそ分かる人物の顔をしていた。
「……八千代様の神器は一世紀前に喪失したと聞いていたが……こうして、目にする事になるとは……その仮面に入っているんだろう?」
「然り」
「なら、それを舞には付けさせない。そして、その仮面は持ち帰らせて貰う」
「それは叶わない」
鬼と化した男は至る所から出現している門の鬼を手にしている獄卒を束ねし金棒を地面に叩きつけ、門から出現した鬼を五三六へと襲わせた。
「……その金棒は鬼を操作……鬼属性には有効的だけど、僕が負ける理由は無いね」
五三六は手にしている魔帝神剣を振るい、鬼を切りつけていく。切られた鬼達は腐敗し、消滅していく。
「理解出来るだろう。どれだけ強くても、僕の相手は務まらない事を」
「分からんな。何故、それだけで勝利を確信する?獄卒を束ねし金棒を見てか?それとも地獄へ誘う門を見てか?甘いな」
鬼と化した男は手にしていた獄卒を束ねし金棒を天へとかざす。すると、金棒から黒いオーラが激しく放出される。金棒は禍々しく変形すると、黒いオーラを漂わせる。
「……これが、これこそが、獄卒を束ねし金棒の覚醒、獄卒を統べる金棒……お前は逃れられない」
獄卒を統べる金棒から放たれた黒いオーラに触れた五三六の体は鬼へと変化していく。
「……お前はこれからは、鬼として働いて貰う。逃れられない絶望の果てに知るが良い。お前は」
鬼の体へと変化していく五三六の思考は停止しかけていた。そんな状況で五三六は魔帝神剣は天高く投げ捨てる。
「……一矢報いる為に投げずに背後に投げつける?何の考えがあって、その行動に至った?」
「僕が魔帝神剣を持ったまま、敵に回る訳にはいかない。敵になるなら、どこまでも弱くいよう」
そう告げる五三六の両手は腐敗しており、その腐敗は五三六の全身へと回っていた。
「……息子、娘の敵に回らずに、死を選ぶか?」
「……子供に迷惑をかけられても、僕がかける事はしたくない。舞、一夜の楽しい事や幸せな事なんて共有しなくても、苦しみや悲しみは一緒に背負っていくと決めたあの日から、父親になった日から、僕の命は二人とこの世で最も愛する女性の為に」
「……どこまでも家族の為にか?見事だ……しかし、川上舞を拐う計画は個人的なものと思ったか?これはチーム[マスク]で行われているものだ。ここから離脱した息子も逃れようと足掻く娘の元にもやってくるチーム[マスク]は」