第973話地獄へ誘う門(ゴートゥーヘル)
鬼の仮面から逃げる事はせずに、立ち向かう事を決めたその時、鬼の仮面に出現していた地獄へ誘う門が開かれる。
「この場はこれより、この世とあの世の境界線は無くなり、お前らの常識は一切、通用しなくなる。お前らはどうまでやれる?」
開かれた門はギリギリ人間の形を保った者が鎖に繋がれ現れる。それとは別にただの鎖が門から出てくると、周囲の建物等に、刺さり始める。
「……一夜、これがどういったものなのか分からないが、鎖は触れない様にしよう」
「そうだな。ここは回避しかねぇな」
門から出現した人間の形を保った者達は周りにある物を喰らい始める。人間が食らうものではない建物等まで喰らっていた。
「この異形な光景をどう見る?竜我」
「……何とも言えない。喰らう事で、何かを得るのか、それはこれから見ないと分からない事だ」
「……逃げる事が出来ない以上、距離を取る」
「一夜、後手に回るな。君の傍若無神は動いて初めて効果を発動させる。ここで止まっていたら、影響を受けてしまう」
「分かっている。だが、無駄に動いて、俺の能力条件が相手に知られるのは不味い。相手はまだ、俺の能力については全て把握は出来ていない。これはかなりデカイアドバンテージだ。これを失う訳には行かない」
「確かにその通りだ。でも、このままって訳には行かない。鬼の仮面の奴もバカではない……いずれ君の能力を完璧に把握する」
「その前に終わらせる。鬼の仮面が仕掛ける前に終わらせねぇと、勝ち目がねぇ……そんな気がする」
「奇遇だね。僕もそう思っているよ。ここで決めよう」
二人が動き出そうとしたその時、目の前に巨大な鏡が出現する。
「二人とも、先走り過ぎ」
天舞音の鏡の国の支配者によって、動きが止められる。
「助かったよ」
五三六のその言葉に天舞音は鏡から顔を覗かせる。
「貸し一つね」
「……うん。分かった」
一夜と竜我は五三六とジークの登場と、鏡には天舞音が居る事実を把握する。
「……二人とも無事だね」
「見ての通りだ。だが、鏡の向こうには」
「何かあるのか?」
「鬼の仮面から出現した金棒の神器と、奴自身の異能が発動中だ」
「……四人は九十九家に避難して貰う」
「何だ、それ?俺達は足手まといか?」
「一夜、分かってくれ!」
「……行っても良いのか?勝てねぇから、一人で死ぬつもりでは無いんだな?」
「信じてくれ!」
「……お前ら、行くぞ」
一夜は父親である五三六に任せ、この場から離脱することを決め、全員を九十九家へと案内を始める。