第972話獄卒を束ねし金棒(インフェルノ・リーダー)
鬼の仮面を付けた男は一夜に向け、金棒を振るう。
一夜は避ける事を一切せずに、殴りかかる。
金棒に直撃した一夜は動いていた為、傍若無神が発動しており、一切のダメージを受けなかったが、一夜の一撃によって、鬼の仮面は遥か後方まで吹き飛ばされる。全くダメージの無い一夜の体から黒いオーラで形造られた一夜が、出てくる。
「何だ?これ」
「……それはお前の考え、感情お前の体を巡った様々なものを体の外へと出したものだ」
遥か後方まで吹き飛ばされた鬼の仮面は一瞬で戻ってきて、一夜の疑問に答えて見せた。
「……人は常に感情を動かされる。獄卒を束ねし金棒は攻撃を加えた物の感情等を外へと放出させる。どうだ?今、君の感情が抜け出し、喪失感があるだろう?」
「……それがどうした?」
「理解出来ていないなら、知る事になる」
鬼の仮面が行動しようとしたその時、竜我は体内に宿す神器を取り出し、一夜の体から出現した一夜の形をした黒いオーラを切りつける。
「……剣?この美しさ天剣だな」
「確かに、晴天開闢は名百剣の一種だ。この剣に触れたものは全て、元の状態に戻る」
「……それで黒いオーラが、九十九一夜の感情が戻ったのか」
「貴方の獄卒を束ねし金棒は僕の神器で無力化される。もう諦め、帰るが良い」
「獄卒を束ねし金棒だけは認めよう。だが、私はまだ力を使ったつもりはないが」
鬼の仮面のその一言に一夜、竜我は鬼の仮面から神器を取り出しただけで、鬼の仮面を付けている男の本来の力を見せていない事実を思い出す。
「見せよう。この地獄へ誘う門を」
鬼の仮面の背後から地を裂き、禍々しい門が出現する。
それを目にした一夜と竜我はその危険度を理解する。
「一夜!逃げよう。僕達の手には終えない」
「……そうだよな」
「一夜。分かっているなら、逃げよう」
「こんな危険な奴……舞に会わせる訳には行かない。竜我、お前は行け、俺はこいつを止める」
「一夜。あの門は嫌な感じがする。あの門が開いたら……僕達は、僕達は」
「分かってる!あの門は、開かせねぇ。あれは授業で、教科書で見たままだ。あれは、地獄門だろう?」
「……地獄門はその名の通り、地獄へと通じる門だ」
「そんな、地獄門が開いたら、どうなると思う?」
「……良い事は起こらないだろうね」
「……竜我お前が残る理由は無いだろう。さっさと行け!」
「理由なら、ある。君さ……このまま行ったら、見殺す事になるだろう?だからこそ、僕も残るよ。ここから立ち去る時は君と一緒だ」