第967話 クラディウス・マークデウル
川上家の食卓に招かれたジークは未だに警戒心むき出しにして、五三六を睨み付けていた。
「そんなに睨まなくても良いだろ?」
「……」
「どうして、道場に現れたんだ?」
「……偶然だ。逃げて来たからな」
「逃げてきた?……どこから?」
「あいつから」
「見た所日本人はではないだろう。国を渡って逃走してきたって事で良いのかな?」
「そうだ。あいつは追ってくる……僕を匿えば巻き込まれるぞ。あの化け物に」
「その化け物とはなんだい?」
「クラディウス・マークデウル!」
五三六はその名を聞いて、驚きを隠せずに居た。
ヨーロッパ全土を恐怖で支配した管理する神で恐怖の支配者と言われた暴君。
クラディウス・マークデウルは各地の増援やヨーロッパ全土の人達によって、ようやく捕らえる事に成功した。
そう。捕らえるに留まっており、殺す事が誰にも出来ず、アメリカにある世界最高監獄コキュートスで
|六封魔道具≪タブー・シックス≫の|戒めの弾丸≪レージング≫、|戒めの剣≪ドローミ≫、|魔法の鎖≪グレイプニル≫、|拘束の足枷≪ゲルギャ≫、|封魔の岩石≪ギョッル≫、|鋼鉄の杭≪スヴィティ≫の六個の魔道具による封印とコキュートスの管理をするレイチェル・レイバーの能力、絶対零度によって、冷凍保存し終わりを迎えたのは二日前の事だった。
ジークの様子から、ジーク本人がその事実を知らない事は見て取れた。
「君は逃げるのに必死で、知らないだろうけどクラディウス・マークデウルで二日前に捕らわれている」
「嘘だ!あの化け物が」
「世界中から増援が来た事によって、ようやく捕らえる事に成功した。それほどの脅威はかつて無いと言われるレベルでね。クラディウス・マークデウルは魔道具六個使用して、コキュートスに送られた。これ程の厳重な方法でコキュートスに送られたのは、これで八人目だ。そして、今までその七人は脱獄出来ていない。クラディウス・マークデウルの脅威は去ったと言えるよ」
「……僕はもう帰る場所は無い。もうあの屈辱を二度と繰り返さない。剣術を教えてくれ」
「分かった。道場としては賑やかになるよ」
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翌日。
「一夜。今日から新しい門下生が加わるって話し聞いたかい?」
銀髪に中性的なその少年は笑顔で一夜に語りかける。
「知っている。今日から家に住んでいるからな」
「……それで不機嫌なのか」
「まぁ俺には川上家だけでなく、九十九家に住む事も出来るからな」
「……逃げるのかい?」