第965話 戻しり廉
「佐々木さん。お願いがあります」
「……なんだい?」
「僕に剣術を教えて下さい」
「……受け入れたいんだけど、佐々木家の剣術は外に持ち出さないと言う方針なんだ。済まない」
「……そうですか」
「血が流れていたね。君達は無傷だ……あの場には」
「はい。チーム[ゼロ]と脱獄者二名と羽田先生が」
「先生……か。焦らなくて良い、君には君なりの成長がある」
勇治と紫音の会話の最中、氷と湊斗は仮面を付けた集団が空を飛び光景を眺めていた。
「……なんだ?あいつら」
氷は妙に目立つ仮面の集団を見て、思わず口にしていた。そんな氷に続いて、共に見ていた湊斗も氷に続いて口に出していた。
「何でしょう。急いでいる様に見えましたけど」
そんな湊斗のスマホが鳴り始める。湊斗が電話に出ると
「病院が襲われた?」
柚子の家族として、湊斗に病院に襲撃者が侵入してきたと言う簡潔な情報だけ伝えられた。
「病院が襲われたのか?」
湊斗が告げた情報から氷はおおよその状況を察する。
「ええ……またチーム[マスク]が」
「病院に何かあるのか?」
「どうでしょうか?前回も病院の破壊で終わっただけで、川上舞を拐う事に失敗してますし」
「……川上舞は今、川上玲奈の見舞いに行っている。目的は明確だな」
氷の言う通り、チーム[マスク]の狙いは現状の状況から舞を狙っている事は明らかである。
湊斗は直ぐ様、それを紫音に伝える。
「病院にチーム[マスク]が現れた様です。狙いは前回と同じ川上舞の可能性があります」
「……何で、再び舞を?」
「理由は分かりませんが、チーム[マスク]は優秀な体を求めている様ですから……狙いは川上舞の体かと」
「分かりました。病院に向かいましょう」
病院に行く事が決定的となり、勇治は手元の資料を紫音に手渡す。
「これは?」
「チーム[マスク]と川上道場で起きた事件が詳細に書かれている」
紫音が手元の資料に見ようとした時、紫音を呼ぶ声が紫音の耳に届く。
「紫音!」
その声によって、紫音はその声の主が廉である事を把握出来た。スーツを来た廉を見て今まで廉が何をしていたのか思い出す。
「マネジャーの仕事は終わったのかい?」
「……俺は何も出来なかった。マネジャーも戦闘も」
「何があったのか聞かないよ。でも、僕も同じだ。ただ圧倒的な力を持つ相手に羽田先生が殺されるのを見ているしか出来なかった」
「羽田先生って……担任の」
「……」
「実況をやっている松元って知っているか?」
「……松元さんも?」
「あぁ」