第963話 秘剣燕返し
秘剣燕返しは佐々木家が代々小次郎の名を襲名する佐々木家の当主のみが継承を続ける技の一つである。三十一代目の勇治の扱う燕返しは一代目が扱っていた秘剣燕返しとは全く異なるとされており、伝承の際に技を継承する者によって、技は変わった物になると言われており、現在三十の秘剣を伝承した勇治だが、歴代の当主と技名は同じでも、放たれる技は異なっている。そんな勇治から放たれた秘剣燕返しは代々継承する毎に斬撃の数が増しっており、勇治が呂布に放った秘剣燕返しの斬撃は一瞬にして、三十以上を切りつけていた。
「我を切るとは、我を切りつけるとは……ワハワハハ」
呂布は声高らかに笑い始める。
無能力者として、産まれ、両親に捨てられた呂布は産まれながらに何も持たぬ男だった。そんな何よりも持たぬ男の日々は奪う事で成り立っていた。金を持ち合わせない呂布が食べ物を買うことなど出来る訳もなく、呂布が口にするものは全て、奪って得た物だけ生活していた。勿論、そんな呂布に対抗する為、様々な手段で呂布を処理しようとしていた。最初は、直接呂布を捕らえようと多くの人間が動いていたが、呂布は捕らえに来た人間を一人残らず、殺しておりそこから呂布の存在が多くの者に知れ渡る事になる。そんな呂布を殺す事を諦め、盗まれる食料に毒を盛り毒殺も失敗。次の手を考えているその間、呂布は聖天激戟を代々、体に宿し続けた一族を襲う。その一撃は能力者、異能力者が六十人以上居る一族にも関わらず、無能力者の呂布は自身の体一つで壊滅させ、聖天激戟を奪う事に成功、その後呂布の噂を聞き付けた管理する神にスカウトされ、入る事を決める。そして、それが五ヶ月前の話であり、その後チーム[ゼロ]に入団する事となる。管理する神に入団してからも敗北は無く、世界中に最強の無能力者と呼ばれている。そんな呂布が同じく能力者ではあるが、ブレスレット型の魔法の鎖をつけている事で無能力者と言っても過言ではない勇治にこうも容易く体を切りつけられている。この事実はデュラークが呂布を連れ逃走するのには十分なものであった。
「呂布。お遊びは終わりだ。この男を相手にするには、キツい」
「分かっておるわ。この我が命をかけ、生涯をかけ、倒す好敵手と見た。この狭い場所で決着をつける訳にはいかん。今日は我の敗北を認めよう。そして、我は更なる高みを目指そう」
デュラークは自身が造り上げた結界を破壊すると、魔法陣を出現させると、デュラーク、呂布の二人は転移魔法で離脱する。