第958話 激闘開始
「……成田智則、山瀬準。ここからはもう逃げられない。中に入る事は可能だが、外へと転移魔法や魔法、異能による逃走は出来ない。皆さん、捕らえるのがベストですが、殺しても構いません。ただし、そこに居る佐倉紫音、氷川氷、佐倉湊斗の三人には手出しは許しません」
神を含む能力、異能を扱う三人ついては攻撃を禁じたデュラークのその言葉を聞き入れたチーム[ゼロ]のメンバー達は成田、山瀬を狙う為、動き出す。
最初に動いたのはチーム[ゼロ]の切り込み隊長として知られる巨漢の男。服の汚れや髪等の手入れ等は一切しておらず、この男が唯一するのは、純粋な戦いだけである。
何よりも、ただならぬそのオーラはその場の誰よりも優れており、オーラに当てられた者は闘争心を維持出来ず、戦意喪失する者も後を絶えない。しかし、チーム[ゼロ]の他のメンバー達は誰も戦意喪失する者は居なかった。それはそれほど強い男が味方に居ると言うその事実にチーム[ゼロ]のメンバー達は敗北等は一切考えておらず、その男の勝利をただ眺めるだけで成田、山瀬の捕らえる、また、殺害が容易いと言う事実があるからである。現にこれまでの三ヶ月全ての仕事はこの男のみで片付いており、その男の実力は証明されている。そんな男の実力は男のその肉体だけでなく、手にした聖槍が更に男の強さを上乗せしている。
その聖槍こそ、聖天激戟である。ハルバードに良く似た形状であるが、サイドに三日月の様な横刃がある槍である。名十槍の激槍であり、中国の代々呂布の名を名乗り続ける一族の体に宿り続けた神器である。そんな神器を体内に宿っておらず、手で持ち歩いていた。
つまり、それはこの男が呂布の名を襲名を続ける一族から奪い取った事が見て取れる。
「……聖天激戟……この狭い空間でそれを使うのか?……正気か?」
成田はその槍の異形な特性から、その男の考えが正気の沙汰ではない事を思わず、口に出していた。
聖天激戟は槍から放たれた光に接触したものを強制的に光属性にして、その槍の力へと変換させる槍であり、如何なる属性を持ってしても、この槍を前にすれば、その槍の強化する為だけのものへと成り下がる。
そして、この槍の最大の特徴は溜め込んだ光は一定の量を越えると、周辺に巨大な光の竜巻を形成する事にある。
この竜巻が形成されたら最後、あらゆるものを吸収し、光へと変換させる。それは人間も例外ではない。
もし、この場で聖天激戟の光の竜巻を形成されたら、この場に居る者は通り抜け以外の全ての人間は光の竜巻に吸収され、光へと変換されるだろう。