第955話 救い
海神の王剣が手に出来ない時点で、海斗の敗北は誰の目から見ても決定的で、通り抜けに抗う術等はないと言える。
学生の頃から無敗記録を更新し続ける海斗だったが、どの戦いでも海神の王剣を使用しての勝利であり、ただの一度でも海斗の身一つで勝利したことは無く、体術等の近接格闘は苦手の分野である。
「……つまらない。結局、神器持ちは、神器があってこそか」
通り抜けは海斗との戦いを終わらせようとしたその瞬間、海斗の姿が消えると、地面に落ちていた海神の王剣も消えていく。
「……通り抜け。逃げられたな」
「いつから居た?」
「最初からだ。お前が無神に会うなんて言う訳無いだろう」
「……そうだな。で、どう思う?」
「脱獄しか内の一人と羽田海斗は同級生だ。その接点で、助けたんだろ」
「そうか。で、何処に逃走するのか、目星はつけてあるのか?」
「空間に逃げても、探せる奴は居る」
「デュラークか」
「あぁ、デュラークに頼んで、探して貰う」
通り抜けと城山のその話の最中、一人の男が現れる。白い髪に白い肌、この男こそ、チーム[ゼロ]のリーダー無神である。
「何でお前がここに居る?」
「通り抜け。任務が出た。お前と対峙した羽田海斗の神器を持ち帰りたい」
「それはついているな。あいつは殺そうとしていた」
「やり方については文句は無い。勝手にやって貰って構わない」
「そうさせて貰う。お前はどうする?」
「本部に戻る。見当を祈るよ」
無神は姿を消す。
「……ただ姿を無にして、見えなくなっただけか?」
城山は自身よりも無神を知る通り抜けに訪ねる。
「正確には自身の色を無にしたって所だな。さっさと終わらせよ」
通り抜けは無神から受けた仕事を即座に終わらせる為、城山と共に動き出す。
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「……ここは」
何も無いその空間で目を覚ました海斗は辺りを見渡し、情報を得ようとしたものの、何も無く、誰も居ないこの空間では、情報を得る事など不可能であった。
そんな海斗の前に短髪、緑色の髪をした青年が現れる。
「成田」
「羽田。久しぶりだな」
「脱獄して、どうするつもりだ?」
「命の恩人に何て口振りだ。俺が山瀬に頼まなければ、お前は死んで居たぞ」
「……それに関しては感謝している。助かった……でも、脱獄の話を見過ごす事は出来ない」
そう告げる海斗の背後に赤髪の少年が現れる。
「山瀬準だな」
背後に現れた山瀬に海斗は即座に反応して、振り向く。
「お前達は神奈川支部のチーム[アサシン]に加え、チーム[ゼロ]までもお前達を探している」