第947話魔合混沌槍(カオス・ストライカー)
儀式によって、松元の体内に宿っている魔合混沌槍をもってしても、玲愛の体内に宿る光輝く右手は強制的に融合させる事は出来ず、無効化されてしまう為、今の松元には回避しか出来ない事は明らかだ。
「あの槍、欲しいわ」
松元の所持する魔合混沌槍を目にした八重は羨ましそうに松元を見つめていた。
「珍しいね。八重ちゃんが黒影の槍以外の槍に興味を持つなんて」
浴衣は普段見せない表情する八重を見て、驚き、声を発していた。
「儀式で体内に宿っても、適合者はあの男。でも、殺せば次の適合者を選ぶ筈」
「そうだけど、八重ちゃんが選ばれるとは限らないよ」
「そうね」
「……春美ちゃんの異能で松元を魅了出来ないの?」
浴衣のその言葉に春美は苛立っていた。
「出来ていれば、スタジオから逃がす事なんて無かった。それに有栖川天舞音にも効かない事は分かっている」
「春美ちゃんの異能にも欠点があって、私達チーム[ハンド]のメンバー達にも効かないしね」
「そもそも、チーム[ハンド]には理想の偶像を発動していないわ」
「異能不確実のその異能の名前は合っているの?」
「私が付けたのよ。名前すら、存在していない異能だからこそ、異能不確実のカテゴリーになっているのよ」
「……春美ちゃんではあの男からあの槍は奪えない様だよ」
浴衣のその言葉を聞いて、八重は動く。
「そうね。直接行くわ」
八重は手にしている黒影の槍を手放し、その槍は八重の影となり、八重は影の中へと入り込む。
その後、八重は松元へと接近を始める。
「どうするのかしら?もう貴方には成す術が無いのでは?」
玲愛のその言葉に反論も出来ない松元の背後に銀髪の少女の姿があり、松元がその少女に気がついた時には少女の手から放たれた青い雷に直撃した時だった。
「鳴上琴音」
松元が青い雷に直撃して、その人物チーム[ハンド]のメンバーである琴音である事を把握すると、共にその青い雷の能力が厄介な性質を思い出していた。電子磁石は琴音から放たれた雷に直撃した物に磁力を与えるものである。そんな雷に直撃した松元の体には青い雷が未だに残っていた。
「取りあえず、あの建物に拘束で良いわね」
琴音は右手から青い雷を建物に直撃させ、建物に青い雷に覆われている。その後、琴音は電子磁石を発動させ、松元を覆っている青い雷と建物を覆っている青い雷の磁力を操作させ、松元を建物へと吸い寄せる。
「……くっ!」
「もう、貴方は動けない。それで、どうするの?」
松元を捕らえる事に成功した琴音は近くに居る玲愛に確認を取る。