第945話 チーム[ハンド]の集結
八重は黒影の槍を廉は炎神の魔剣を構え、向かい合っていた。
魔法陣から出現したのは見た目が小学生としか思えない背丈の青髪の少女と、春美が姿を現す。
「八重ちゃん手を貸そうか?」
そう声をかけたのは、魔法陣を出現させた青髪の少女であった。この少女こそ、チーム[ハンド]の副リーダーを務める北見浴衣である。
「必要無いわ」
「でも」
「そう駄々をこねないで、終わらせるわ」
八重が向かい合っている廉に攻撃をしようとしたその時、息を切らしながら、不格好に走る茶髪の少女が玲愛の元にたどり着いていた。
「お待たせ、……しました」
遅れてやって来たのは、チーム[ハンド]のメンバー山下楓であった。
「琴音は?」
玲愛はやって来たのが楓のみだった事から、残りのメンバーである鳴上琴音が居ない事を指摘する。
「琴音先輩はここに来る途中で出会った東京本部の防衛局の五人を相手してます」
「琴音なら、心配は無いわね」
「はい。ブレアはチームを離れました」
「……そう。魂を入れた入れ物には興味無いわ」
「玲愛先輩はそうでも、私の同期ですよ。タメ口で話せるのはブレアだけだったんですから」
「後輩が二人居るでしょ?」
「……はい」
「貴方には期待しているわ」
天舞音、松元、廉に対して、チーム[ハンド]は揃いつつある。このままでは三人だけで、やるには苦戦を強いられる事は目に見えていた。
「……有栖川天舞音。木山の倅を連れ、逃げろ」
松元のこの状況の打破の為、一人でチーム[ハンド]の相手をすることを宣言する。
「勇敢ね。かつての日本最強のチーム[シード]の生き残り、過去の伝説はここで幕引きよ。私が引導を渡しましょう」
二人を逃がそうとする松元に玲愛はチーム[ハンド]のメンバー達を控えさせ、自ら戦う事を宣言する。
「荒川玲愛。最後の相手としては満足だ」
「松元さん」
「木山の倅。お前の力はまだまだ粗削りだ。神器との対話で、原初の力を引き出せる様にしろ」
「原初の力?」
「詳しい話は前任者に聞け。木山の倅チーム[シード]はとんでも無い罪を犯した。全員殺されても文句は言えないレベルの罪だ。[レジスタンス]は道を踏み外すな!有栖川天舞音後は頼む」
松元に託された天舞音は鏡の国の支配者を発動させ、鏡を出現させると、廉の胸ぐらを掴み、鏡に向けて投げつける。鏡の中に吸い込まれた廉に続き天舞音も鏡に入る手前で止まる。
「後は任せるわ」
天舞音はそう告げると、鏡の中へと入り、逃走を成功させる。