第943話 異能不確実(アブノーマル)
松元は周囲を眺め、このままここに居ては、狙われ続ける事から廉と天舞音に逃げる事を提案する。
「ここから避難しよう」
「避難?」
廉は松元の提案に首を傾げる。
「……嫌な気配を感じる」
松元のその台詞に天舞音も同調する。
「そうね。チーム[ハンド]が何故か来ているみたいだしね」
「……十六夜春美がチーム[ハンド]のメンバーだからな。不自然な事では無い」
「チーム[ハンド]のメンバー?初耳よ」
「……こちらで調べた結果、十六夜春美の異能は理想の偶像では無いらしい」
「どうゆうこと?」
「異能不確実だ」
「そう。それじゃ、正確な異能として認識されていないのね」
「あれは特殊な精神操作系の異能で前例の無い異能だからね」
二人の会話の最中に出た異能不確実が廉に取っては自身がリーダーを務めるチーム[アブノーマル]として受け取っていた。
「何でここでチーム[アブノーマル]が出てくる?」
「違うよ。魔法を扱う者中には体内に宿した魔力が白魔術と黒魔術の両方を得てしまい白黒混合となる場合と単純に魔力を上手く出せなかったり、魔力に欠損がある魔法未熟、そして、能力の場合は今までに無いとされた能力、能力が上手く発動しない場合、能力の一部が著しく欠損した能力不明と言われる。そして、異能不確実だ。これまで確認されなかった異能、異能が変化する等特殊な状態にある異能を異能不確実と呼ぶんだよ」
「そうなんですね」
「因みに、君の炎神の魔武器も異能不確実だ。記憶を失い降炎魔神剣から変化したからね」
「それじゃ、舞もか」
「そうだよ」
松元と廉の会話の最中、天舞音は目の前に鏡を出現させる。
「鏡を伝って離脱しましょう」
天舞音の提案に廉と松元は従い、鏡に飛び込む。
外に逃げる事に成功した三人は地面が影に覆われている事に気がつく。
「これの影は、チーム[ハンド]が居る事からして、黒川八重」
天舞音は影を見るなり、おおよその敵の検討をつける。
そして、その天舞音の予想は当たっていた。影の中から紫色の長い髪に特徴的な髪飾りをつけている少女外見からして、黒川八重だと理解出来る程に当てはまっていた。
「……影に潜んで居れば、三人から狙われずに済むのよ」
「私がいつ一人と言った?目に見えるものが全てだと判断すると、痛い目に会うわよ有栖川天舞音」
「これからの参考とさせて貰うわ。で、他に誰か居るのかしら?」
「時期に分かるわ。ほら」
三人の周囲の地面は手へと変化すると、三人に襲いかかる。