第942話 願望の偶像 (デザイア・アイドル)
「……理想の偶像は慣れましたか?次のはの耐性は無い筈ですよ。この願望の偶像は私の願望を相手に押し付ける。その気になれば、相手をバーサーカーにすることも出来る。皆、バーサーカーとなり、戦って下さい」
天舞音の姿をした廉以外のアイドル達は春美の黒いオーラを浴び、身体中から黒いオーラを放出していた。
「天舞音さん。何故、貴方には私の異能が効かないのですか?」
「魔属性を受け付けない体質だから」
「……四人のアイドル達は今はバーサーカーと化してます。天舞音さん一人で相手出来ますか?」
春美は手にしていたボールを隣に居たアイドルに手渡す。
ボールを手にしたアイドルは廉を狙わずに別のアイドルに向け、ボールを投げる。そのボールの速度はアイドルが和気あいあいとするドッチボールの速度とはかけ離れた速度でボールは放たれた。
そんなボールを難なく止めたアイドルは廉に体を向ける。
「……同じチーム何ですけど」
廉の声など届く事無く、ボールを手にしたアイドルは廉に向けて、ボールを投げつける。
廉は何とか、ボールを受け止める。
「……くそ!これじゃ俺一人だけで五人とやるしかねぇな」
廉はこの状況を産み出した張本人である春美を狙う事にした。春美を退場させる事が出来れば、全ては終われるからだ。しかし、廉が投げたボールは他のアイドルが出て来て、受け止める。
「そう簡単には、行かねぇよな」
「……さっきから、口調が変ね」
「……黙れ!メス豚。私がすることに成すこといちいち、口を出すな!」
廉は天舞音と言えば、暴言しか思い浮かばず、取りあえず貶す事にした。
「……私の理想の偶像の影響を受けていた貴女が今になってどうして?」
「そうすれば、貴女のくだらなプライドが満たされると思ったからね。痛々しい勘違いして、見ていて滑稽だったわ」
「……殺してあげる」
春美は全身から黒いオーラを放出させ、収録会場を包み込む。
「木山の倅。外に逃げろ」
松元のその言葉によって、廉は収録会場の外へと脱出する。
「木山の倅?有栖川家の人間の筈、何故、二年前に消えた木山家の名が出てくる?」
松元のその台詞の不自然な言葉を春美は聞き逃さなかった。
「木山の倅。有栖川天舞音も居るのか?」
「はい。楽屋に居ると思いますよ」
廉の体に張り巡らせた鏡から天舞音が出現すると、廉の体から鏡は消失する。
「お前、今俺の体から出てきたのか?」
「変な言い方しないでくれる。貴女の体に張り巡らせた鏡からよ」