第935話 集めた情報
廉が集めた情報は春美の異能が理想の偶像であり、春美を認識した者は春美に魅力されてしまう異能である。
その異能は誰も抗う事が出来ず、プライドの塊の様な存在である天舞音も抗う事は出来ずに醜態を晒す事になる。
そんな精神操作系統の中でも異形な異能を持つ春美は自身は無能力者と周囲に話しており、春美は天舞音に憧れを抱いているとされている。
これだけの情報を元に春美を二度と天舞音に近づかせない様に話をつけるそ
んな方法は廉には思い浮かばず、頭を抱えていた。
「……どうするかな?」
次の行動を考えていると、春美の事について尋ねた男性が一枚の紙を手渡す。
「これ行ってみたら?」
男性から受け取った紙を見た廉は決める。
「ありがとう。これ行きます」
廉は一枚の紙を握り締め、走り出す。
その紙には春美が出演する収録に向かうが、走る最中に見た紙にはもう時間が過ぎており、今から行った所で手遅れなのは分かりきっている事だった。
「今から行っても間に合わないな」
廉が諦めて帰ろうとしたその時
「春美ちゃん。お疲れ」
「十六夜さん。良かったよ」
収録を終えた春美はスタッフの対応に笑顔で答える。
(有栖川にも見習って欲しいな。……無理か。あのプライドの塊みたいな女には)
天舞音と春美の違いを痛感していた。
「春美ちゃん。この後、時間ある?」
「……はい?」
「だから、この後時間ある?」
「……色々とやる事があるので」
「色々って、何?」
「……色々は色々ですよ」
「もしかして、僕には言えない事?」
「……どうかしたんですか?」
「とぼけるな!あんなに僕を誘っていたくせに」
男性スタッフと春美のやり取りの雲行きが怪しくなっているのに気がついた廉は今にも飛び出そうとしていた。
(待てよ。十六夜春美と言う人間を知る為にも、ここは様子を見るか)
廉は再び隠れ、二人の様子を確認する事にした。
春美の全身から黒いオーラが放出されると、その黒いオーラは辺り一面に広がる。その黒いオーラを受けた男性スタッフは倒れ込み、震え始める。
(どうしたんだ?黒いオーラからして、理想の偶像の覚醒なのか?)
春美が異能力者と聞いていた廉は春美の全身から放たれた黒いオーラからそれが覚醒であると言う推測した。
「どうかしました?」
「ごめんなさい。許して下さい」
倒れた男性スタッフはそのまま、土下座をした。
「……気にしないで下さい」
春美の全身から放たれた黒いオーラは消え、男性スタッフは顔を上げ春美を目にすると、顔を赤面させる。