第934話 十六夜春美
春美の名で、調べた結果春美がアイドルである事が判明した。
これ以上、ネット調べても知れる事はさほど無い事から、廉は楽屋に戻り、同じアイドルなら天舞音が春美について何か知っている事があるかも知れないと言う考えに至り、楽屋に入る。
「もう終わったの?」
「嫌、始まっても無い。聞きたい事がある。十六夜春美についてだ」
「吐き気がする」
「はぁ?」
「私がこの世で最も嫌いな女の話を前触れも無く、言わないで」
「だからって吐き気って何だ?吐くつもりなんて無いんだろう?」
「疲れて、死にそうと口にする人が居るでしょう?それと同じ勿論、吐かないけど、吐き気がするのよ。あの女の話は」
「そんなにか、それほど嫌っているなら、何か知っている事があるか?」
「何も知らないけど」
「……そうですか」
廉は諦めて、楽屋を後にすると、地道に聞き込みする事にした。
「すみません。十六夜春美について聞きたいのですが」
「……誰?」
「えっと、有栖川のマネジャーです」
「あぁ天舞音ちゃ……天舞音さんの」
男性がちゃん呼びからさん呼びに変えた事に天舞音が何かした事は確実だが、廉はそこには触れなかった。
「……今回は何だ?」
「はい?」
「前回は男性アイドルの弱みを教えろって言って来たろう……女性のマネジャーだったか」
「……良く有栖川の言う事を聞きますね」
「俺だって言う事を聞くつもりはない。けど、天舞音さんの異能によって、俺の姿の写った鏡から俺の情報が見られた。あの情報は黙ってもらう」
天舞音の異能、鏡の国の支配者は鏡の写した相手の情報を見る事が出来、鏡の写した状態でその鏡を破壊すれば、その鏡に写った相手の精神、肉体を破壊する事が出来る。
そんな異能によって、廉の目の前に居る男は天舞音によって、何らかの弱みを握られている事は明白である。
「……有栖川にはその情報は黙って貰うので、十六夜春美について、知っている事を教えて貰えませんか?」
「あぁ、天舞音さんに続き、日本のトップアイドルになれる器を持つと言われているよ」
「ネットで調べたんですけど、デビューから一ヶ月も経ってないですよね?」
「彼女には不思議な力がある。無能力者ながらに、この能力者育成機関に出入りしており、彼女を見た者は彼女の魅力に取りつかれる。不思議なんだよな」
「……異能力者とは思いませんか?」
「自己申告だけど、彼女は無能力者として出入りしているよ」
「それで何か弱みになるような物はありますか?」
「分からないな。でも、天舞音さんに憧れているって話を聞いた事があるよ」