第933話 理想の偶像(トップ・アイドル)
「天舞音さん大丈夫ですか?」
楽屋に駆け込んだ天舞音を心配して、銀髪の女性は廉に尋ねる。
「心配しないで下さい。後はやっておくから」
「……貴方はどう思いますか?私の事」
「……どうと言われても」
「何も感じませんか?可愛いとか」
「……まぁ、可愛いですけど」
「……そうですか」
銀髪の女性が過ぎ去って行くのを確認し終えると、廉は天舞音が居る楽屋へと入っていく。
「屈辱よ!」
廉が楽屋に入ると同時に、椅子に座る天舞音は硬く握られた拳を机に叩きつける。
「どうした?」
「あの女よ」
「……あぁ、お前が目を輝かせ、慕って居た銀髪の女性の事か」
「……殺すぞ!あれは十六夜春美の異能の影響よ」
「はぁ?」
「理想の偶像は十六夜を見た者、十六夜が触れた者、十六夜が付けている香水の匂いを感じた者等、十六夜と言う人物を認識したその瞬間、十六夜の異能は発動する。理想の偶像は十六夜を魅力的に感じ、十六夜に対して、刃向かう事が出来ず、敬ってしまうのよ。精神操作系統の中でも突出して、異形な異能よ」
「それでお前は態度が急変したのか」
「ええ、何とか自尊心を保とうと、試みたのだけど今回も無理だったわね」
「今回も?前にもこんな事があったのか?」
「ええ、今回で二回目。一回目は私のマネジャーと居る時に出会って、さっきの様になったのよ。あの屈辱を再び受けるとは」
「十六夜って、お前が言っていた」
「そうよ。あいつをどうにかして」
「で、何で俺?」
「貴方、十六夜を見てどう?」
「どうって……何を感じなかったが」
「それが貴方に頼む理由」
「……って事はその異能は魔属性なのか?」
「そうよ。だからこそ、魔属性を受け付けない貴方の出番って訳」
「……具体的にはどうしろうと?」
「首を跳ねなさい」
「物騒な事を言うな!」
「なら、犯しなさい」
「出来るか!」
「何も出来ないのね」
「犯罪だからな。犯罪以外で頼む」
「だったら、泣くまで殴り付け、写真を取り、その写真をネットに晒しなさい」
「それも犯罪です」
「ならば、単純に殴りなさい」
「暴行罪です!」
「何が出来るの?」
「犯罪以外です」
「なら、二度と私には近づかない様にしない」
「……まぁ、それぐらいなら」
「……任せるわ」
天舞音の信頼を勝ち取る為に、廉は春美を二度と天舞音に近づかせない様に行動を開始する。
「何をどうすれば、取りあえず十六夜春美って奴の事を探るか」
廉はスマホを手にして、春美の名前で検索してみた。ここで出会ったと言う事は芸能界の可能性がある。そうなれば、名前を検索すれば得られる情報があるかも知れない。




