第923話 病室で
「廉。この病院には、玲奈さんも居ることだし、柚子さんの病室から無理して行くことも無いけど、どうする?」
「……チーム[ブリザード]の元に行こうぜ」
廉が先に行く病室を決断した事によって、二人は玲奈の病室ではなく、柚子の病室へと向かっていた。
「はぁはぁ」
「長いね」
「なぁ、紫音何で俺達は非常階段を使って移動しているんだ?」
「聞いた話だと、エレベーターや、階段は先日侵入したチーム[マスク]によって、破壊され、今使えるのはこの非常階段だけみたい」
「……防衛局は何をしているんだ?」
「いつもなら、どれだけの被害があろうとも、跡形もなく消えていても、一時間もかからずに修復を終えるのに何日も手付かず……何かあったと思うけど……何があったのかまでは」
「……防衛局に行ったときは何も無かった様に見えたけど、実際の所はどうだろうな」
「この非常口から病室に行けるよ」
紫音が開けた非常口から二人は柚子の居る病室を目指す。
柚子の病室の前には湊斗が立ち尽くしていた。
「護衛ですか?」
「ええ、お二人はお見舞いに?」
「はい。中に居ますか?」
「はい」
湊斗は扉をノックすると、
「お見舞い客がお見えになりました」
湊斗のその言葉から暫くすると、扉が開くと、氷が顔を覗かせる。
「兄貴」
「来たよ」
氷は紫音と廉を病室に招く事なく、氷自身部屋を出て、扉を閉める。
「悪いが会っても話しも出来ない。用件はここで聞こう」
「まさか、神器が破壊された時の後遺症がまだ残っているのか?」
「そうだ。神器の修復が遅れているそうだ。同じ神器を体に宿す者として、何が出来る事はあるのか?」
「俺もほんの少し前に神器との対話をしたばかりで詳しい事は分からないけど、神器との対話で上手くすれば神器の修復は早められる筈だけど」
「これ程の長期間だ失敗したのだろう。他に方法は?」
「……分からない」
「そうか。自然回復のみでどうにかしねぇとって事か。護衛は任せる。俺は兄貴達と行動する」
氷のその言葉に湊斗は頷き、了承した。
「他に話があるなら、歩きながらでも出来るだろう?」
「そうだね。歩きながら話そう。色々と聞きたい事もあるしね」
「今更なんだよ兄貴」
「色々さ」
双子の兄弟のやり取りを見ていた廉はいつもより紫音が嬉しそうに笑う光景を見て、戸惑っていた。廉は自然と目線を湊斗に向けると、湊斗も氷の嬉しそうに顔を見て、戸惑っている様子なのを感じ取る。
湊斗も目線を廉へと移し、二人は目が合う。