第910話 怒り
自身の力を絶対なものだと信じて疑わないアレックスにとって、今のこの状況は耐え難いものだった。
「ふざけるな」
アレックスのその叫びと共にアレックスの全身から放たれていたオーラは威力を増し、武田、廉、舞、紫音、雲雷を吹き飛ばす。
「大丈夫か?木山」
武田は倒れる廉に手を差し伸べる。
「ええ、大丈夫です。……でも、頭を打った時に、記憶に無いものを見た……気がするって言うか」
「……走馬灯か?」
「……記憶を失う前の記憶かもしれないですけど」
「戻りそうか?」
「分かりません」
「やはり、封魔を倒さないと駄目らしいな。春夏冬の言う通り。本部決定の三回戦目で倒されないとな」
「知っているんですか?」
「あぁ、春夏冬が精神世界で誰かと接触したらしくてな。[レジスタンス]で調査して、確かな情報だと決定付けられた。取りあえず、木山、レヴァンティンで防御はするな。雲雷は雷鳴雷轟はダメージを吸収して、破壊を逃れているが、木山、川上の二人は神器が破壊されるだろう。そうすれば、精神も破壊されるだろう」
「神器が破壊されたら元には戻らないのですか?」
「生きていれば、時間の経過と共に修復される」
「……避けた方が良いって事は良く分かりました。武田さん。俺よりも舞と紫音を守って貰って良いですか?」
「命令ならば、聞くしか無いな」
「命令じゃあありません。お願いです」
「……何であろうと、俺は従おう」
武田は廉の元から離れ、舞と紫音の元へ移動する。
「……オーラは凄まじかったが、武田さんの異能は体にまだ残っているみたいだな」
「……黙れ、木山」
「拳は振るうことは出来無い。それどころか、満足に動けないだろう」
「黙れ!」
「諦めろ」
「黙れ!何もしていない。何の力も無いお前が何もほざくな」
「……ここで、俺がお前を倒す!」
「ほざくな。吠えるな。発するな。雑魚が、お前らのような雑魚すら、直ぐ様殺せぬ俺は更なる雑魚だな。……殺さねぇと、証明しねぇと、俺の強さが本物だとあいつに認めさせるには、ここで、あいつが認めたお前を殺す!」
「あいつ?」
「マークだ。俺の憧れにして、俺の存在意義だ。俺はマークに憧れているが、マークになりたいとほざく奴らとは違う。愚かな奴らは憧れから、そいつみたいになりたいとほざくが、俺は違う。俺はマークを越える。憧れはなりたい等で片付ける奴らとは違う。越える。単純にそいつの全てを越える。そいつと言う存在は下位互換として成り果てるまで強くなり、俺はマーク・レベレスタを越える」