第908話 雷撃
雲雷は一瞬で廉達から離れ、アレックスの正面に立つ。
「……行くぞ!雷鳴一線」
雷鳴雷轟を一振りしたその瞬間、轟音と共に雷鳴雷轟に蓄積されたエネルギーが一線にアレックスに向かい放たれる。その一撃と共に鳴り響いた轟音はアレックスの鼓膜を破き、耳栓を付けた廉達の鼓膜は無事だったが、その場に居た全ての人間は音の大きさに骨が軋み、身動きを封じた。
アレックスは雲雷の攻撃を避ける事なく、直撃する。
「……お前の一撃の威力がありすぎた」
「そうか?」
「……嘘だろ?音で体が硬直した筈だ。何よりも、雷の速度だ。避けられる訳ない」
「当たってるぞ」
「俺の声が聞こえているのか?」
「……聞こえるが」
「鼓膜が破れてない?」
「破れたぞ。一度」
「……なんだそれ?嫌な感覚だ」
「最初はお前からで良いか」
アレックスは一瞬で雲雷の元に移動し、殴りかかる。
雲雷は再びその一撃を雷鳴雷轟で防いでいた。
「また、止めたか。だが、また血を吐いたな。この神器を体内に宿している事は確定だ。厄介だな。ジークフリードみたいに体に宿した神器を奪った武器でやるべきだったな」
「体内に宿しているからこその特権がある。雷鳴雷轟を宿している俺はどんな音であろうとも影響を受けず、音には敏感な体質なんだよ」
「……そうだったな。それが、それだけが売りだったな。神器は」
「……悪いがもう一度だ。再び雷鳴雷轟にダメージが蓄積されている」
「何度やっても同じだを俺は最強だ。無敵だ。俺こそ、最強無敵だ」
「……その戯言に付き合ってやるよ。何度でもやってやる」
「何度?俺に限界は無いが、お前には存在している。俺の一撃を受ける度に吐血しておいて、無理をするな。諦めて、体で受けろ」
「……断る!」
雲雷はアレックスから距離を取る。
しかし、アレックスは再び距離を詰める。
「させねぇよ。お前の神器は俺の一撃を吸収するんだろ?だから、吐血レベルで済んでいる。その剣が吸収出来るのは、限りがある。放出される前にもう一撃受けて貰うぞ」
迫り来るアレックスが告げた事には雲雷はかなり焦っていた。
アレックスの言う通り、雷鳴雷轟は受けたダメージを吸収して、蓄積されたダメージを放出させる事が出来る神器であり、アレックスの一撃も雷鳴雷轟で吸収しきれない威力であり、放出していないこの段階で攻撃を受けると、吸収出来ずに、ダメージを受け、精神崩壊を招く恐れがある。
「……悪いが総帥として、これ以上は止めて貰う」
廉はアレックスの背後から炎神の魔剣を振るう。