第907話 一撃
「……あぁ、お前の故郷と、アンサンブル家を滅ばした奴か。暴れまわり、幾つもの国と町を破壊した後、イタリアで捕らわれた奴の事だろう?」
「そうだ。お前もここで捕らわれる」
「それはない。ジェネシスとの戦闘で学んだからな。強者は後だ。レヴァンティンからだ」
「僕がそれを許すと思うか?」
「……許さないだろうな。だからこそ、これだ」
アレックスは紙を破り、投げ捨てる。
破られた紙から無数の魔法陣が出現し、ジークの周りを取り囲む。
「これで動けない。ジークフリード。お前の相手は一番最後だ!」
「そうか。それじゃあ、最初は俺だ!」
雲雷は手にしている。雷鳴雷轟をアレックスに目掛け、振るう。アレックスはその一撃を左腕で防いでいた。
「……確か、それも名百剣の内の一本だったな」
「庄司の仇はここで取らせて貰う」
「そう。あいつ、庄司って言うの」
「黙れ!」
「お前がな」
アレックスは右手を強く握りしめ、それを雲雷に目掛け振るう。
雲雷はその一撃を雷鳴雷轟で防いだ。しかし、その威力は余りにも強く、雲雷は吐血していた。
「大変だな。神器を体に宿した適正者。体内に宿した神器は適正者の精神と深く繋がっている。神器の負荷はお前も負う事になる。神器のその欠点がある限り、お前は俺の攻撃を避けるしかない」
「黙れ!」
「あっ?なんだそれ?」
「俺の雷鳴雷轟は受けたダメージを吸収して、その威力を上乗せした雷撃を放つ事が出来る。お前の一撃で雷鳴雷轟で一度に吸収しきれないとは思わなかったが、これだけダメージを吸収出来れば十分だ」
雲雷はアレックスの元から離れ、廉の元まで移動する。
「廉の兄貴達、この耳栓を付けておいて下さい」
「これは?って言うかジークは大丈夫なのか?」
「動きを封じられただけです。それよりも早く」
「何で耳栓?」
「今から溜め込んだダメージ分の一撃を放ちたいので」
雲雷のその言葉で全てを察した武田は雲雷の手元から二つの耳栓を手に取り、耳に取り付ける。
「お前らも早く付けろ。鼓膜が破れるぞ」
「武田さんの言う通り、早く付けて下さい」
廉、紫音、舞の三人は雲雷の手元から耳を取り、耳を装着する。
それを終えた廉はジークを指差す。
「ジークは?」
「大丈夫です。耳元に魔法陣を展開しているので、俺がいつでも撃てる様に準備して居るので」
「庄司さんは?」
「……(そうか。廉の兄貴は庄司の生死を知らないのか)大丈夫です」
「えっ?……取りあえず、大丈夫なんだ。この一撃で駄目なら、俺達も続きます」
「嫌、この一撃で終わります」