第9話 勝負前に
檜山仁
それがあいつの名前だ。
この能力者育成機関東京本部の高校の入学式で入学生代表であいつは現れた。そもそもあいつは俺の炎神の魔武器を奪うために俺を殺そうとした男だ。
あいつはいずれ俺の存在に気付くだろう。
とりあえず、俺が今出来ることは……様子を見ることだ。
あいつの動き次第で対応出来るようにする。
そして舞を守る事だ。
あいつの目的は俺の炎神の魔武器なのは確実だ。
しかし、舞の異能妖魔剣創造で作った炎系の剣も作れてしまう。この事にあいつが気づけば舞を襲う可能もある。
どの道、あいつとは戦う事になるだろう。
負ける訳にはいかない。
負ければ殺され、炎神の魔武器を奪われる。その後あいつがどうするのかは分からない。
今、舞を守るれるのは俺だけなんだ。
「じゃあね」
「うん。また明日」
「じゃあなぁ」
俺と舞は紫音と別れて家に向かう。
……まさか後を付けられる何てなぁ
あいつだ。学校からずっと付いてきている。
舞と紫音は気づいてないと思うがそもそもあいつは隠れもせずに付いてきている。
どうするか?
「どうかした?廉、さっきから怖い顔しているよ」
舞に感ずかれる訳にはいかない。
誤魔化さないと……
「何でも無い、さっさと家に行こうぜ」
「うん」
誤魔化せたか?
俺は舞の顔を確認する。
横顔だが、笑顔だ。
大丈夫そうだ。
「明日から授業と訓練だね」
「そうだなぁ」
やっと家の前まで来た。
まだあいつは後ろに居る。
「舞、先に家に入ってろ」
「何で?」
「良いから……行け」
「分かった……」
舞は納得しては無いが、行ってくれた。
「舞……鍵閉めとけよ」
「……うん」
舞は無理に作った笑顔を俺に見せるとゆっくりと扉を開け、ガッチャと鍵をかける音がした。
これであいつとゆっくりと戦えそうだ。
あいつは俺の家まで知らないだろう。
今までの光景を見れば舞を送っただけだと思っているはずだ。
俺は振り返り。
あいつと眼合わせる。
「よぉ、昨日ぶりだなぁ」
「何だ……今日は逃げないのか」
「あぁ」
「ここの家に居候しているらしいなぁ」
「……誰から聞いた?」
嘘だろ。何で知ってるんだよ。
「ここの家主から聞いたぞ」
……玲奈さん。何やってるの
そうか。玲奈さんは能力者育成機関東京本部の特別教員だ、多分……入学式の予行練習で話でもしたのか?
「それで大人しく炎神の魔武器を渡すのか?」
「俺に勝てたらなぁ」
「ふぅ良いだろう……殺してやる」
あいつは不適な笑みを浮かべ、右手に紅の炎を灯す。