第899話 戒めの弾丸(レージング)
「全く、痛いだろ」
「そうは見えないが……まぁ良い。あまり、武器を使うのは主義では無いが、久しぶりに使うか」
ジェネシスは懐から拳銃を取り出す。
「銃で俺は殺せねぇよ!」
「だろうな。で、お前の目から見てそう思うのか?」
「……銃は普通そうだな。……中身が普通では無いな」
「正解だ!」
ジェネシスはアレックスに向けた拳銃の引き金を引く。
「アブねぇだろ」
銃口から放たれた弾丸を軽く避けたアレックスは身に纏うオーラを拳に乗せ、ジェネシスに放つ。
「……攻撃は全て、意味を失くす。俺を前にすればな」
ジェネシスは自身の前に空間が開かれる。すると、アレックスの放ったオーラはその空間に入っていくと、直ぐ様その空間は閉ざされる。
「……今のは異次元か?」
「あぁ、どんな攻撃をしようとも、俺には攻撃は当たらない」
「だとすると、次はどうするかな」
「次は無い!」
ジェネシスはアレックスの足元の空間を開く、すると、アレックスはその空間に吸い込まれる様に落ちていく。しかし、体の全てが落ちる前にその空間を閉じ、上半身のみを残しジェネシスは新たに空間に扉を開けると、そこから下半身が出てくる。
「……あれは、俺のか?」
開かれた空間から出現した下半身を見て、思わず口にしていたがそれが自身のものであるか確証は無かった。だが、アレックスは直ぐにそれが自身の下半身であると知る。
(ジェネシス、銃口を下半身に向けたな。このタイミングで俺以外の下半身を撃つなんて事は無いだろう。……何発撃たれようが、俺は効かない。やりたければ、やれば良い。そして、知るが良い無駄な行動を)
ジェネシス一度向けた銃の引き金を引く。銃口から放たれたその弾丸はアレックスの左足に直撃する。
「……なんだ。その弾は?」
「戒めの弾丸だ。知らない訳ではないだろう」
「何?」
アレックスは左足に受けたのが、戒めの弾丸であることを知り、額に汗を流す。
「どうした?顔色が悪いぞ」
「……俺の能力を無効化しようとしているのか?」
魔法、能力、異能を無効化する魔道具が世界には六個存在している。
戒めの弾丸、戒めの剣、魔法の鎖、拘束の足枷、封魔の岩石、鋼鉄の杭が存在している。
それらは、賢者の石を造り出し、管理する神傘下No.8チーム[パンドラ]のリーダーパラス・スケールが造り出した物であり、今世界に存在している魔道具の八割は彼がその原形とされている。
これらの魔道具の製造は困難であり、造れる者は限られた者だけとなっている。