第895話 選択肢
マークのその提案は足止め中の廉達にとっては有難い話であるが、それを武田が許さなかった。
「駄目だ!こいつが無償で助ける事等あり得るか」
「……その通りだ。貸しだ!」
「……木山、断るんだ!こいつはお前の両親の敵だぞ!……今回は誰が死ぬ事になるか分からんぞ」
「早く、決めろ!」
廉の答えは最初から決まっていた。
「助けてくれ!」
「何を言っている?木山分かっているのか?」
「武田さん。俺は一刻も早く秋人を助けたい。最初は寝たきりになった舞を助ける為にレジスタンスの総帥をやるって言ったけど、舞がこうして現れたら、レジスタンスの総帥はしなくても良いと思うかと思ったけど……違った。秋人がやろうとした事や皆がこうして、平和の為に動こうとする組織の存在を知って、俺は俺の出来る事は全てやろうと思う!レジスタンスには秋人は必要だ!」
「……良いのか?」
「はい!何があっても俺が皆を守ります」
その廉のその言葉を受け、武田と雲雷の二人は目に涙を浮かべる。
「……流石は兄貴が認めた……廉の兄貴です。マークが何を要求するのかまだ分からないのに、兄貴の為にそこまでの決断を……兄貴の言う通り、廉の兄貴がレジスタンスの総帥に相応しい」
涙ながら語る雲雷に何を告げれば良いのか戸惑っている廉だったが、雲雷に続き武田も涙ながらに語り始める。
「……木山、良く言い切った。それでこそ、男だ!俺は一緒付いていくぞ」
廉は自身が想像もしていなかった方向へと話が進んでいく事に戸惑っていると、廉の目の前にマークが移動し、ポケットから一枚の紙を取り出すと、それを廉に見せる。
「口約束で済ませる訳には行かない。きちんと契約書にサインをしてもらう」
「サイン?」
「……日本では主流では無いのか?」
その紙にサインを求めた事によって、黙っていた紫音が廉の隣に立つ。
「そんな紙にサインをしたら、駄目だ!日本では主流かどうかではない。そんな契約書にわざわざサインをする者が居ると思うのか?」
「……知っているのか?」
「紙に描かれた約束にサインをした者は必ず、実行しなければならない契約書。果たせなかった場合、違反した場合サインした者に罰則や……最悪、死すら与えるものだ。アメリカ軍の元帥なら特殊な呪術が施されている筈だ」
「その通りだ。俺が指定した一日の間、俺の命令に従って貰う物だ。そして断った者、途中で放り出した者には死を与える契約書となっている」
「それを聞いて、廉がサインをすると思っているのか?」




