第893話 白と黒
ノアは全身から放出させた黒いオーラに身を包むと黒炎烙印竜へと姿を変えた。
「竜属性の能力、異能だともう少し大きいと思ったんだけど」
「確かに他の竜属性と比べると私は小さい方ね。でも、他の竜とは異なるのよ」
「でしょうね。手加減はしなくて良さそうね」
スカーレットは右手から黒いオーラ、左手から白いオーラを放出させる。
これは誰でも出来る様なものではなく、選ばれた者にだけに許されたものである。
対極魔法と言われる魔法は聖属性と魔属性の両方を同時に使用出来るのは、まず居ないとされるが、世界でも確認出来ているだけでも千人以上とされている。
対極は対内にある相反する魔力を混合しない様に調節する所から始める。これが出来ないと、魔法を発動する事は出来ない。俗に言われる白黒混合と呼ばれる魔法障害の原因となる。
スカーレットは体内にある聖属性と魔属性を混合することなく、それを発動することが出来る。
「普通の人間なら、魔属性か聖属性のどちらかの一方を使うか、交互に使うかだけど……同時に使用するとは」
「だからこそ、私は魔法に関して、最強の威力の魔法を使う事が出来る」
スカーレットは両手を突き出す。
「ゼブラ・ストライク」
その一撃は魔属性と、聖属性の二つを混合し、入り交じりながらも維持をし放たれる。
世界でスカーレットの放つ魔法の威力において勝てる者は居ない。つまり、この一撃は魔法において世界で最強の威力を誇る。
しかし、ノアがそれを避ける事はなかった。黒炎烙印竜の姿となったノアは左腕を突き出し、黒炎に燃える魔法陣の様な刻印を出現させる。
その黒炎に燃える魔法障の様な刻印に触れたものを封印する事が出来、スカーレットの放った一撃もそれで対処出来ると、それ以上の事は何もしなかった。
「随分と舐められたわね!」
スカーレットの放ったその一撃はノアが出現させていた黒炎に燃える魔法陣の様な刻印に激突する。
封印を行う黒炎に燃える魔法陣の様な刻印にスカーレットの一撃は封印される事なく、刻印は破壊される。
「バカな!」
刻印が破壊されても尚、スカーレットの一撃は止まる事なくノアに襲いかかる。
「……あり得ない。刻印を突き破るなんて……竜の鱗を破壊するなんて」
ノアの想像を上回るスカーレットの一撃は理解したノアはこれ以上の戦闘は避ける決断をする。
「流石に今の私の手には終えないわね。ここは逃げさせて貰うわ」
「私がそれをさせないのは理解しているでしょう?」