第888話 激突
「……皆が戦ってるのに、ここに居て良いのかよ?」
廉のその言葉は隣に居た紫音と舞も思っていた事だった。
「行こう。廉!」
「うん。ここでじっとなんて出来ない」
廉の言葉に賛同した紫音と舞はその場から動こうとしたその瞬間、武田が立ち塞がる。
「……わるいがここから先に行かせる訳には行かない」
「退いて下さい。武田さん」
「そうは行かない。木山……嫌、お前だけでない。ここに居るチーム[アブノーマル]……はっきり言って、足手まといだ!」
「少しでも役に立てる筈です」
「……では、四人の戦いを見て、決めて貰おう」
武田に言われ、チーム[アブノーマル]の三人は四人の戦いを見守る事にした。勿論、四人でチーム[ダイヤ]の対処が出来ない様なら、チーム[アブノーマル]の三人は助ける入るつもりだ。
前方のレジスタンスメンバーの四人はチーム[ダイヤ]の五十人を四人で対処して、後方に居るチーム[アブノーマル]だけでも対処出来る敵、負傷した者だけを後方に行く事を許し、それ以外はここに居る四人だけで対処するつもりだ。
前方に居る四人だけで、チーム[ダイヤ]の相手をするのは難しいだろうが、ここにはジークが居る。そのジークの存在は大きかった。
ジークの能力、受注生産と黒魔術:降霊術があれば数の優劣は関係しない。
ジークの受注生産はジークが創造した物質を出現させる能力であり、大きさ、重さ、物質等もジークが思った通りに出現する事が出来る。現在も様々な大仏を出現させていた。大きさは様々であり、その大仏達は独りでに動き、チーム[ダイヤ]と戦闘を開始していた。
大仏が独りでに動かしたのもジークの黒魔術:降霊術によるものである。降霊術は魂の操作等、魂に関する事なら、おおよその事が出来る魔法の一種であり、こっくりさんや板子等もこの降霊術で難なく出来てしまう。今回は、ジークが背中に背負っている黒い棺桶の様な黒棺と呼ばれる魔道具の中に所有している魂を大仏の中に入れる事で大仏達を操作していた。
ジークが出現させている大仏達の数もあり、レジスタンスとチーム[ダイヤ]は互角な戦いを繰り広げていた。
ジークの能力で様々な武器を大仏に装備させる事も出来たがジークはそれはしなかった。今回は廉の指示によって、チーム[ダイヤ]を拘束すると言う条件があるため、武器等の殺傷能力のある武器の使用を控えた結果、素手の状態の大仏のみと言う形となった。
後方に居るチーム[アブノーマル]は数が互角になった事で数による負担が無くなったと安堵する事となるのだが、チーム[ダイヤ]の副リーダーであるノアの登場によって、互角だった現状は脆くも崩れ去る。